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ダンスカーニバル

中高生ダンスチーム選手権、通称ダンスカーニバルとは、日本全国の中学高等学校に所属するダンスチームが参加し、作品としての完成度や表現力を競い合う全国規模のダンス大会である。


6月に学校側の許可を得て、愛達4人はこのダンスカーニバルのスモール部門にエントリーしていた。


まだ4ツ首大蛇との戦いの記憶も新しい7月の上旬、愛達は大阪市内の多目的屋内競技場の廊下にいた。大きめの白Tシャツにオリーブカラーのカーゴパンツといったラフな格好だ。


周りには愛たちと同年代の少年少女たちが演技前の最後の打ち合わせを行う姿や、演技直後の興奮が冷めやらず大声を上げている者たちもいた。


愛が花梨の腕に手を触れると、花梨の体が一瞬跳ね上がった。


「ごめん! びっくりした?」

「な、なに?」

「緊張してる?」

「少しだけよ。言っておくけど、あなた達と違って私はダンス初心者なんだからね!」

「花梨……。この大会に参加してくれて、本当にありがとう」


学校側からダンスカーニバルへの参加許可を得て、花梨と明奈を誘ったのが6月後半だった。明奈にはバイトがあるからと断られてしまったが、花梨はダンスカーニバルへの誘いに応じた。


「何よ、改まって。……参加するに決まってるでしょ。でも、次はもっと前に教えてほしいわ」

「急な話だったよね。ありがと」


志津香が念話でアナウンスした。


(みなさん、今日も脳波モニターしま〜す!

 ご協力をお願いしま〜す!

 シンクロがうまくいけば新しい浄化魔法を試します。

 愛さん、魔法の発動、よろしくお願いしま〜す!」


サキュバスと化した志津香を人間へと戻した浄化魔法とは異なり、新しい浄化魔法は離れた場所にいる魔物をも浄化することができる魔法だ。この魔法を使うためには、4人の持つ心のエネルギーを愛に集約させることが必要だ。


アキ先生によると過去の歴史においてこの浄化魔法のはっきりとした記録は残っていない。だが、愛の浄化魔法と志津香の波動を組み合わせれば実現できる……かも知れない、というのがアキ先生の見立てだ。


紗良が声に出して答えた。


「それ、今日もやんなきゃダメ?」

「アキ先生からの宿題なのよ。とっても大事なことなんだって」


運営スタッフから声が掛かった。次は愛達のステージだ。


「じゃあ、みんな、アレ、やろうか!」


4人は円陣を組んだ。円陣を組むのはもはや定番だ。愛の手を中心に各々が手に手を載せていった。


「みんな、全部出しきっていくよ!」

「「「「えい、えい、おー!」」」」


気合を入れた4人は舞台袖に向かった。



*****



「それでは、次はせとうち青雲高校ダンス部、せとうち星雲クエーサー、お願いします」


照明が暗転しイントロが流れ出した。


ステージ上の4人は小さなヒールトウを踏み出した。上半身のバウンスは最小限、手は後ろに回し顔はうつむき加減だ。


顔を上げ大きなステップにスイッチ。両手はまだ大きく動かさず胸下にキープ。ひし形のフォーメーションを横一列に広げてゆく。


Aメロに合わせて両手をクロスハンドさせると気持ちが一気に高まった。


愛達には高難度なステップや振り付けをいくつも取りいれる時間はなかったが、これまでの魔物との戦闘という生死をかけた経験を通して、文字通り呼吸を合わせて動くことができた。


運動野のβ波をリアルタイムでモニターしている志津香から念話がはいった。


(0.63!!)


志津香の念話は驚きの波動をともなっていた。この速さで全体シンクロ度が0.6に達したことはなかった。今日は0.7までシンクロ度を上げられるかも知れない。


一斉にピーターポール。ステージの広さを存分に使う。リズムにあわせてより大きな動きへと繋げていく。練習とは違い、今日はオーディエンスがいる。オーディエンスのなかには体を揺らす姿も見られはじめた。4人もオーディエンスのグルーブを感じる。


Bメロの曲調は穏やかだ。腰のアイソレーション。両手は顔周りのフレーミングからのヴォーギング。シンクロ度が少し低下する。花梨のβ波が少しずれている。


(いいよ! いい感じ!)


志津香が励ましの波動を送る。しなやかな手の動きをダンスに取り込めないだろうかと提案したのは志津香だった。手の動きをより意識して行うことでシンクロ度も上がった。滑らかな手の動きをカノンする。オーディエンスから歓声が上がった。


(0.69!!)


曲のサビだ。4人はダイナミックにキックボールチェンジ、からの片腕を上げて2カウントのジャンプ。オーディエンスも縦ノリになり、競技場の一体感が一気に高まった。


(0.70!! 愛!)


志津香の合図で、愛が浄化魔法を発動した。


4人の生命のエネルギーが愛に集約され、愛から放射される。


浄化のエネルギーはステージを中心に広がってゆき、競技場を飽和し、さらに競技場の外側へ、外側へ。


愛のエネルギーはオーロラのような光のカーテンとなって、周囲を浄化してゆく。


ステージが終わった。競技場を静寂が包んだ。


停止したポーズから4人が紅潮した顔を上げたとき、オーディエンスの大歓声が競技場を揺るがせた。



*****



その日以降、大阪の屋内競技場を中心とする半径約20km圏内で魔物の発生件数が0となった。


エルデリアの賢者アキターレスは大規模浄化魔法の試行で得られたデータを取り込み評価を行った。


アキターレスによってのみ可能な演算能力を駆使し、無数の仮説に基づいて無数のモデルを組み立て計算を行った。膨大な量の計算結果は何度も参照され、モデルは自己無撞着的に修正され、データに合わないモデルは容赦なく棄却された。


アキターレスは最終的に残ったモデルに基づいて、緊急対応プランを作成した。


プランではあと2人の少女が必要だった。

このお話で一学期編は終了です。


ここまでお読み頂き、ありがとうございます!

このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。


よかったら、ブックマークや評価をポチっとしてもらえると作者の励みになります!

次も頑張ります!

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