第十七話 今日は梓の番
警察官との一件をなんとか笑い話にした二人は、並んで駐車場を歩いていた。
義隆は腕時計を見る。
「それで、今日はどこに行くんだ?」
「……ふふ」
梓が意味ありげに笑う。
「秘密です」
「秘密?」
「うん。今日は私がデートプランを考えるって言ったでしょ?」
「ああ」
そういえば、前にメッセージでそんな話をしていた。
『次は私がデートプラン考えるね♡』
あのときは、梓がどんなところを選ぶのか少し楽しみだった。
映画。
水族館。
ショッピング。
今までのデートは、どちらかといえば義隆が行き先を決めることが多かった。
だから今日は、梓に任せることにしている。
「でも、梓って結構考えてそうだよな」
「……分かる?」
「分かるよ」
「どのくらい?」
「かなり」
「……実は」
梓はバッグを抱え直した。
「昨日の夜、何回も予定表を確認しました」
「そんなに?」
「だって、義くんに楽しんでもらいたいから」
「……」
義隆は少し驚いた。
自分が梓を楽しませようとしていたように。
梓もまた、自分を楽しませようとしてくれている。
「じゃあ、期待していい?」
「もちろん」
梓が笑う。
「今日は、私についてきて」
「了解」
義隆は素直に頷いた。
しかし。
「……どこに行くんだろうな」
梓は答えない。
ただ、少し嬉しそうに笑っている。
「義くん」
「ん?」
「今日はね」
一瞬だけ間を置いて。
「昔の私たちだったら行かなかったようなところにも行きたいの」
「へぇ」
「今の私たちだから、一緒に楽しめるところ」
「……なるほど」
それ以上は聞かなかった。
梓が考えたデートなら、それでいい。
目的地に着くまでの時間も含めて、今日のデートなのだから。
「じゃあ、案内よろしく」
「任せて」
梓は少し胸を張った。
その横顔が楽しそうで。
義隆も自然と笑った。
さて。
今日はいったい、どこへ連れていかれるのだろう。
義隆はまだ知らない。
梓がこの日のために、かなり真剣にデートプランを練っていたことを。
そしてそのバッグの中には――。
今日渡すつもりの、小さな封筒まで入っていることを。




