10:襲撃者、再び
しばらくコッツフェルド公爵家から手配された護衛によって、我が家の警備は強化された。
ウィルもまた、時々家に来るようになった。クリスが必ず一緒だ。
「こちらが敷いた警備体制をチェックしに来たまでです。どうぞ私の事はお気になさらず」
といいながら、部屋から出ていこうとしない。言い返せない様子のウィルは機嫌があまりよろしくない。
「そろそろ二人きりにしてくれませんか」
「奴の情報が途絶えている。確認できるまでマリー嬢の警護を優先です」
なんだかなー。結局いつも当たり障りのない会話になってしまう。
そんな日々も1週間ほどたった頃。
夜だった。
寝台でうとうとしていたのに、瞬間で目が覚めた。
覚えのある冷たい覇気。
目玉だけ動かしてみると、施錠したはずの窓が開いている。
(来た・・・!)
私は枕の下に隠していたナイフを手にしようと静かに探る。
「 ストップ 」
気づけば、既に奴が目の前にいた。
首に金属のような冷たい感触がある。ナイフをあてられていた。
「何が狙いなの」
答えない。
「 マリー 」
ぞくっとする。呼び方は、まるで体の奥底をなでるようだ。
「 アレックスの女なの? 」
「は?アレックスって、アレクサンダー殿下の事?会った事もないわ」
「 これから、なるの? 」
一体何を聞かれているのかさっぱりわからない。
もしかして一番危惧してた、反王政勢力が仕向けたものじゃなく、殿下の女性関係絡みなのか?
ふわりと奴のスカーフが揺れ、月の光に顔が照らされる。
化粧をしていなかった。お人形さんのように美しい造形だった。
「 ねえ、そろそろ、思い出して 」
(何を?)
奴の声色が高くなる。幼い子供の声まねのように。
「 『 助 け て 、マ リ ― 』 」
!!!
胸が急激に激しく鼓動する。目の前がぐらぐらする。
胸が気持ち悪くて吐きそうだ。空気が上手く吸えない。
はあはあ息をつきながら、かすれた声を絞り出す。
「―――あなた、シシィなの?」
顔中に笑みを浮かべる。心から嬉しそうに。
当てられていた金属の感触は消え、今度はシシィの手が首にまわされる。
よく訓練されたごつごつした手で、ゆっくり、ゆっくり、締め上げられる。
シシィは、楽しそうにささやく。何度も。
「 『助けてマリー、助けてマリ―』 」
苦しみの途中で、私は意識を失った。




