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~万年婚約者なし令嬢、出奔予定ですが自称婚約者と王太子に求められました、ついでに命も狙われてます~  作者: 紫蘭かな


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8/22

7: 襲撃者

四つん這いから転がるように走り出すリアムを見届け、私は茂みから飛び出す。

できるなら相手を私にひきつけて、建物から引き離したい。

狙いはセリーヌ様だろう。時間を稼げばその間護衛が皆を避難させてくれるはずだ。

それさえできれば、あとは私は逃げることに集中すればいい。この相手、倒すのは私には無理だ。


生徒が残っているかもしれない校舎と、反対側へ向かって走る。

途中、片づけ忘れたほうきが壁に立てかけてあったので、それをつかんで走り続ける。

木刀に似た感触。ないよりましか。



気配で、ついてきているのがわかる。良かった。


森の入り口について、立ち止まり振り返る。またナイフが飛んでくるなら、木をたてにする。


さてどうする、と思っていると。


意外なことに、相手がゆっくり姿を現した。

油断してる?舐められている?


スカーフで顔を隠して表情は読めない。

全身黒っぽい服装なのだが、ぴったりとしてるわけでなく、動きやすそうだがどこかふわふわと軽そうな生地だ。暗殺者としては何か違和感がある。変装?


近づいてくる距離を計算しながら、ほうきを構える。


間合いからまだ十分距離があったのに、一瞬で私の背後にまわられた。

「!?」


首を、素手で絞められていた。

武器もいらないという事か。


「くっ」

一気にでなく、徐々に締め上げられる。引き離そうと相手の手に爪を立てる。

びくともしない。感触を味わっているように、確実にしめていく。苦しくて息ができない。


全身の力をためて一気に下半身で吐き出す。足払いで攻撃する。

相手は片手で地面をついて側転で軽やかにかわす。

服とスカーフの揺れが優雅にすら感じる。


少しスカーフが顔からずれる。化粧をしているのかはっきりとした美しい顔立ちの様だ。化粧ということは女?あの力で?

逆光でよく見えないっ。

相手はしばし私を観察した後、口を開いた。


「 名前 」


「は?」


「 名前。 お前の。 何。 」


「教えるわけないでしょ!」


「ふふふ」

低い声で笑ってる。なんてやつ。


「まて!」

何人かこちらに向かってくる姿が見える。セリーヌ様の護衛達のようだ。

(助かった・・・)

さっとスカーフで顔を隠し直した相手と、私の間に、私を守るように3人の護衛が立つ。

私の横に、黒頭巾姿の護衛が立った。さっき部屋でセリーヌ様の横にいた人だ。

もう一人、血相変えて走ってくる人がいる。ウィルだ。



「大丈夫か!マリ・・・」

「呼ぶな!!」頭巾姿の護衛がウィルの声に重ねるように大声で怒鳴る。

大声で消してくれたんだ。


「 マ リ ー 」

相手は面白そうにつぶやく。


「ばれたか。読唇術か…」

護衛が吐き捨てるように言う。ウィルはしまったという顔でさらに青くなる。


ざざあっと突風が起こり、森全体がゆれるように木の葉が激しくはためく。

砂ぼこりに一瞬目を閉じて、次に目を凝らした時には、もう、相手の姿は消えていた。



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