16:疑惑
「はああ」
ため息をついてソファの背もたれに思いっきりもたれかかる。
なんだか大変な話になってきた。
私はクリスとの付き合いが少々あったとしても、アレクサンダー殿下ご自身の事なんてほぼ存じ上げない。
今はウィルの婚約者だけど、仮に王命が下れば、簡単に解消されちゃうんだろうか…
まるでウィルとの婚約は、吹けば飛ぶようなものに感じてきてしまう。
それにしても、セリーヌ様は殿下の事を、長い年月丁寧に見てこられたのがよくわかる。
ウィルの言葉を思い出す
『お願い 僕を見てって ずっと思ってた』
・・・もしかして、自由に焦がれて空を見上げる殿下の横で、セリーヌ様もそんな風に思ってたのかな。
なんて、周りが見えてない私ごときが、思慮深い方々の心のうちを慮る能力も資格はない。
頭を左右に振って、余計な方向に進みそうな思考を頭から追い出す。
セリーヌ様の残された紙の束を広げる。
「ほほう、殿下は絵もお上手なのね」感心しながら紙をめくっていく。
今度は絵姿が出てきた。若き日の国王陛下や王妃様と数人の子供達の絵姿だ。
「おおっと、これは恐れ多い、慎重に扱わねば」
描かれた人物のお名前が絵の裏に書かれていたて、どれがアレクサンダー殿下かなと探していると、一人の少年の顔に目がとまった。
「う、うそでしょ!?」
自分の目が信じられない。
「待って、どういうことなのーーーー」
私は衝撃で思わず立ち上がる。
しばらく絵姿を持つ手の震えが止まらなかった。
***
私は許可を得て王宮内の図書館で調べ物をした。王家にまつわる記録、文書、記事など、許される範囲で調べ上げた。
当たってほしくない、でも、もし、私の考える通りだったら。
重厚な歴史を感じさせる図書館は天井がとても高かった。
一日雨模様の外から入るあかりはとてもぼんやりしている。壁際には護衛が数人静かに立っている。動く者のいない、その広い空間は空気が重かった。
(まるで海の底に閉じ込められているようだわ)
―――いや、王家の闇に今でも閉じ込められたままのは、あの人だ。




