ドンドビ交差点の中心で愛が踊る
「ドンドビジョンが繋がったよ」
志津香の声に皆が振り向くと、ドンドビ交差点に面した大型LEDビジョンの映像が切り替わり、優しそうな年配の女性が映し出された。
「明奈、久しぶりね。飛鳥と瑞鶴、はじめまして。私はエルデリアの賢者、アキターレス。みんな、よく頑張ったわ。瑞鶴、ドローンのバッテリー、少し残しておいてくれた?」
「はい。志津香さんから聞いてます。5分ほど残しておきました」
瑞鶴が答えると同時に、ドローンが生き返ったように浮上した。ドローンが7人の頭上を旋回し、八百八狸が入ってこれない魔物忌避の結界を形成した。
「ありがとう、瑞鶴。みんな、私が今から話すことをよく聞いて。魔物退治を行っているあなた達は全員、潜在的な浄化能力を必須要件として選ばれています。特に愛、あなたは広範囲を浄化することができる特別な能力を有しています。そして、志津香、あなたは人と人を繋ぐ能力を持っている。あなた達全員の力を合わせれば、大規模浄化魔法を発動することができます」
しばらくの間、沈黙があった。愛が頭を振った。
「アキ先生、私には……、分かりません。どうしたら良いのか」
「愛、7月のダンスカーニバルのこと、憶えてる?」
「え、ダンス?? 7月の大会?? もちろん憶えてます。だけど……」
突然の話題の変化に、愛の思考はついて行けなかった。
「愛、紗良、志津香、花梨の4人でヒップホップダンスを踊ったでしょう? あのとき、大規模浄化魔法の発動が確認できたのよ。皆で心をひとつにしてダンスを踊ることで、発動に必要なブレインシンクロを引き起こすことができたの。大規模浄化魔法の発動は愛の役目、ブレインシンクロのモニターと皆の心を繋ぐのは志津香の役目」
アキ先生が愛達を励ますように続けた。
「あの時と同じでいいのよ。皆で心をひとつにしてダンスを踊るだけでいい。あなた達なら、大規模浄化魔法の発動に必要なブレインシンクロを引き起こすことができる」
ドンドビジョンのスピーカーからアップテンポなイントロが流れ出した。
「さあ、時間がないわ。位置について」
愛達4人はドンドビ交差点の中央にたった。愛を先頭にした菱形のフォーメーション。最初のステップは控えめなヒールトウ。7月と同じだ。
シェアハウスの3人はもとより、交差点を取り囲む無数の八百八狸や、仰向けに倒れ体を動かすことの出来ない隠神刑部、隠れていた街の人々や伊予銀で働く人々は何が起きているのか分からず、唖然として交差点の中心に佇む愛、紗良、花梨、志津香に注目する。
愛、紗良、花梨、志津香は顔を上げると同時にヒールトウの動きを強め、菱形のフォーメーションを音に合わせゆっくりと横一列へと広げてゆく。
Aメロに入ると動きは一気にダイナミックになった。4人は一斉に両手をクロスハンドさせ、そしてピーターポール。4人の顔にはいつの間にか楽しげな笑顔が浮かんでいた。タヌキ達は4人の動きに引き込まれ、なかには腹鼓を打つ者も出始めた。明奈、飛鳥、瑞鶴の体も自然に動き出していた。
Bメロに入った。ドンドビジョンから聞こえる曲のトーンが穏やかになり、4人が息のあったアイソレーションを見せる。続けて上半身を大きく使ったフレーミングだ。手首と肘に角度を付けるポーズを、両方の手首を付けてくるくると回すフィギュアエイトをいれて滑らかに次のポーズへと切り替えてゆく。八百八狸も街の人々も、愛達4人の美しい動きからもはや目を離すことができなくなっていた。
そして、曲もダンスも一気にクライマックスへ!
完璧なシンクロでのダイナミックなキックボールチェンジ!
片腕を高く掲げて2カウントのジャンプ!
ダンスを踊る愛達は、愛と命のエネルギーを放射して輝いていた。
輝きはダンスを踊る4人を包み込み、さらに外へと広がってゆく。その輝きはピンクシルバーをはらんだ白銀の輝きのカーテンとなり、ドンドビ交差点全体を包み込んだ。
八百八狸たちは光のカーテンに触れると、呆然とした表情のものも、恍惚した表情のものも、怒った表情のものも等しく、輝く光の粒子へと浄化されていった。隠神刑部は押し寄せる光のカーテンに目を見開き、通り過ぎた後には微かな光の粒子だけが残されていた。
街の人々の心にほんの少し巣食っていた瘴気も聖化され心のエネルギーへと変わってゆく。光のカーテンはさらに外に広がってゆき、今治市内の全てをやさしく包み込み、浄化していった。
曲が終わった。
明奈、飛鳥、瑞鶴は愛たちのダンスに心を動かされ、たった一度、同じ時間をともに生きることの素晴らしさと感動に包まれていた。3人の心には愛たちと一緒に踊りたいという強い思いが生まれていた。
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【今治銀座かわら版 妖怪注意報】
12月10日 常盤町3丁目で化け猫が目撃されました
深夜、今治銀座アーケードに2本足で立ち、踊りを踊る赤毛の猫が目撃されています。これまでに被害の報告はありません。魔物を見かけられたら、決して近づかず、すぐに青年会にご連絡ください。
このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。
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