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VS ゴブリンエンペラー(3)

 国道317号線をハーレーダビッドソンXLH1200が爆音をあげて走っていた。その勢いは内なるエネルギーを抑えきれない悍馬だ。


 サイドステップがアスファルトをこするほど車体を傾けて交差点を曲がると、せとうち青雲高校の正門はすぐ左手側にあった。


「愛ちゃん、このまま正門から入るぜ」


 ジェイソンが愛に確認する。後部シートで愛が叫んだ。


「うん! 正門に入ってまっすぐ進んで!」

「了解だ!」


 ハーレーはスピードを落とし気味に正門から校内に入った。それでもわずかな段差でハーレーが大きく跳ねる。


 正門からは玄関までまっすぐ歩道が続いていた。ハーレーは歩道に進入し、そのまま前に進んでいった。バイザー越しに、愛の視界を黒い何かがかすめた。


「止めて!」


 ハーレーが急停車した。ヘルメットのバイザーを上げると猛りきったエンジン音が痛いくらいに鼓膜を震わせる。


 渡り廊下の向こうには、直径2メートルくらいの黒い球体が地面の少し上に浮くように実体化していた。


「あれ、ゲートだよね? おじさん、お願い!」

「オーケイ」


 ジェイソンは右足を路面につけると、ハンドルを切りクラッチを繋げながらアクセルを開いて、その場でハーレーの方向を右に90度回転させた。


「いくぜ、愛ちゃん!」


 悍馬がアクセル全開で走り出した。反動で体が後ろに持っていかれそうになる。体育館へと続く渡り廊下を飛ぶように横切ると、黒い球体はもう目の前だ。


 愛は後部シートで立ち上がった。みるみる内にゲートが近づいてくる。


(今だ!)


 愛の右手から爆裂ヨーヨーが放たれた。爆裂ヨーヨーはいつにも増して強く輝きながら黒い球体に突き刺さった。ハーレーが横を通り過ぎたその瞬間、


 ガァシャーン!!


 巨大なガラスの玉が砕けるように、黒い破片を撒き散らしながら闇の塊が砕け散った。


 ハーレーが停止した。愛はヘルメットを脱ぎ捨て、戦っている友人達の姿を探すと、まるで甘い蜜に群がる蟻のように、ゴブリンが新校舎の一角に押し寄せ、ひしめいているのが見えた。


「あそこだ!」


 愛は10数メートルを一気に走ると、跳躍し、空中で背を丸めると、大きく開いた窓から内部に飛び込んだ。内部では志津香と明奈がゴブリン達を相手に死闘を繰り広げていた。


 この瞬間、愛の至近距離にはゴブリンはいない。チャンスだった。


「トルネードヨーヨー!!」


 愛は右手を高く掲げて、爆裂ヨーヨーを手首の動きだけで、モーニングスターのように周囲に振り回した。まるでグラインダーが肉を削るようにゴブリン達を蹴散らしてゆく。


 一気に数を減らしたゴブリンはもはや愛達3人の敵ではなかった。残りのゴブリンを掃討し、周囲の安全を確認すると、愛は2人に駆け寄り、抱きしめた。


「遅れてごめん!」

「絶対来ると思ってた!」

「ええ運動やったわ!」


 志津香の中に瘴気を感じた愛は、志津香を強く抱きしめた。


「浄化!」


 志津香の体内に愛の生命のエネルギーが優しくつつむように流れ込んでくる。愛のエネルギーが瘴気にふれると、瘴気は嘘のようにたやすく聖化されていった。


「志津香、ごめんね……。無理させちゃったんだね……」

「愛が来るって分かってたから!」


 愛と志津香がかたく抱き合った。


「ちょっとちょっと、二人とも、まだ早いで!」


 と明奈が釘を刺したが、志津香は顔を赤くしながらも、なかなか愛を離そうとはしなかった。



*****



 3階廊下では熾烈な戦いが続いていた。


「爆裂ナックル!」


 紗良のストレートを受けたゴブリンがその後ろのゴブリンごと後方に吹き飛ばされるが、すぐに別のゴブリンが取って代わる。爆裂ナックルの消費チャージは0だ。紗良は右拳の爆裂ナックルを打ち続ける。いっぽう、背中合わせの花梨の爆裂脚の消費チャージは5だ。やみくもに使うわけにはいかなかった。2人はくるくると回るように位置を変えながらゴブリン達を蹴散らしていったが、ゴブリン達は次から次へと押し寄せてきた。きりがなかった。


「こちらから仕掛けたいわ」

「もう少しだけ待って。絶対愛が来るから」

「紗良、愛はもう…」


 花梨がいいかけた時、職員室のまえの廊下の瘴気が蠢き始めた。瘴気はゆっくりと渦を巻き始めると、次第に大きくなり、やがて直径2mくらいの黒い球体が実体化した。


「あれって、もしかして?」

「ゲートってやつかしら?」


 紗良と花梨は顔を見合わせた。黒い球体までの10mほどの道のりをゴブリンが埋め尽くしていた。


「紗良、道、作ってもらえるかしら?」

「オッケー!」


 紗良が中腰になり、右腕の軸線が上に向かないように調整しながら、最大の攻撃技を放つ。


「爆裂ナックル右ストレートーッ!」


 紗良の渾身の右ストレートは正面のゴブリンにぶち当たり、後方のゴブリン達を巻き込んで後方に吹き飛んでいった。千載一遇のチャンスだった。花梨は紗良の開けた突破口を一気に跳躍し、黒い球体に肉薄した。


「これで終わりよ! 爆龍脚!!」


 花梨の左足首に装備されたパワーアンクレットが激しく輝き、爆龍脚が球体に炸裂した。


 はずだった。


 ぬうっ


 黒い球体から骸骨が顔を出し


 ごん


 低い鐘の音のような鈍い金属音が短く響いた。爆龍脚を受けた骸骨は爆散することなく、ただ虚ろな目を赤く光らせただけだった。


 骸骨が黒い球体から抜け出てきた。それは不気味な髑髏の意匠が施された盾だった。紗良にはこの髑髏の盾に見覚えがあった。


「ゴブリンロード? 違う、これは……」


 黒い球体から巨大な魔物が姿を現した。その魔物は左手に髑髏の意匠が施された盾を、右手に髑髏の装飾がついた杖を持っていた。


<ゴブリンエンペラーを確認しました>

ここまでお読み頂き、ありがとうございます!

このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。


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次も頑張ります!

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