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閑話:瑞鶴はナノマシーンと対話する(2)

瑞鶴(みつる)はダイニングテーブルで、明奈とともに夏休みの宿題をして、昼時になったので昨日の晩の残り物で昼ごはんとした。匂いを嗅ぎつけたのか、そのタイミングで飛鳥も2階から降りてきた。


「瑞鶴は料理が得意なん?」

「全然。でも家にいた時に作ってたから」

「いやあ、すんごく美味しいよ、なあ、飛鳥?」

「うん、美味しいね。味付けが濃くないのに外さないのは単純に凄い」

「瑞鶴は顔も可愛いし、絶対いいお嫁さんになるよ」


明奈も飛鳥もベタ褒めだ。褒めておけば料理当番を代わってもらえると思っているのか、やけに褒めてくる。


だが、明奈と飛鳥の餌付けに成功して、瑞鶴の自尊心はやや回復したようだ。しばし他愛もない話をした後、瑞鶴は自室へと戻った。


空腹になると人間は怒りっぽくなるという話を聞いたことがあった。腹が満ちたところで、仕切り直しだった。


瑞鶴は会話の途中から再開することにした。使用済みBINの内訳を聞き出し、紙の切れ端に書き出してみた。


 BINOS        20BIN

 CPU          1BIN

 鼓膜内スピーカー     5BIN

 RF受信機       10BIN

 RF送信機       20BIN

 リニアアクチュエーター 50BIN

 網膜ディスプレイ   150BIN(構築中)


鼓膜内スピーカーは何となく分かる。謎の声が聞こえるのは鼓膜内スピーカーによるものだろう。


RF受信機、RF送信機はネットで調べた。この2つの装置が自分の体の中にあるというのは変な感じだ。


リニアアクチュエーターとはなんだろう。瑞鶴の体の中にモーターが入っているのだろうか?


体育の授業で50m走の結果が妙に良かったが、それと関係があるのかも知れない。


網膜ディスプレイは先程、実装を命じたばかりだ。


(残りはBINOSとCPUだが、いったい何だろう)


瑞鶴はさっそく聞いてみることにした。


「BINOSって何?」

<生体ナノマシン操作システム>


「BINOSの機能を説明して」

<生体内のBINを管理し、制御することができる操作システム>


「CPUって何?」

<コマンド処理ユニット>


「コマンド処理ユニットの機能を説明して」

<生体とBINOSとのインターフェイス>


現在、瑞鶴は謎の声と会話をしていて、謎の声によるとCPUは瑞鶴とのインターフェイスであるという。


つまり……


(このムカつく謎の声の正体はCPUということになる)


謎の声の主の正体が判明した。大いに結構。


それは良いとして……


瑞鶴は以前から、プロポ(ドローンの操縦装置)でドローンを操作するたび毎に、ある狂気めいた願望が胸の中を渦巻くのを感じていた。


その狂気めいた願望にはけぐち(・・・・)を与えることができるかも知れない。


「ドローンと脳、直接接続したい」

<実行不可能です>


随分と狂気めいた願望であることは分かっているし、CPUに拒否されるのも慣れてきた。CPUとの対話には面倒くさいだんどり(・・・・)が必要なのだ。


「どうして実行不可能なの?」

<ドローンが接続されていません>


「ドローンに接続して」

<ドローンの電源を入れてください>


電源を入れるとドローンのLEDが点灯した。LEDは接続待機中を示す素早い点滅パターンを繰り返した。


CPUによると、瑞鶴にはRF送信機が内蔵?されているという話だから、ドローンとの接続も当然のようにできるのだろう。


しばらくすると接続中を示すゆっくりとした点滅へと変わった。


<ドローンとの接続が完了しました>


瑞鶴にはドローンと接続したという感覚がまるで感じられなかったが、


「上昇」


と指示を出すと、ドローンが急激に上昇し、天井にぶつかり、そこで止まった。


「下降」


と指示を出すと、4つのプロペラの動きが全て止まり、ドローンが床に落ちた。


「ゆっくり上昇」


今度はドローンがゆっくりと上昇した。


「そこでストップ」


ドローンが空中で止まった。その後、前進、右旋回、左旋回、後退など色々な操作を試したが、音声でのドローンの操縦は操作性が悪かった。


プロポのほうがよっぽど操作性が良かった。これでは意味がない。


ふたたび、最初の要求を繰り返した。


「ドローンと脳、直接接続したい」

<実行不可能です>


「どうして実行不可能なの?」

<脳からの出力がありません>


CPUの回答が変化した。


「脳からの出力を取り出して」

<実行不可能です>


「どうして実行不可能なの?」

<脳に神経導線が実装されていません>


CPUとの会話を通してわかったことは、CPUは限られた情報しか返してくれないということであった。先程の使用済みBINの内訳を聞いた質問では、多くの情報を得ることができた。


質問の仕方に工夫が必要であった。


「脳に神経導線を実装して」

<脳の全領域に神経導線を実装するには60BIN不足しています>


ふたたびBIN不足だ。


瑞鶴は顎に右手を当ててしばし考えた。


CPUは脳の全領域、といったはず。であれば、領域を限定すれば必要なBINの量も減らすことができるのではないだろうか。


「脳のどの領域からの出力が必要なの?」

<皮質運動野>


「皮質運動野に神経導線を実装して」

<皮質運動野に神経導線の構築を開始しますか?(はい/いいえ)>


「はい」

<皮質運動野に神経導線の構築を開始しました>

<皮質運動野への神経導線の構築には約10日2時間かかります>

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