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~万年婚約者なし令嬢、出奔予定ですが自称婚約者と王太子に求められました、ついでに命も狙われてます~  作者: 紫蘭かな


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22/22

21:終

その後の王宮内はさらに大騒動だった。国王陛下が誘拐されるなんて大事件だ。

しかし陛下が無事にすぐに見つかった事、使われたのが王族しか知らない通路であったことから、何かしら思うことがあったようで、王家の指示で内々に片づけられた。かん口令がひかれ、関係者以外に知られる事はなかった。

ウィルは、シシィを取り逃がした責任を取って、側近の職を解いてもらうよう自ら願い出た。しかし陛下を無事に取り戻した功績を評価され、数週間の自宅謹慎だけを言い渡された。アレクサンダー殿下はきっとウィルを手放したくないのだろう。


あの真面目なウィルに、ずっと追っていたシシィを見逃すという、最も苦しい選択をさせてしまった。

この先、彼は後悔するかもしれない。


謹慎が解けた頃、ウィルがお見舞いに来てくれた。


「怪我はどう?まだ痛む?」

私の短くなった髪をなでながら、痛々しそうに聞く。でも、ウィル自身の方が辛そうに見えた。


「私は大丈夫。あねの、ウィル、本当にごめんなさい。そして、ありがとう」


ウィルは、結局シシィの正体について、一切報告しなかった。それは、私が王家の暗部を知ってしまった事を、王家に知られる事を避けるためだ。私を守るため、彼は、今までの人生で大事にしていた忠誠心を曲げたのだ。


私のせいで、ここまでさせてしまった。十分だ。


「ウィル、今まで本当に感謝してる。どうか、私と、婚約解消してください」


私は深く頭を下げた。


ウィルはすこし目を見開いて、ため息をつく。

「やっぱり言うと思った」


「私には、もう、婚約者の資格がないわ」


「それで?婚約を解消したら、その後どうするの?そんなぼろぼろ姿でさ。縁談ももう来ないよ」

私の顔の包帯をそっとなでる。


「別にいい。一人でひっそり暮らす」


「とかいって、元気になったら出奔するんだろう。君はそういう人だ」


ウィルは、切なそうに目を細めて言った。

「君が負担なら、婚約解消してもいいよ」


「でも出奔するときは、僕と一緒だ。実は僕もちゃんと自分の用意をしてあるんだよ、君がせっせと天井裏に隠し始めた頃から。君がいつ急にいなくなっても、すぐ追いかけられるようにね。」


「そこまでされるとひくんだけど」


「もう諦めて。慣れてくれ」


「私は、真面目なウィルを道連れにできない」


「いまさらだよ。今回はさすがの僕も、ちょっと色々嫌になったしね。それに、シシィの事が終われば、殿下はまたマリーを口説き始めるだろうしさ。あーもうあの一族めんどくさくてやだ」

心底うんざりといった表情をするウィルがおかしくて、笑ってしまう。

「じゃあさ、一緒にいろんな国まわろうか!」

旅装束のウィルと、二人で、見知らぬ国を冒険して回る。

想像するだけで、わくわくする!ふと視線を戻すと、ウィルが愛おしそうに私を見ていた。


「いいね」



「そしたらさ、どこかで、またシシィに会えるかな」


ウィルの機嫌が一気に悪くなった。

「まだ君は・・・」


「そしてね、ウィルの事ちゃんと紹介するの!『この人が、私の愛する人です』って」


ウィルはピシッと固まる


「ウィル、好き!」


ウィルは両手で顔を覆い、泣きそうな声で言う。

「初めて、マリーに、好きって言ってもらった・・・」


「ええ?そうだっけ?ごめん、いうの忘れてた」


「もう・・・そんな事忘れるなよー」

グズグズ鼻をすすっている。


愛おしい、この人が。


「あはは!また忘れないようもっと言うね、ウィル、大好き!」


「うわあ過多でこれ以上耐えられない、でももっと言ってくれえ」と、唸るウィルが面白くて、怪我をしていない方の手でばんばん背中をたたいていると、その手を取られた。

ウィルの目が熱を帯びている。

「マリー、いい?」

「うん」


目を閉じると、温かいウィルの唇が、私の唇に触れた。



***



やっぱり、私は、今でも強く願う。



シシィ、どこかで、生きていて。


もうあんな仕事をやめて。


そして、できたら、笑って生きていてほしい。すこしでも、シシィらしく。


あの時、手を振ってくれたシシィに、私も手を振りかえす。


「ばいばい、シシィ」




了


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