表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/24

第二十話〜走馬灯

 終わったのか・・・・・・また。


 まあ、この世界では正直何にも未練ないし、俺はとっくに人殺し。特に死んだ事に対して不満はない。

 だがよくよく考えたら、魔王なんてとてつもない力手に入れたっていうのに、何も出来ずにまた終わってしまった。


 前の人生では、こんな顔じゃなければ。もっと頭が良ければ、運動神経良ければ・・・・・・なんて思ってたが、結局力を手に入れても、使い主がこんなんじゃ意味ないんだ。


 暗闇の中で、そんなことが頭によぎる。

 すると暗闇の中から、目が眩むほどの光がまぶたの裏に満ち始める。


「(何、何これ)」


 その光に包まれた感覚に陥ると、突如頭の中に映像が流れ始めた。


 その映像に移っていたのは、俺だ。幼い頃の俺。顔が恐いからって、友達が出来ず独りぼっちだった俺が、そこにいる。

 そんな俺を慰めてくれてる、父さんと母さんがいる。

 そして父さんと母さんにされたように、妹を慰めている俺がいる。


 懐かしい。保育園の頃から高校生の頃まで、これまで歩んできた人生が全て、頭の中で流れていく。走馬灯か?


 一瞬のようにも感じたし、とてつもなく長くも感じる。

 ただ一つ言えることは、俺はそれなりに生前の人生が好きだったって事だ。

 周りから怖がられても、俺の事を知ってくれる親友がいる。

 俺の事を支えてくれた親がいた。俺を頼ってくれていた妹がいた。


 そして、俺の事を認めてくれた女がいた。


 全部、夢だったんじゃないか。俺が魔王になったことも全部。そんな気がしてならない。かつての世界に思いを馳せながら、俺はポロッと本音をこぼした。


「あぁ、帰りたいな」


 え・・・・・・今俺、喋った?


「あ」


 目を開くと、そこには、俺の胸を刺した死神の姿。そして、その死神を恐怖に染まった表情で見つめている冒険者達の姿。


 そう、そういえば、俺はギルドで冒険者達に囲まれて、死神に胸を刺されたんだ。


「バカな・・・・・・確かに命は取ったはず。複数あるとでも、こんなこと、まさか」


 目の前の死神が、愕然とした表情でこちらを見つめる。


「貴方が、魔王様」


「一応、そうだな。俺は魔王らしい」


 俺がそう答えると、死神はゆっくりと俺の胸から鎌を引き抜いた。胸に突き刺さった鎌を抜くはずなのに、不思議とこれっぽっちも痛みを感じなかった。

 鎌を抜き終わった死神は俺の前に跪くと、言った。


「魔王様。僕は死神のメトス。貴方の命を奪い、またその人生を無断でのぞき見てしまったこと、深くお詫び申し上げます」


 あれ?さっきまで殺戮マシーンみたいな感じだったのに、急に好青年。

 白髪に白い肌、優しそうな目元に高い鼻。表情や放つ雰囲気がさっきとまるで違う。


 冒険者達は跪いた死神の姿を目にし、ざわつく。


「あの死神が、魔王に跪くなんて」

「ユーシア帝国の言う魔王とは、一体どれほどの・・・・・・」


 中には後ろの扉から逃げていく冒険者もちらほら。


「貴方も人の子なのですね・・・・・・魔王様がお優しい方で、良かったです」


 死神は満足そうにこちらに笑みを浮かべ、そう言った。

 正直何が何だか良く分からん。初対面で大して話もしてないのに何で俺の事分かるんだ。それに俺別に自分のこと優しいと思ってねぇし。


「魔王様、貴方にお願いがあります。僕をどうか、殺してください」


 どこか悟ったような、諦めた笑顔で、死神は言った。

 突然のお願いに戸惑い、返答の言葉を頭の中で探していると。


「何をしているメトス。早く魔王をやってしまえ」


 直後、聞き覚えのある声がした。ビスケルだ。ビスケル・ア・フルール。あのカス貴族、後ろの扉から悠々自適に入ってきやがった。

でもどうして、こんな奴が死神に命令なんか出来るんだ。


 そんな疑問を抱いたが、答えはすぐに分かった。


「辞めろ!!・・・・・・ぐぅ、ぅぅ、魔王は・・・・・・殺す」


 死神メトスは、再び殺戮マシーンへと変貌していく。


「おい、大丈夫!こんな奴の言うこと何て聞く必要ないだろ!」


「何だと貴様。このビスケル様に向かってその口の利き方!例えユーシア帝国に警戒されている魔王と言えど許さんぞ!!冒険者共、お前達もかかれ!褒美は弾むぞ!私が魔王を倒し、ユーシア帝国貴族となったらな!!」


 ・・・・・・こいつ、一体どこまで傲慢なんだ。いや、傲慢と言うより、勘違いしてるのか。

 自分が今、この場で、一番強い存在だと。


「くっははははははははははははは」


「な、何がおかしい!」


 顔を真っ赤にし、額に血管を浮かび上がらせながら、ビスケルは声を裏返らせて叫ぶ。


「いや、あんた勘違いしてるようだから教えてやるよ」


 初めてだ、ここまで滑稽に見えた奴だ。言ってやろう。少しは痛い目を見た方が良い。


「この場で一番弱いのは、お前だぜ。人の命奪う前に、自分の命心配しとけよ」


 俺の言葉を聞いたビスケルの額の血管は、次々とぶち切れていく。


「貴様ァ・・・・・・皆の者、奴を殺せ!!」


 ビスケルの号令と共に、死神と冒険者が一斉に襲いかかった。


「ビスケル、モブ死にしても知らねぇぞ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ