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~万年婚約者なし令嬢、出奔予定ですが自称婚約者と王太子に求められました、ついでに命も狙われてます~  作者: 紫蘭かな


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13/22

12:過去の思い出を初めて打ち明ける

「マリー、気が付いたか!?」


私は自室の寝台で目を覚ました。

ウィルが私の手を握りながら、泣きそうな顔をしている。

お父様、お母様、リアム、侍女たち、クリス、みんながひどく心配そうな顔で私の顔をのぞき込んでいる。

また、みんなに心配かけちゃった。



私が気を失った後すぐに、護衛達がかけつけてくれたようだ。

「また危ない目に合わせてしまった」

と、ウィルやクリスが謝ってくれた。しかし、もう我が家での警備では不十分だという事がわかったので、明日から、より警備体制の強いコッツフェルド家に身を寄せることになった。


私は、二人に、シシィの事について、過去から事件当日までの事すべてを話した。


初めてあの過去の事を人に話すには、時間を要した。記憶をたどり、言葉にするのは、閉じた傷跡をもう一度ひらくような感覚だった。


「マリーが別荘地からもどった頃、急によそよそしくなった理由が、よくわかったよ。辛かったね、とか、そんな簡単な言葉を、僕がいっていいのかもわからない」

背中を優しくなでてくれるウィルの手が温かい。


「もしかして、その事がきっかけで、鍛錬を始められたのか?」

考え込んでいたクリスが問う。

「はい。何かに打ち込んでいたかったのが一番の理由ですけど。シシィを助けられなかった自分が、どうしても許せなかったんです。もう、いやなんです。助けてって叫ぶ手をとれなかった、あんなのはもう・・・」



ウィルがぎゅっと肩を抱いてくれる。


「辛い事を思い出させてすまなかった。でも、あなたは、充分強い。あなたが思うよりも。傷ついてその場に座り込み続けるのでなく、必死に前に進んだのだろう。学園でシシィに立ち向かっていたあなたは、美しかった。あんなに目を奪われた女性は、初めてだ」

私を挟んでウィルと反対側にいたクリスは、私の側で跪いた。私の首の包帯をそっとなで、その指で、私の顎を軽く持ちあげた。頭巾の隙間から覗くクリスの目の色は、懐かしいような穏やかな色だった。

「貴女は本当に美しい」



「何やってんだ」


ウィルが怒りを込めてクリスの手を叩き落とす。


「マリーは、僕の婚約者なんだ。触らないでいただきたい!」

「おっとこれは失敬。綺麗な女性はつい口説く癖がありまして」

「護衛は、護衛だけしていてください!」

「なるほど・・・護衛だから護衛しかできないと」

「当たり前だ!」


クリスは「ちょっと用事を思い出したので、これで失礼します。では明日」

と言ってさっさと帰ってしまった。

ウィルは大きなため息をつく。

「あーもうーあいつ本当やだ。ずっと嫌な奴なんだよ。しかもマリーを口説こうとするなんてありえない。コッツフェルド家に行ったらまたあいついるんだよな、マリー、絶対二人きりになるなよ。ちゃんと護衛を呼べよ。」

「いやあの人護衛だから」「くそっ、さっさとシシィ捕まえてマリーを連れ戻す!」

子どもっぽいウィルに笑ってしまう。

「心配してくれて、ありがとうね」


「あの頃、急にマリーが遊んでくれなくなった頃、マリーは僕としゃべってるのに、マリーの目に僕が映ってない気がして怖かったんだ。誰かほかのものを見ているようで。お願い僕を見てってずっと思ってた。シシィが君の中にいたんだね」

そっと私の手の甲に口づける。

「これからは、僕をみてほしい。今度こそ必ず、君を守るから」


ウィルは、いつの間にこんなに男っぽくなっていたんだろう。

ずっと弟みたいに接してた分、慣れなくて余計気恥ずかしい。

ウィル、かっこいい。子どもっぽいウィルも可愛いくて、いい。

赤くなった顔を見られるのがはずかしくて、うつむきながらウィルの肩に頭を寄せた。


「ありがとう。私ね、ウィルがいてくれて、本当によかった」


ウィルの身体から妙な振動を感じて頭を上げる。顔を真っ赤にして感極まったように震えている。

「は、初めて、マリーに甘えられた・・・・!」

そんな大げさな。でも考えてみたら、確かに、ずっとバタバタしてて、ウィルと二人でゆっくりする時間もなかったな。


「もっと一緒にいたいけど、今日は大変だったから、もう帰るよ。ゆっくり休んでね」

ウィルはそっと私の頭の上に口づけをして、部屋を出て行った。


****


寝台にあおむけになってもなかなか寝付けなかった。再びシシィの事に思いをはせる。

部屋の窓をみると、板が設置されていて、もう誰も侵入できないようにしてある。



シシィは生きていた。また会えた。

でも、まさか人の命を平気で狙うような人間になっていたとは。

楽しそうに人の首を締めるような人間に。

怯えていたあの小さなシシィが。


あの後、一体どれだけの人生があったのだろう。

生きていくために、どれだけのことが・・・


あの時、変えられたのだろうか。

もし、私にシシィの手を取って逃げる力があったのなら。


『 助けて、マリー 』

かつてのシシィの悲痛な声と、先ほどの相手をいたぶるようなシシィの声と、二つの声が絡み合うようにして、ずっと頭の中に響いていた。




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