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VS 赤鬼(2)

 9月に入り、新学期が始まった。


 瑞鶴(みつる)達3人は体育館で体力測定を行なっていた。3人は通信制コースだが、こうして時折登校しては、体力測定という名目でデータを採取されているのだ。


 他の生徒たちが通常のカリキュラムに則った体育の授業を行っている傍らで、3人は握力測定やら反復横跳びを行っていた。ここでの生活が最も長い明奈によると、今治に来てから、体育の時間はずっと体力測定を行っているのだという。


 初めに、瑞鶴(みつる)が握力を測定してみると35kg。高校生女子の数値を大きく上回っていた。瑞鶴が明奈に握力計を渡す。


「はい、明奈」

「ウチ、めっちゃ握力あんねんで!

 うおりゃーー」 


 大声で喋る明奈に普通科の生徒達の注目が集まった。そうでなくとも、金髪で関西弁の明奈は良く目立った。明奈が握力計の針を見せてきた。


「どや! 52キロや!」


 当初、明奈の握力は20kg程度であったが、少しづつ強くなり、今では50kg以上あるという。成人男性の握力が45kg程度であるから、明奈はそれ以上の握力の持ち主ということになる。明奈が飛鳥に握力計を渡す。


 飛鳥が右手で無造作に握力計を握った。針がぐんと動き、60kgを越えたあたりでようやく止まった。


「うわ、60キロやって」


 明奈の大きな声に体育館がざわついた。飛鳥はどちらかというと幼い顔立ちの、小柄な少女なのである。


「この握力計、壊れてるの?」

「……ウチ、あんたには逆らわへんわ」


 3人の体力測定は続いた。飛鳥が垂直飛びで軽く2mを越えてくる光景はもはや特撮だった。


 プルルル…プルルル…


 しばらくすると、どこからか着信音が聞こえてきた。3人の担任だという女性教師、野間が床に置いていた荷物カゴの中から携帯電話を取り出し、何事かを話したあと、3人に向き直った。


「皆さん、今治銀座に魔物が出たそうよ。悪いけど、急いで行って頂戴」


 野間がスマホの画面をみせると、そこには監視カメラと思われる画質の荒い映像に赤鬼が3体映っていた。


 タクシーに乗って今治銀座入り口へと急行すると、警察が既に規制線を張っていた。助手席に座った野間が運転手に何事かを告げると、タクシーは大きく迂回して、横から今治銀座へとはいる脇道を進んだ。


 規制線はなかった。


 野間のスマホで赤鬼3体の位置を確認して、3人は配置についた。



*****



 瑞鶴は赤鬼達から少し外れた横道にいた。野間が手に持ったスマホには赤鬼達の様子がリアルタイムで映し出されていた。


 今回出現した赤鬼は例によって3体。赤鬼達は道の真ん中で相撲を取ったり、並べてある自転車を押し倒したり、はては電話ボックスの上に乗ったりと大暴れだ。


 瑞鶴はスマホの画面を凝視しながら、プロポを両手にしっかり持って、ワイヤレスイヤホンに呟いた。


「みんな、準備いい? いくよ」


 地面に置いたドローンが浮上した。


「いま上昇した……。角を曲がってアーケードに入った」


 ドローンを追って瑞鶴もアーケードを走った。


「まっすぐ進んでるっ……。そろそろだよっ。あっ、赤鬼がドローンに気付いた!」


 瑞鶴は赤鬼とドローンを同時に視認できる位置にまで来ていた。赤鬼達の方向に狙いを定め、ドローンを全速力で突撃させる。3体の赤鬼は甲高いモーター音で突進するドローンに完全に注意を奪われていた。


「今だよっ!」


 瑞鶴の合図で、赤鬼の直ぐ側の店舗から白銀剣を構えた飛鳥が突進し、明奈がすぐ後に続いた。


 赤鬼達は完全に不意を突かれた。全速力で飛来したドローンは赤鬼達の間をいったん通り抜けたかと思うと、空中で急停止して、再び赤鬼達に襲いかかる態勢に入った。


 最も店に近い位置にいた赤鬼に向かい、神速の速さで飛鳥が飛び込んだのは、まさにこの瞬間だった。もともと背の低い飛鳥が地を這うような歩法で赤鬼との距離を詰めると、赤鬼の両足の脛を叩き折った。


 少し遅れて、明奈は得意の跳躍で空中を駆け抜け、別の赤鬼に殺到した。


「ロイリングドラゴン!!」


 一瞬の刹那に2回の踵蹴りと蹴りを交互に叩き込む明奈の必殺技だ。赤鬼の首から上が消え失せていた。


 残り1体の赤鬼は何が起こっているのか理解出来ないうちに、飛鳥と明奈から挟み撃ちの形となり、あっけなく飛鳥の白銀剣に討ち取られてしまったのであった。1分も立たないうちに、今治銀座の真ん中に3体の赤鬼が横たわっていた。


「なあ、みんな、ウチの必殺技、見てくれた? 見てくれたやろ! あれな、足の往復ビンタやねん。赤鬼、おもいっきしシバいたったわ。乙女の足でシバかれて昇天しおったで!」


 明奈の興奮が冷めやらぬ中、赤鬼達の残骸が次第にその輪郭を失い、消え失せつつあった。すると先程まで隠れていた野間が急ぎ足でやってきた。


「あなた達、理科の実験用の2lビーカー、家に置いてあるわよね?」

「あ? はい。 シャッターの内側に、ラボカートに載せて置いてます」

「近見さん、1つだけ、瘴気を残しておいてくれない?」

「……分かりました」


 野間は来た時同様に急ぎ足でその場を離れると、すぐにラボカートを押して戻って来た。野間は飛鳥に聞きながら、瘴気と重なる位置に、水と磁気撹拌子の入った2lビーカーを配置した。テーブルタップを伸ばして近くの店舗から電源を確保し、ビーカーを載せてあるスターラーの撹拌スピードを少しづつ上げると、水の中の磁気撹拌子がゆっくりと回り始めた。


「野間先生、これ、何をやってるんですか?」

「瘴気と水の相性がいいんじゃないかって、そういう情報があったのよ」


 ビーカーの周囲では飛鳥が白銀剣を振るい瘴気を祓っていた。


「美少女まめ剣士が鬼退治をした後、演舞している」という話が広まり、いつの間にか周囲には近所の老人達が集まり、「凛々しいね」とか「可愛いねえ」と見物するのであった。


 全ての瘴気を祓い終えた飛鳥が、ビーカーに目をやると、さきほどよりも瘴気の黒色が薄まっているように見えた。飛鳥がそのことを野間に告げると、野間は興奮を隠せない様子であった。3人はシェアハウスへと戻ったが、その背後では野間が食い入るようにビーカーの観察を続けていた。


 この後、瘴気を溶かし込んだ水は瘴気水と呼ばれ、野間は瘴気水の研究にのめり込んでゆく。



*****



【今治銀座かわら版 妖怪注意報】


9月2日 常盤町2丁目の電話ボックス付近に赤鬼が出没しました!

白昼の今治銀座アーケードに赤鬼3匹が出没しましたが、近所に住むせとうち青雲高校の女子生徒3人に退治されました。その後は女子生徒による演舞も披露されて、集まった人々の心を大いに和ませたそうです。

魔物を見かけられたら、決して近づかず、すぐに青年会にご連絡ください。

このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。

よかったら、ブックマークや評価をポチっとしてもらえると作者の励みになります!

次も頑張ります!

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