第22話 セカンドキス
義隆は、泣きながら笑う梓を見つめていた。
「……梓」
「うん……」
もう言葉はいらなかった。
義隆はそっと手を伸ばす。
梓の肩を抱き寄せる。
「……義くん」
梓も抵抗しなかった。
むしろ、安心したように義隆の胸へ身を預ける。
五年ぶりの抱擁。
昔とは違う。
あの頃よりも、ずっと近く感じる。
「温かい……」
梓が小さく呟いた。
「梓も」
しばらく、そのままでいた。
やがて二人はゆっくりと離れる。
けれど、距離はほんの少し。
目が合う。
「…………」
「…………」
どちらも視線を逸らさなかった。
梓の頬が赤くなる。
義隆も、胸の鼓動が速くなっていくのを感じていた。
「梓」
「……うん」
義隆が少しだけ顔を近づける。
梓も目を閉じた。
そして――。
唇が、そっと触れ合った。
一瞬だけの、優しいキス。
けれど。
離れたあとも、二人はすぐには動けなかった。
「…………」
梓は目を開ける。
目の前にいる義隆を見つめる。
背中に回された義隆の手が温かい。
「……二回目だね」
「そうだな」
「五年ぶり」
「ああ」
梓は小さく笑った。
胸の奥に、込み上げてくるものがある。
高校生だった頃。
初めてキスをした。
そして、離れた。
それから五年間。
誰にも話さなかった。
誰にも渡さなかった。
心の奥にしまっていた、あの日の気持ち。
「……良かった」
「何が?」
梓は少し恥ずかしそうに義隆の胸元に顔を寄せた。
「この五年間……」
一度、言葉を止める。
「私、誰にもあげなくて良かった」
「…………」
義隆はその言葉を聞いて、梓をもう一度優しく抱きしめた。
「これからは?」
「……これから?」
「これからは、俺が大事にしていい?」
梓は顔を上げた。
涙の跡が残った頬に、今度は満面の笑みが浮かぶ。
「……うん」
五年前に途切れた二人の恋は。
今度こそ、二人の意思で続きを始めた。




