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VS 山姥(2)

 明奈と飛鳥に6機のドローンが一斉に襲いかかった。


「これ全部、瑞鶴(みつる)が操作してんの!?」


 明奈が視界の隅に動くものを感じ、素早く伏せると横あいから襲いかかってきたドローンが頭上を通り抜けた。


「そうらしい。3機が限界といっていたはずっ!」


 と、飛鳥が白銀剣を振るう。だが、ドローンは飛鳥に襲いかかると見せかけて白銀剣のリーチよりも手前で急停止した。


 一瞬戸惑う飛鳥だが、殺気を感じ身をかがめる。背後から別のドローンが襲いかかり、髪をかすめて通り過ぎていった。飛鳥の心拍数が跳ね上がる。


「瑞鶴、魔物ちゃうで、ウチらや! 目ぇ覚まし!」


 頭を両手で守りながら、明奈が必死に呼びかけるが、その声を野間が遮った。


「瑞鶴、魔物がいうことに耳をかしちゃダメよ。あいつら、ずる賢いんだから」

「うん。わかった。ママのいう通りにする」

「瑞鶴はいい子ね」


 野間は瑞鶴の頭をわざとらしく撫でた。


 ドローン6機の猛攻が続く。背後から襲いかかったドローンを、明奈が寸前で横に飛んで避けた。明奈が身を起こしながら野間に叫んだ。


「野間先生! なんで? 瑞鶴にこれやらせてんの、野間先生なん?」


 野間が笑った。嫌な笑いだった。


「瑞鶴、あの魔物、集中攻撃しようか?」

「うん」


 それまで2人を攻撃していた6機のドローンの攻撃が一転、明奈に集中した。明奈の前後左右、上空、地面すれすれから次々にドローンが波状攻撃をかける。


 明奈はナノマシーンに強化された者のみが持つ動体視力と反射神経で攻撃をかわしつつ、プレハブの壁に退避していった。飛鳥が明奈のサポートに入るが、取り回しの大きな白銀剣では効果的に援護が出来ず、かといって、操作している瑞鶴本人を反撃するわけにはいかないのだ。


「瑞鶴、やめて! うちや! 明奈や!」


 明奈が叫んだ。野間が明奈を見た。害虫を見る冷たい目だった。


「ちょっとママにやらせて」

「うん。じゃあ、操縦代わって」


 6機のドローンの動きが止まり、ほんの数秒空中にホバリングし、再び動き始めた。


 が、ドローンの動きは精彩を欠いた。2、3機が同じ機動を行ったり、直進する時間が増えて動きを予測しやすくなった。1機のドローンが不用意に直進を続けるのを、飛鳥は見逃さなかった。


「そこっ!」


 飛鳥が横なぎに振るった白銀剣の先端がドローンの一部に当たった。


「あら、カメラが壊されちゃったわ」

「ママ、6機のマニュアル操作は大変だよ。反復攻撃のアルゴリズム送信した。好きなタイミングでマニュアルに切り替えて使って」

「ありがとう〜、瑞鶴! いい子ね!」


 ドローンの動きが途端に良くなった。ドローンは明奈の顔面すれすれを掠めたり、足もとから近づいて一気に上昇したりと、まるで追い詰めた獲物を嬲るような動きを見せた。その様子を瑞鶴は虚ろな目で見つめていた。


 6機のドローンの連続攻撃を躱しきれず、ついにドローンから射出されたブレードが明奈の右足のふくらはぎを抉った。


「痛っ!」


 明奈がうずくまった。さらにもう1機のドローンがブレードを放ち、右足を庇った明奈の腕に突き刺さった。


「きゃあ!」


 瑞鶴の瞳孔が大きく開いた。ドローンから更にブレードが明奈に向かって射出された。だが、


 キン!キン!


 と白銀剣が2閃し、ブレードをはじき返した。そのまま飛鳥が明奈を背後に庇う。


「ちっ、しぶとい虫ども!!」


 野間が忌々しげに呟いた。自身の流血にも構わず、明奈は呼びかけ続けた。


「みつる……そこにおるんやろ!? お願いや……返事をして!」

 

 瑞鶴の視線が揺れ動いた。全身が震えていた。直立した姿勢のまま、瑞鶴は涙を流していた。


「ママ、もう、やめて、泣いてる、魔物は、明奈、お願い」


 野間は瑞鶴の方を見ようともせずに、右の後ろ回し蹴りで背後から瑞鶴を蹴り飛ばした。瑞鶴は、鈍い音とともに地面に打ち付けられ、それでも止まらずにプレハブの壁にぶつかって止まった。瑞鶴はそのまま動かなかった。


「情報を吸い取るついでに手駒のひとつにしてやろうと思ったが……結局、虫けらは虫けら。使えない。リソースの……ナノマシーンの無駄使いだ」


 野間が吐き捨てるように言った。飛鳥は野間から視線を外さず、白銀剣を握る手に力を込めた。


「明奈、瑞鶴を連れて、ここから避難できる?」

「うん」


 飛鳥がドローンを牽制するなか、明奈が瑞鶴をつかんで膝でいざりながら離れていった。ドローンの攻撃が飛鳥に集中すると、一気に攻撃の密度が増した。飛鳥は壁を背にして猛攻をしのぎ続けた。


 時折、野間がバックからドリンクを取り出して飲みほす時があり、その時だけは攻撃が単調になったが、その後は狂ったような攻撃が続いた。


 ドローンの攻撃は白銀剣のリーチの外側から行われ、飛鳥は防戦一方となり、致命傷ではないものの無数のかすり傷を負った。


 いつ終わるとも知れない持久戦だった。一瞬一瞬が緊張の連続であり、飛鳥には10分が数時間に感じられた。


 気が付くと、ドローンの攻撃間隔が間延びしていた。ドローンのバッテリーとブレードの残量が底をつきつつあった。

このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。

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