VS ゴブリンエンペラー(2)
そのころ、体育館裏でも熾烈な戦いが繰り広げられていた。体育館をのぞむ新校舎1階の廊下の窓から志津香がマジシャンズステッキを構え、ゴブリンを狙撃し続けていた。狙撃に必要なチャージは0だ。志津香は弾切れを気にせず連射する。
窓のすぐ外では今治銀座の自宅から合流した明奈がゴブリンを相手にひたすら蹴り技を放っていた。
「ほんま、マナーの悪い、お客さんやで」
死を恐れぬゴブリン達は明奈と志津香が陣取る一角に津波のように押し寄せた。明奈の蹴りでダメージが蓄積するとゴブリンは倒れ消えていったが、幾重にも折り重なった瘴気の黒いカーテンの向こうから、新たなゴブリンが棍棒を掲げて襲いかかってくるのであった。
ひゅん、ごん
矢唸りと同時にガラスに亀裂が生じた。矢の来た方向をみるとゴブリンアーチャーが二の矢を番ていた。志津香がすかさず狙撃するとゴブリンアーチャーは頭部から後方に吹き飛んだ。マジシャンズステッキは志津香の神経と接続されており、狙うという動作が一瞬で完了する。これまで明奈と志津香に矢を射掛けたゴブリンアーチャーは志津香の反撃により秒殺されていた。
瘴気の向こうからゴブリンよりもふた回り大きな影が3つ同時に現れた。
<ゴブリンロード3体を確認しました>
「ゴブリンロードには爆龍脚が3回必要よ!
明奈、後退! いったん中に入って!」
志津香はマジシャンズステッキを3点バーストモードに切り替えた。
ドドドッ
志津香が心の引き金を引く度に3発の光弾が連射されてゴブリンロードを一瞬でボロボロにした。3点バーストは強力な切り札であるが、志津香のチャージを10消費した。志津香の現在のステータスではフルチャージで50であるため、5回の使用が限度だ。
(あと2体!)
ドドドッ
2体目のゴブリンロードが顔面に光弾を受けて後方にのけぞった。隙をみて、窓枠に片手をつくと明奈は軽々と窓の高さを飛び越えた。明奈の校舎内への後退が完了したが、その間にゴブリン達もついに窓枠にとりつくことに成功していた。
ドドドッ
最後に残ったゴブリンロードも3点バーストの餌食となったが、その間に、もはや志津香の狙撃を恐れる必要のなくなったゴブリン達は窓から校舎内へとなだれ込み、またあるものは新校舎を迂回してグランドへと侵入しようとしていた。
グランドには大勢の生徒たちが避難していた。このままでは大混乱は必至だ。
直ぐ側では明奈が奮戦していたが、多勢に無勢。形成は圧倒的に不利であった。
どうするべきか。
志津香は覚悟を決めると、深く息を吸い込んだ。瘴気が志津香の体内に吸収されてゆく。
得も言われぬ官能が体幹を突き抜ける。もう一人の自分がこの感覚にもっと身を任せましょうよ、と誘惑していた。
「…くっ、負けない!」
志津香は精神を集中し、グランドに向かうゴブリン達を視界に捉えた。
「アリュール!」
ゴブリン達の動きが静止し、次の瞬間には志津香に向かって目を血走らせて走り出した。
廊下は既にゴブリン達で溢れかえっていた。
志津香はマジシャンズステッキを銃剣モードへと切り替えた。ステッキの先に実体のない光るナイフが形成された。手近のゴブリンに突き刺し、右足で蹴り倒す。
いつのまにか、志津香と明奈は背中合わせとなっていた。右を見ても左を見てもゴブリンだらけだ。
「志津香さん、ぶぶ漬けはないんですか!」
「はあはあ? 明奈、もうひと暴れよ!」
志津香の視界の端に何かが蠢いた。窓の外に目を向けると、体育館横に黒いモヤが出現し、渦を巻き出した。黒い渦はすぐに大きさを増して、直径2mくらいの黒い球体として実体化した。黒い球体はその場に固定されているかのように宙に浮いていた。
「ゲートが……、実体化してる?」
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