第十八話 今の僕たちだから
「今の私たちだから、一緒に楽しめるところ」
梓の言葉が、義隆の頭に残っていた。
「……どこだろうな」
運転しながら、義隆は考える。
遠出というほど遠くなくていい。
高級な店に行く必要もない。
お金をたくさん使うデートでもない。
それに――。
「梓、今すごく可愛いんだよな」
ふと助手席を見る。
髪には、以前選んだリボン。
楽しそうに今日の予定を考えている横顔。
五年前の高校生だった頃の面影もある。
けれど、ちゃんと大人になった女性でもある。
「……なんか不思議だな」
「何が?」
「いや、何でもない」
義隆は笑った。
大人になったからといって、無理に大人っぽいデートをする必要もない。
高いレストラン。
遠くへの旅行。
夜景の見える場所。
そういうものも悪くない。
でも今の二人には――。
「一緒に笑えるところが一番いいのかもな」
「……?」
梓は不思議そうに義隆を見る。
「義くん、何か言った?」
「いや。今日の行き先、楽しみだなって」
「ふふ。楽しみにしてて」
梓が笑う。
その笑顔を見て、義隆も笑った。
今の二人なら。
昔は入れなかった店にも行ける。
好きなものを自分で買える。
時間だって、高校生の頃より自由に使える。
でも。
結局、一番大切なのは場所じゃない。
梓と一緒にいること。
それだけは、五年前から変わっていない。
「……今日は梓に任せよう」
義隆はハンドルを握り直した。
「どこへ連れていってくれるのか、楽しみにしてるよ」
「うん!」
梓は嬉しそうに頷いた。
その声を聞いて、義隆は思う。
――今日も、きっと楽しい一日になる。
そんな予感がしていた。




