20: ばいばい
「マリーーーー!見つけたーーーーーーーーー!!」
剣を手にしたウィルだった。服が泥だらけで、焦げた跡がある、髪も炙られたのか、一部縮れている。火事の中を必死で探してくれたのかもしれない。
「シシィーー、貴様――――――――!!」
シシィに切りかかり、二人は激しくやり合う。ウィルは怒りで猛獣のように強かった。腕のあるシシィだが、あの殺意をみなぎらせた覇気が全くなくなっている。
ただ機械のように淡々とかわしているだけだった。ウィルの強さが勝っている。シシィがやられてしまう…。
「だめ、シシィを殺さないで!」
とっさに私はウィルの腰に飛びついた。
「マリー、何をしている!?離すんだ!」
慌てるウィルに縋りついたまま、シシィに叫ぶ。
「逃げてシシィ!」
「マリー、なぜ!?」
「ウィル、シシィはね、陛下の子供なの!シリウス王子なの!誘拐された時、探してもらえなかったのよ、王家に・・・見捨てられちゃったの!」
「!!」
ウィルは私の言葉に絶句する。
「シシィは王家の犠牲にされたの。今は、見逃してあげて!」
「こいつがシリウス王子なわけないだろう、マリーは騙されているんだ。それに見捨てられたとか何の話だ!」
どうすればわかってもらえるんだろう、必死で考える。
「ウィルならシリウス王子誘拐事件当時の詳しい話、聞いてるよね?変だとは感じてなかった!?」
中枢に近い場所にいるウィルなら、過去の内密の情報も知らされているだろうと踏んで、そこに賭ける。
「数派いた反王政勢力を一気に大量逮捕、王子の捜索切り上げの早さ。そのうちシリウス王子派を粛清した真の目的は、本当に王子行方不明が理由?」
混乱で動きが緩慢になるウィル。
「こいつがシリウス王子なわけがない!」
「王子の絵姿を見たの、私の知っているシシィそのものだった」
「だが、しかし」
「よく見て!じゃあどうしてこの人、アレクサンダー殿下にこんなにもそっくりなの!?」
そうだ、クリスの瞳の色が懐かしいと思ったのは、シシィが同じ色をしていたからだ。
「お願い、見逃してあげて! シシィは悪い事してきちゃったけど、生きてくために仕方なかったの!女装までさせられて!!
シシィは大人たちに勝手な事ばかりされてきた! だったら、シシィだって、一度くらい、許されたっていいじゃない!!!」
ウィルは歯ぎしりしながらシシィをにらみ続ける。
「見て!陛下はご無事なの!今まで十分時間はあったのに、ここまできて、まだ、陛下には手をかけてないのよ。ねえ、もうそれで、いいじゃない…お願いウィル…」
ウィルは、陛下のお姿をみたまま、動けなくなる。
シシィは静かに立ち上がった。片手を腰まで上げ、小さく振る。
「マリー。ばいばい」
と言って、消えてしまった。




