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VS 飛頭蛮(ひとうばん)

「魔物がァ、発生しましたァ――」


 抑揚のない女性の声が校内に響いていた。


 10月始めに体育館横のゲートが復活してから、私立せとうち青雲高校の生徒と教職員にとっては、ほぼ半月ぶりの魔物警報であった。


 志津香は魔物警報を聞くやいなや教室を飛び出し、廊下の窓から体育館横の柵で囲われた一角を目視し、何か女性のような姿かたちをしたものが9体発生しているのを確認した。9体という数字は、最近にしては多い数字であった。志津香が鑑定眼を発動した。


 【ステータス】

 名前:飛頭蛮ひとうばん

 種族:妖怪

 職業:ー

 称号:ー

 レベル:1

 体力:250 / 250

 魔力:200 / 200

 力:25

 俊敏:55

 装備:なし

 スキル:飛行、火の玉、頭突き、引っかき


 同じクラスの愛、紗良、花梨が志津香の横に並んで体育館横を見おろした。彼女たちはせとうち青雲高校非公認の魔物退治チームだ。愛が志津香に尋ねた。


「どう?」

「結構強いよ。ゴブリンキング以上、飛行能力のある魔物が9体」


 3人に緊張が走る。先日も飛行能力のある魔物、一反もめんが出現したのだが、その時は対処できずに瑞鶴みつる達の力を借りたのだった。紗良はポケットから爆裂ナックルを取り出し、右手に装備した。


「飛行能力があるのに、柵の外に出ないのはどうしてかな?」

「発動条件があるのかも。鑑定ではわからないの」

「あの子達にも声かけようよ」


 愛の提案に花梨が反応した。花梨は一反もめんとの戦闘で空中戦の難しさを身を持って味わっていた。魔物に高空へと逃れられると対処のしようがないのだ。


「悔しいけど……。それが賢明ね」


 10数分後、愛達の魔物退治チーム、シェアハウスの妖怪退治チームは新校舎2階廊下の窓際に集合していた。愛が作戦を確認した。


「私、紗良、花梨、明奈、飛鳥さんはせーの(・・・)で窓から降下して突撃。志津香と瑞鶴(みつる)さんは窓に残って、状況把握、狙撃とドローンで私達の援護。オッケー?」


 皆が頷いた。魔物退治チームは愛の手を中心に手に手を載せていった。愛が妖怪退治チームの3人を見た。飛鳥と瑞鶴は一瞬迷う素振りを見せたが、明奈が手を載せると、続けて手を載せた。


「じゃあ、いくよー、みんな! 心を合わせて〜」

「「「「「「「えい、えい、おー!」」」」」」」



*****



 愛、紗良、花梨、明奈、飛鳥が窓に並んだ。愛は爆裂ヨーヨー、紗良は爆裂ナックル、飛鳥は白銀剣を装備していた。


「せーのっ!」


 愛の掛け声で5人は2階の窓から宙空へ踊りだした。


 5人が着地すると、既に待ち構えていた飛頭蛮達が襲いかかってきた。愛は右膝をついて一番近い飛頭蛮に向かって爆裂ヨーヨーを放った。爆裂ヨーヨーはあっさりと飛頭蛮の胸部に大穴を穿った。


 愛の周囲では同じ光景がいくつも見られた。両手を上げて襲いかかる飛頭蛮達を爆裂拳や爆裂脚が吹き飛ばし、白銀剣が2つに断ち切った。飛頭蛮は自分たちに向けられた攻撃を避けもガードもしなかった。


 愛達が怪訝に思う間もなく、倒したはずの飛頭蛮の首が切れて、分離した頭部が襲いかかってきた。飛頭蛮の頭は襲いかかってきたそのままの勢いで愛たちに殺到した。


 愛は素早く手元に戻したヨーヨーを放ったが、的が小さく動きが早い飛頭蛮の頭に当てることができなかった。飛頭蛮はジグザグに飛行しながら、口を大きく開けて火の玉を放った。


「ぼっ」


 愛は一瞬はやく逃れたが、攻守逆転。空中から放たれる火の玉に対し愛は防戦一方となった。


 紗良は拳での攻撃を主体とするボクシングスタイルの近接ファイターだ。紗良は爆裂ナックル右ストレートを飛頭蛮の顔面に決めて頭部自体を粉砕したため分離攻撃を免れた。


 いっぽう、花梨は飛頭蛮の胸部に爆龍脚を放った直後に無防備になってしまい、飛頭蛮の頭突きを食らってノックダウンされていた。昏倒した花梨を無視し、飛頭蛮の頭部は空中から紗良に火の玉を連続で放っていた。


 明奈は両手をあげて襲いかかってきた飛頭蛮の目前で右足を高くあげて、その踵を頭頂に蹴り下げるネリチャギの爆裂踵落としを放っていたため、カウンター攻撃を食らわずに飛頭蛮を撃退していた。


 飛鳥は白銀剣を横一閃して飛頭蛮の胴体を2つに切り、そのまま横を通り過ぎ背後を振り返り白銀剣を構えた。頭部が切り離されるのを見た飛鳥は、今度は縦に飛頭蛮の頭をかち割っていた。


 2階の窓では花梨が飛頭蛮に倒されたのを見た瑞鶴が、即座にホバリングさせていたドローン編隊を突撃させた。


 3機のドローンはブレードを展開し、紗良を攻撃していた飛頭蛮の頭に特攻した。1機のドローンのブレードが飛頭蛮に突き刺さった。瑞鶴はすぐにブレードを射出し、そのままゼロ距離で残り2弾のブレードを飛頭蛮に叩き込んだ。飛頭蛮は地面に落下し、そのまま動かなくなった。


 志津香はマジシャンズステッキを狙撃モードにして、愛を攻撃する飛頭蛮の頭部を2階の窓から狙撃し続けていた。飛頭蛮がジグザグに飛ぶせいで当てられずにいたが、1発の光弾が飛頭蛮の頭部をかすめ、飛頭蛮の注意が2階の窓の志津香に向いた。


 その一瞬の静止を愛は逃さなかった。白銀の輝きと化したヨーヨーが飛頭蛮の顔面を打ち砕き、爆散させた。


「えんじょい♡」

「ぼゲボン!」


 愛が「えんじょい」とコールをすると、魔物(オーディエンス)が熱いレスポンスを返した。戦い(ライブ)は中盤を迎え、まだ4体の飛頭蛮が残っていた。


 飛鳥は飛頭蛮を倒した後、白銀剣を正眼に構え、残った4体の魔物達と対峙し、牽制していた。愛、紗良、明奈が駆け寄ると、飛頭蛮から目をそらさずに飛鳥が静かに告げた。


「一撃で頭部を撃破する必要がある」

「右から私、紗良、飛鳥さん、明奈でいい?」

「分かった」

「承知!」

「まかせんしゃい!」


 4人は走った。両手を前に掴みかかろうと迫り来る4体の飛頭蛮に対し、愛の爆裂ヨーヨーが、有紗の爆裂ナックルが、愛菜の白銀剣が、明奈の爆裂踵落としが同時に炸裂した。


「「「「ぼゲボーン!!」」」」


 体育館横に魔物たち(オーディエンス)の熱いレスポンスが轟き、今日の戦い(ライブ)は幕を閉じた。


 明奈は立ち上がると、倒れたままの花梨に近づいて、開いた足を揃えて乱れたスカートを整えてやった。花梨のパンツがチラリと見えていたのだ。先日はパンチラ大魔神呼ばわりされて取っ組み合いの喧嘩をした明奈と花梨だが、同性のあられもない姿を放置することは、心優しい明奈にはどうしてもできなかったのだ。嬉しくなった愛が


「ありがとう、明奈!」


 と、声をかけると


「武士の情けっちゅうやつですわ!」


 と、照れ隠しに明奈が笑った。

このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。

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