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第十一話〜三ヶ月の旅で分かったこと

「改めて見るとやっぱ、すげぇな・・・・・・これ」

 透き通った桃色の湖に、自分の顔が写る。紫色の肌に、頭に映えた二本の角。口を開けば見えてくるのは、八重歯のように生え、水面に映った真っ赤な眼光が俺を見つめている。

 まさに魔王だ。

 身長も2m以上に伸び、体つきも筋肉質というよりゴリマッチョ。ある意味この強面にはマッチしている体つきだが、一番気に食わないのが、顔のパーツが生前と余り変わってないこと。

「ったく、異世界にまで魔王顔認定されても嬉しくねえよ」

 とはいえ、この体になってから、あと数日で三ヶ月。目的の町、フローラルまであと数日でたどり着く。

 三ヶ月の旅は、意外と早く感じた。

旅の初めは様々な事を不安に感じていた。俺にサバイバルのスキルやキャンプの経験はなく、食料の調達や調理なんて出来ない。体力に自信があるわけでもないのに、三ヶ月の間歩き続けるなんて、暇で暇でしょうがないだろうと思っていたのだが。

魔王のこの肉体は、そんな問題を文字通り全てフィジカルで解決した。

この世界の生物のエネルギー、それは魔力。元の世界ではタンパク質だとかビタミンだとかをエネルギーに変換して人間は動いていたが、この世界では魔力に変換されるらしい。

魔力こそが人間や魔族の形を成す源であり、動力。そして魔王の体は、その魔力量が普通の魔族とは桁違い。

人生1000回分は、一度も食事をしなくても余裕で生きられるらしい。

そんなエネルギー、魔力を膨大に秘めた体だから、いくら歩いてもまるで疲れない。

走れば余りのスピードにそこら辺の大地がえぐれる。ジャンプをすれば雲の上まで届く。意味もなく何度飛んだか分からない。着地の時の衝撃で20m程のクレーターが出来るが。

まさに歩く災害だ・・・・・・こんなにはしゃいでも良いのだろうか。あれほどの命を奪っておいて。

力の加減と言えば、俺の体から溢れ出る魔力のことだ。

二ヶ月も経つと、この体にも馴染んできて、簡単に魔力を抑えることができるようになった。この世界では誰でも出来る芸当どころか、生理的にできることがららしく、生まれて三日で赤ん坊がこれをできるようになるらしい。

二ヶ月もかかったのは、魔力が膨大すぎるから。

「その魔力量で二ヶ月というのも、あまりに早すぎるのですがね。最も、有効活用出来なければ何の意味もありませんが」

「・・・・・・ちっ、お前の言うとおり、世界征服やってやるって言ったろ。文句ばっか言うなよ」

 まあ、正直世界征服に興味があるわけでは全くない。この世界で生きて行くには、この世界を知るリーズの存在が不可欠だ。俺が魔王って言うのは、ここ三ヶ月・・・・・・というか初めに町を吹っ飛ばした時点で疑いようがないし。俺の立ち回り一つで大事になるのなら、今は大人しくリーズと行動していた方が良い。

 そんなこんなで、今までの自分では考えられない程の圧倒的なパワーの新鮮さを毎日堪能していたら、いつのまにやら三ヶ月たっていたという訳だ。

 ちなみに、リーズの奴は相変わらず丁寧な物言いだが俺の事を良く思っていないみたいで、旅の途中で魔物を狩っている冒険者と遭遇したとき、この圧倒的なフィジカルで応戦して撃破し、命だけは見逃してやったのだが。

「魔王様は、我々魔族の命を奪おうとしていた人間に、随分とお優しいのですね。」

 と小言ばかり言ってきて、正直仲が良いわけではない。

 正直、人を殺しても大して感情に影響はない。だが、それでも前まで自分も人間だった。グロテスクな様子を進んで見たいとは思わないし、ちょっとは感情移入する。

 俺は恐いのは顔だけで、痛いのも嫌だし暴力も嫌だ。

 魔王のフィジカルがあるから、正直こいつがいなくても一人で生きていくことは出来るんだが、今はとりあえずラプラスの書を手に入れる為に、予言通りに動いた方が良い。


 もしもラプラスの書が手に入れば、俺が元の世界に戻れるのかどうか、分かるかもしれないし・・・・・・勇人、元気してっかな。俺が死んでも、あいつには友達沢山いるけど、それでも長い付き合いだ。割とショックを受けるはず。

 両親も、妹も、屋上から落ちた俺の遺体を見て、何を思うだろうか。決して良い息子、兄ではなかったけれど、家族のことは好きだった。

 皆にはきっと、一生消えないトラウマを植え付けてしまった。

 本当に、どういうつもりなんだよ・・・・・・リーズさん。

 ふと、隣で眠るリーズの顔を見た。眉間にしわをよせて、寝顔まで生意気。同じ顔なのに、どうしてこうも品性が違うのか。

「全く・・・・・・こういう女が隣にいるときプレイボーイの勇人さんならどうすんのかねー」

 空を見上げると、赤く輝く三日月が闇夜に浮いている。俺は小さくため息を付き、堅い感触の地面に不快感を覚えながら、目を閉じた。

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