VS がしゃどくろ
花梨と明奈は一緒の時間を過ごすことが多くなった。明奈が自分の話をして、花梨が話を聞くというそれだけの行為が2人の絆を深めていた。
その日、花梨はシェアハウスにお邪魔して、皆で楽しくお喋りをしながらホットプレートでお好み焼きを作り、食べて、またお喋りをして過ごすうちに、いつのまにか夜も遅くなってしまったので、花梨は家の人の許可を貰い、シェアハウスに泊まることになった。
シェアハウス1階の和室は10月になってもまだゴキブリが出るというので、布団を2階の明奈の部屋に運び込んで、長く話し込み、さあ就寝しようという時間になって、明奈のスマホに今治銀座の青年会から連絡が入った。ドンドビ交差点近くで巨大な魔物が発生して大変な騒ぎになっているという。
いつもの3人に花梨を加えた4人娘で今治銀座アーケード入り口に緊急出場すると、なにやら柳橋のあたりが騒がしい。4人の位置から騒がしい方向を見ると、
ぬうっ
と突き出された巨大な骨の手が、乗用車の通行を妨害したり、逃げ惑う酔客をつまんで道路に転がしたりしていたのだ。
向かい側のドンドビ広場側に移動した4人は、信じられない光景に、自分の目を疑った。
そこには、ビルほどの大きさの巨大な骸骨が、柳橋のかかる金星川から上半身を現して、周囲を脅かしていたのだった。瑞鶴がすぐに魔物辞典を検索し、正体を突き止めた。
「あれはがしゃどくろだよ。弱点は……頭頂部だって」
と瑞鶴が言い終えるや否や、せっかちな人間であることを自称している飛鳥が腰の白銀剣に手を当てて走り出した。
飛鳥の正面に突き出された巨大な骨の手。その人差し指の骨が黄金色に輝いた。飛鳥の振るった白銀剣が黄金の指の骨を激しく打ち付けた。
カキーンッ
金属音がドンドビ交差点に鳴り響いた。
「なっ? 硬い!」
飛鳥が後ずさると、一瞬前まで飛鳥のいた場所にもう片方の骨の手が激しく叩きつけられた。
「飛鳥、気をつけて! そいつの指はゴールドフィンガー! 破壊不可能だって!」
「もっと早く教えてよ!」
がしゃどくろが両方の手を持ち上げ、飛鳥の真ん前で、もみもみと骨の指を動かした。飛鳥の顔から血の気が引いた。強敵であると同時に、何だか気持ちが悪かった。
「飛鳥、がしゃどくろの注意を引き付けて。両方の骨の手の相手、できる? 明奈と花梨は、その間に、どくろの頭頂部の攻撃、できる?」
瑞鶴はいつの間にか、シェアハウスの妖怪退治チームの司令塔の役目を担うようになっていた。
飛鳥、明奈、花梨は頷いた。
作戦が決まっても決まらなくても、飛鳥の行動は早い。両方の骨の手を相手に激しく剣戟を叩きつけ始めた。飛鳥をつかもうとする骨の両手を、飛鳥の白銀剣が迎え撃ち、両者の剣戟の速さは目に止まらない。次第に剣戟のピッチが上がってゆく。
最初は飛鳥の剣戟が圧倒していた。だが次第次第に、骨の手の動きが飛鳥を上回り始め、ついに骨の人差し指が飛鳥を弾き飛ばした。
「あうっ」
アスファルトに転がる飛鳥を
ひょいっ
と巨大な骨の手が、まるでハムスターでも掴むように飛鳥を持ち上げると、反対の骨の手の指先で飛鳥の体の色々な所をコチョコチョとくすぐり始めた。
「あっ、そこは! やめ……。 ちょ……。あっ……」
飛鳥が自らの貞操をかけて作り出したチャンスを逃す花梨と明奈ではなかった。
今、2人の姿は隣のどんどびビルの屋上にあった。飛鳥が骨の両手と激しく剣戟を交わしている間に、花梨と明奈はロッククライマーさながらの身体能力でここに辿り着いたのだ。
2人の位置からはがしゃどくろの頭頂部が見えていた。花梨と明奈は顔を見合わせて、頷いた。
「明奈、いいわね!」
「花梨、やったろか!」
2人は同時に屋上の床を蹴り、空高くジャンプした。高く。さらに高く!
2人は空中で頂点に達すると、右足を突き出し、がしゃどくろの頭頂部をめがけて必殺技を放った。
「ダブルッ! 爆龍脚ッ!!」
インパクトの瞬間、2人の足に内蔵された衝撃波発生装置がシンクロし、ひときわ激しく輝くと、増幅された衝撃波ががしゃどくろの頭頂部を完全に粉砕した。
2人はそのまま頭蓋骨を破壊し通り抜け、柳橋の上へと静かに着地した。
「「乙女の足で昇天しいや!!」」
花梨と明奈の間に生まれた熱い絆がもたらした勝利だった。
*****
【今治銀座かわら版 妖怪注意報】
10月17日 どんどび交差点の柳橋にがしゃどくろが出没しました!
未明のどんどび交差点に巨大妖怪がしゃどくろが出没し、酔客を転がしたり、巨大な骨の手で道路を塞ぎ国道317号の交通に影響が出ましたが、今治銀座の3人娘とそのお友達の花梨ちゃんに退治されました。
魔物を見かけられたら、決して近づかず、すぐに青年会にご連絡ください。
そろそろ、2学期編もクライマックスとなります。
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