妖怪軍団、今治銀座を占領する(2)
「カマイタチは瑞鶴と明奈に任せた!」
「え、ちょ、任せるって?」
前回カマイタチを退治したときは、明奈は大きな鍋のフタで武装していたのだが、今は手ぶらだ。周りをみても盾になりそうなものはない。今治銀座は閑古鳥が鳴いてはいるが、非常に綺麗で常に整理整頓されているのである。
「明奈ちゃあん!」
すぐ側のお洒落な雰囲気のお店エレガント・プラントから明奈に声をかけるものがいた。9月中頃にカマイタチにお店を占拠されて困っていた女性だ。
「これ使って!」
と明奈に鍋のフタをフリスビーのように投げてよこした。鍋のフタは明後日の方向に飛んでいきそうになったが、明奈は素早く跳躍し空中で見事にキャッチした。
「姉さん、おおきに!」
着地した明奈に、カマイタチ達が斬撃を飛ばしてきた。だが、カマイタチが飛ばした斬撃は
カン、カン、カン
と明奈のもった鍋のフタが何なく受けた。明奈に気を取られたカマイタチが、背後から近づくドローン5機編隊に気がついた時には手遅れだった。一気に至近距離へと近づいたドローンからブレードが射出され、カマイタチへと突き刺さった。
かろうじて一匹のカマイタチがブレードを逃れたが、そこは明奈の目の前だった。
「裏爆龍脚!」
明奈の右の回し蹴りが炸裂し、最後のカマイタチも瘴気となって消えた。
そのすぐ先では、飛鳥と夜行さんが一対一で相対していた。両者とも睨み合い微動だにしない。
その夜行さんの背後から、足を忍ばせて近づく白い褌だけを身にまとった男の姿があった。男はミニコミ誌「今治銀座かわら版」の編集長、大浦である。
大浦は今治から瀬戸内海を挟んだ岡山市の出身である。夜行さんを勝負事の神様と信じて疑わない大浦は、西大寺会陽、通称「裸祭り」の参加者のように褌(締め込み)だけを身につけ、夜行さんに触って縁起をかつぎ、万車券を当てようという魂胆なのだが、飛鳥には知る由もない。
「へ、変態?」
「ひひぃ~ん!」
一瞬飛鳥の注意が逸れる。均衡が破られた瞬間を見逃さず、夜行さんが無いはずの口から嘶きを上げ、飛鳥に突進した。
だが、飛鳥は動かない。
夜行さんの振り上げた前足が飛鳥にぶち当たると見えた瞬間、飛鳥の手元の白銀剣が伸び、電光石火の突き技が放たれ、次の瞬間には夜行さんの腹に大きな穴を穿っていた。
夜行さんがもんどりうって路上に倒れた。飛鳥の勝利だ。その夜行さんに、大浦が殺到し、横腹に抱きついたり、体をこすり寄せたりと大忙し。大浦の奇行に飛鳥もドン引きだ。
すると奇跡が起こった、消えかけた夜行さんが後ろ足で大浦の尻を蹴り上げたのだ。大浦は路上をゴロゴロと転がって大の字になって気絶した。その顔には満足げな笑顔が浮かんでいた。
夜行さんが消え去ると、残心を解いた飛鳥が長く息を吐いた。店舗の2階に避難していた商店街の人々が、窓からシェアハウスの3人娘に声援を送った。
「飛鳥ちゃん可愛い〜」
「明奈ちゃん、かっこいいぞ〜」
「がんばれ〜」
「ありがと〜。瑞鶴ちゃんもがんばって〜」
人々の声援に軽く手を振り答えて、3人は先へと進む。
「さっき、変態がいたぞ」
「どんな変態?」
「裸の変態。倒れた夜行さんに体を擦り付けてた」
「きもっ! それ、妖怪やったんちゃうん?」
「わからん……」
その後、大浦の尻には馬蹄形のアザができ、このアザに触ると万馬券、万車券があたるというので、競馬ファン、競輪ファンをはじめ、同性愛者までが殺到することになるが、それは別の話である。
このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。
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