18:真実
一体何処に繋がっているのだろう?
暗い通路を、手探りで進んでいく。
通路の先に明かりが見えた。出口だ。
恐る恐る顔を出してみると、そこはきらびやかな空間だった。
毛足の長い絨毯の床に、一人男性が倒れている。
(あれは…国王陛下!?)
倒れている陛下を、見下ろしている人物は・・・
「シシィ!」
思わず声が出てしまった。
慌てもせず、目線を向けるだけでこちらを確認してから、軽い挨拶のように言った。
「 マリー」
「 また、会えたね 」
シシィは目を細め、ゆっくり口角を上げていき、妖艶な笑みを浮かべる。
「や、やめて、お願い、陛下に何もしないで」
「まだしてないよ。これから。」
片手で陛下の服をつかみ、もう片方の手でナイフを取り出した。
「お願いシシィ!だめよ、絶対、」
やめさせなきゃ、なんとしても・・・・
「あなたの、お父様を、殺してはだめ!!」
ピタリととまるシシィ。
「なぜ それを知っている?」
笑みは消え、殺意をみなぎらせた冷たい眼差しに、怖気づきそうになる。
「つい数日前よ。行方不明の王子達の絵姿をみたの。出会った頃のあなたにそっくりの子がいた。そこで、王宮の図書館で過去のことを調べたの。そのうちのお一人、シリウス王子が行方不明になった時期が、あなたが教会に来た時と同じだった。」
「私、あなたが男の子だって、最後まで気づかなかった。あなたを『シシィちゃん』と呼んだ時嫌がった理由がようやく分かったわ。シスターたちは、あなたが親の虐待から逃げてきたと思っていたから、親が探しにきても見つからないようにと、わざと女の子用ワンピースを着せていたのね。私が勘違いしていても、正さなかった理由ね」
シシィは黙って聞いている。
「でもね、シリウス王子が行方不明になられた件が、どうも変だと思ったの。遺体も見つかっていないのに、捜索の打ち切りが早すぎる。疑われた貴族の大量粛清は、異常な早さで進められてる。その中には、逆に、シリウス王子の支援者と認識されていた者たちまでいた。彼等は寝返って、シリウス王子の暗殺に加担したと断ぜられている。もちろん本人たちは最期まで認めていない。
記録をそのまま読むこともできる。でも、あの時あなたを連れ去ったおじさんの、言葉を思い出した。『貴族のお偉いさんの親に見捨てられた』と。もしかして、騒動に乗じて、貴方を擁立する反抗派閥も、陛下は、一緒に潰したかったのかもって」
これから発する言葉の意味が怖すぎて、唇が震えてくる。
「貴方を行方不明のままにして、彼らに、王族殺しの罪をなすりつけたとしたらーーーー」
どうか違うと言って。私の考えすぎだと。
「君が辿ってきた通路、あれは王族だけが知っている通路さ。非常事態の時使える秘密の通路があちこちにあるんだよ。ここを使ったってことで、シシィの出生もばれるかもねえ。愉快だ。」
「やっぱり、貴方は、シリウス王子なのね・・・!反旗を翻して新しい政権を作りたかった人達があなたを担ぎ上げようとしていたのを、陛下はご存知だったのね。容疑が固まっていないけど早く潰したくて、彼らの罪をでっちあげて・・・」
「そうだね、当時良くしてくれた大臣に彼の屋敷に招かれて。彼の取り巻きが沢山来ていたから、王家には内密の集まりだったんだろうな。そしたらすぐに騎士達に踏み込まれた。大臣がとっさに隠しておけと僕を託した相手が金で動くやつでさ。下賤な奴で、僕を後々大臣か王家かどちらに売ろうかと計算してたんだろうな。そしたらそいつ自身が追手の騎士に殺されて。その手下が、『面倒だからほどほどの所で適当に放してやる。自分たちが逃走経路確保するまで大人しく待ってろ。何か言ったら命はない』と教会に預けられて。信じて待ってたんだ。父上や母上、兄さんたち、きっと心配して探してくれてるだろうな、早く会いたいなって。まさか、既に僕は父親に見捨てられてたなんてね」
「ひ、ひどい、なんて残酷な・・・!」
あの日の、見開いた瞳に絶望が広がっていくシシィの表情を思い出し、涙がこぼれる。
「だからさ、見逃してよ。僕は生きていくために何でもしたさ。王族にも反王政勢力にも厄介な存在になったからねえ。消されないように必死さ。まともな生き方ができなかった。女装して殺人を請け負ったりしてさ。
最初殺ろうとしたのはアレックスだけどね。でもできないなら、こいつでいいや。一番むかつくしな!」
シシィがナイフを振り上げた、その時。
突然近くで爆発音して、火の手が上がる。
「お、時間通り。さすが僕の仕掛けは完璧だ」
爆発に気を取られた瞬間、私は鳩尾を殴られ、気を失った。




