VS ゴブリンエンペラー(5)
ガァシャーン!!
ゴブリンエンペラーが背後を振り返ると、ゲートの黒い欠片が砕け散る向こう側に、爆裂ヨーヨーを半身に構えた愛の姿があった。
愛がヨーヨーを投げたモーションからサッと右手を高く掲げた。
「トルネードヨーヨー!」
愛お得意の範囲殲滅攻撃だ。周囲の雑魚ゴブリン達が次々に爆裂ヨーヨーに打ち倒され、黒い瘴気へと姿を変えてゆく。
「浄化!」
そして瘴気はすぐさま、愛から放出される浄化のエナジーにより聖化され、輝く粒子となり消えていった。
バシッ
爆裂ヨーヨーが再び愛の手に収まった時、愛とゴブリンエンペラーの間を遮るものは無く、射殺さんばかりの憎悪に満ちた黄色い視線と、愛と生命の力に溢れた鮮烈な視線が正面からぶつかりあった。
愛の傍らで、明奈は周囲を警戒し、志津香はマジシャンズステッキを構え、紗良と花梨に乱暴を働いていたゴブリンを狙撃し続けていた。
目に見える雑魚ゴブリンを片付け終えると、志津香はゴブリンエンペラーを見つめた。
「鑑定!」
【ステータス】
名前:ー
種族:ゴブリンエンペラー
職業:ー
称号:ー
レベル:2
体力:440 / 440
魔力:440 / 440
力:380
俊敏:220
装備:髑髏の杖(UR)、髑髏の盾(UR)
スキル: 威嚇(中)
電撃(中)
自動防御(中)
攻撃吸収(中)
攻撃放出(中)
志津香が鑑定の結果を簡潔に愛に教える。
「体力と魔力が400越え!
威嚇、電撃、自動防御、攻撃吸収、攻撃放出がある」
愛は志津香に頷くと、ヨーヨーを半身に構えて、ゴブリンエンペラーにじりじりと近づいてゆく。
仁王立ちで愛を睨みつけるゴブリンエンペラーに対し、一歩ずつ、一歩ずつ。
ゆっくりと距離を詰め、爆裂ヨーヨーの射程範囲に入った瞬間、愛の手元から白銀に輝くヨーヨーがゴブリンエンペラーの顔面に向かって放たれた。
ヨーヨーの動きを察知した髑髏の盾がすぐにインターセプトした。
ごん
鈍い鐘のような音が響き、髑髏の盾の目が赤く光った。
「これが自動防御と攻撃吸収……」
愛がひとりごちた。
ゴブリンエンペラーがニヤリと笑った。愛の攻撃を恐れるに足らずと判断したのだろう。今度はゴブリンエンペラーが愛に近づいてゆく番だった。髑髏の盾を前面に、愛に向かって近づいてゆく。
愛がヨーヨーを放つが、髑髏の盾の自動防御に阻まれてゴブリンエンペラーにダメージを与えることができない。
愛は一歩づつ後退してゴブリンエンペラーから距離を保ちながら、それでもアンダースローでヨーヨーを放ち続けた。
ごん
ごん
廊下に鈍い金属音が響く。
緊張からか、廊下の窓から太陽に照らされてか、愛の額に玉のような汗が流れ、目に入る。愛は左手で汗を拭った。爆裂ヨーヨーの威力は無効化されるのに、愛は攻撃をやめようとしなかった。
ごん
ごん
ゴブリンエンペラーがゆっくり近づき、愛がゆっくり下がる。
愛の目に汗が入り、それを左手でぬぐう。ゴブリンエンペラーがいやらしく笑った。
ごん
ドゴン!!
突如、音が変わった。ゴブリンエンペラーは信じられないものをみる目で自分の右足を見ていた。いや、右足のあった空間を見ていた。
ゴブリンエンペラーの右足は消え失せていた。
ゴブリンエンペラーは右膝をついた。
再び愛がヨーヨーを投擲した。ヨーヨーは廊下に色濃く影を落としながらゴブリンエンペラーの顔面を狙う。
髑髏の盾が素早く移動し、ゴブリンエンペラーの顔面とヨーヨーの間に割って入った。
なのに、
ドゴン!!
今度はゴブリンエンペラーの左脚の脛が爆散した。両脚を爆散させられたゴブリンエンペラーがうつ伏せになって倒れた。
ゴブリンエンペラーは右手を床について、上半身を起こすと、震える左手でなおも髑髏の盾を構えた。
「エクリプスヨーヨー」
愛がアンダースローで爆裂ヨーヨーを投擲した。ゴブリンエンペラーの顔面に向けヨーヨーが飛ぶ。
ドゴン!!
ゴブリンエンペラーの胸部が爆散した。既にほとんどの体力を失い消滅寸前のゴブリンエンペラーが憎々しげに愛を睨んだ。
愛が静かに呟いた。
「やっと気がついた?
君がヨーヨーだと思って防いでいたのはヨーヨーが生み出した幻。
ヨーヨー本体は床のすぐ上を飛んでいたんよ。
黒いから影だと思ったでしょ?」
ゴブリンエンペラーは愛に向かって髑髏の盾を構えた。愛がにっこりと笑い、ヨーヨーの構えを解いた。
「君にお礼をいいたい人がおるみたいよ」
ゴブリンエンペラーが振り向くと、すぐ後ろには怒りに燃える花梨が立っていた。ゴブリンエンペラーが動くよりも早く、花梨がゴブリンエンペラーの胴体を蹴り上げた。
「爆龍脚!」
「ゔぉゲボ〜〜ン!」
ゴブリンエンペラーは胴体を爆散させられ、廊下を転がり瘴気を撒き散らしながら消滅した。
「えんじょい、ですわ!」
戦いが終わったことで張り詰めていた精神が緩んだのであろう、花梨がよろめいた。愛がすぐさま駆け寄って支えた。
「花梨、遅れてごめん……」
「紗良がいったのよ。愛は絶対に来るって。だから、戦えたわ」
愛は花梨を抱きしめてヒールをかけた。花梨の後ろで、紗良が微笑んだ。
「絶対来るって、信じてたよ」
愛は紗良を抱きしめた。
「ごめん、沙良、本当にごめん」
「大丈夫、こんなのかすり傷だよ」
愛は紗良をいっそう強く抱きしめてヒールを掛けた。
「愛、いたい、いたい!」
「!! ゴメン!」
*****
愛達がゴブリンエンペラーを相手に死闘を演じていた時、新校舎の1階では異変が生じていた。
最初は取るに足りない、小さな魔物だった。その魔物は校舎内のどこからともなく姿を現していた。
その魔物は4つの首を持った蛇の形をしていた。倒されたゴブリン達から生じた瘴気を吸収しつつ、廊下をうねりながら進んだ。
瘴気を吸収するたびに魔物の体が大きくなっていった。瘴気を求め、渡り廊下から中庭に出る頃にはゴブリンよりも大きく成長していた。
蛇の魔物は貪欲であった。体を左右へくねらせながら地面を滑るように進み、どんどん瘴気を吸収していった。
蛇の魔物は4つの頭を不気味に揺らしながら周囲を探った。近くに生き残りのゴブリンを見つけると、4つの首たちが争うように鎌首をもたげ、ゴブリンに噛みついた。最初に噛み付いた鎌首がゴブリンを一飲みにすることもあれば、複数の鎌首が共同して獲物を喰らうこともあった。
奇妙なことに、蛇の魔物に睨まれたゴブリン達は、まるで運命を受けいれるかのように、一切抵抗することなく飲み込まれていった。獲物を飲み込むたびに、蛇の魔物は大きくなっていった。
志津香の目を逃れ学校の内外に潜んでいたゴブリンを掃討し終え、中庭に戻ってきたジェイソンが見たものは、2tトラック程の大きさの巨大な4つ首の蛇の魔物がとぐろをまく姿だった。
「こりゃあ、またやばいのが出てきたな」
ジェイソンが慌ててハーレーの向きを変えた。
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このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。
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