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第十四話~白いワンピースの少女

 気づくと、白いワンピースを着た10才くらいの少女が、いつの間にか俺の隣に立っていた。黒髪に腰まで伸びたロングヘアーの美少女だ。


「……おじ、んー」


 17才……俺、17才。おかしい、確かに体は魔王、だが今はリーズの魔法で見た目を変えてるから、この子には高校生の頃の俺が見えてるはず。

 いや、考えるのはよそう。小学生から見たら制服着てない大きな大人は皆おじさんだ。そうだ、そういうことだ。

 喉元まででかかった訂正の言葉を飲み込み、俺は答える。


「綺麗、だと思う」


 ハッキリと断言はできない。だが、フローラルに咲く色とりどりの花々とはどこか違った美しさを秘めているように感じた。どれだけ不気味でも、どれだけ周りが美しくても、ふてぶてしく、自らを持って咲き誇る。

 只々綺麗な花とは違う、どこか雰囲気から漂う美しさがある。そんな感じがした。


「良かった。私も、この花好き」

「君、結構渋い趣味してるな」

「町の花は、あんまり好きじゃ無いし飽きた。赤ちゃんのころからずっと見てるし」


 この年の女の子だったら、フローラルに咲き誇ってる色とりどりの花々の方が気に入りそうだが……見慣れてくるとやっぱり、この年でも一風変わった物に関心を示す物なのか。


「お--」


 少女が言いかけた瞬間、俺のセンサーが察知をした。今から間違いなく、俺はおじさんと呼ばれると。


「桜助っていうんだ、俺」


 俺は少女の言葉を遮り、自らの名前を告げた。


「私、ルーメ・クラム」


 少女は、どこか社交辞令のような作り笑いを浮かべ、自分の名を名乗った。

 そういえば、現地の人と話すのは初めてだ。この子は何か、死神の事を知っているかも知れない。


「なぁルーメ、お前この町の死神について何か知らね?」


 問うとルーメは、少し寂しげに視線を下に落して答えた。


「あの人はね、とっても優しいの。でもね、今はすごく苦しんでる。自分が自分じゃなくなるって。全部、あの金ぴかのおじさんのせい。あのおじさんが来てから、皆苦しそう」


 ふわっとした回答が帰ってきた。あの人って言うのは、死神のことだろうか。知り合いっぽい言い方だったし、居場所とか知ってるかも知れない。金ぴかのおじさんの話は俺には関係なさそうだし、スルーするとしよう。


「ちなみに死神がどこにいんのか分かんの?」

「桜助あのね、早くこの町から逃げて」


 呼び捨てかよ、急に話も変えやがって。さっきからなんだ、なんでこんなにこの町から俺を逃がそうとするんだ。


「何で?」

「何ででも」


 この子が何を言いたいのか、まるで分からない。俺の事が嫌いだから町から出て行って欲しいのか、それともこの町で何かが起こるのか。子供は苦手だ、何考えてるか分かんない。


「それとも桜助は、あっちの人?」


 少女はそう言うと、頭の腕に指を二本立てて、角のポーズをした。

 それはつまり、今は魔法で姿を変えているが、本来生えているはずの俺の二本の角のことを言ってるのか?


 どうしてこの子が、俺の事を知っている。まさか、既に魔王の事はほとんどの人に知れ渡って……るに決まってるか。国の主要都市を滅ぼしたんだから。


「・・・・・・」


 どう立ち回るべきか分からず、黙り込む。すると少女は見かねて言った。


「私の言葉の意味が分からなかったら、今すぐこの町から逃げてね。もしも、私の言葉の意味が分かるなら、独りぼっちの泣き虫さんを、助けて上げて」


 何だ、この子。言動も見た目も明らかに子供なのに、どこか大人びた雰囲気を感じる。

 言葉の裏に、何かを伝えようとする意思を感じる。一体、何を。


「魔王様、魔王様!」


 突如、俺は我に返ったように、声のする方へ目線を向けた。


「一人でブツブツと、何を言っているのですか?」


 異常者を見るような目で、リーズは俺を見つめてくる。


「いや、何か女の子が話しかけてきたんだけどさ」

「……何を言ってるんですか?女の子なんていませんよ」

「は?」


 先ほどまで、確かにいた。声を聞いた。目が合っていたハズの少女は、音もなく、まるで消えたように俺の隣からいなくなっていた。


「いや、いたよな。隣に」


 俺がリーズに問いかける。


「魔王様はずっと、何もないところに話しかけておりました」


 いや、流石に俺の巨体で見えてなかっただけだろ。ちょうどリーズの死角にいたし。

 またグチグチ文句言われるのも面倒だから、適当に謝っとくか。


「悪かった。俺がどうかしてたわ」

「……本当に、大丈夫なんでしょうか。魔王がこんな方で」


 小さく呟くリーズ。全て聞こえた上で、俺は無視をする。


「もう遅いし、宿でも探そうぜ」


 そして話題をすり替える。リーズも魔王という圧倒的な力がある俺に、そこまで深くたてついたりしない。こうするのが一番、話が早く流れて良い。


「……はい」


 不満そうな表情で、リーズは返事をする。

 本当、お前が覚えてないのが謎だけど、俺を殺したのも、俺を魔王に転生させたのも、全部お前なんだからな?覚えてない以上、本当にお前なのかは分からないけども。

読んでいただきありがとうございます!

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