VS 吸血種(3)
紗良が赤猫に爆裂ナックルをもらった次の日の夜、3人の姿は夜のせとうち青雲高校にあった。紗良がどうしても爆裂ナックルを試し打ちしたいと主張したためである。
今夜は、愛と花梨の共闘と、紗良のソロでの戦闘を試してみることになっていた。夜の校舎を愛と花梨が歩いてゆくと、果たして、職員室前の廊下の天井には、青白い顔をした吸血種が逆さまにぶら下がっていた。
吸血種の黒い目と、愛と花梨の2人の目が合った。
「クックックッ。
クックックッ」
吸血種は不気味に笑いながら挑戦者を待ち構えていた。
「強そうね。ボスの風格があるわ」
「じゃあ、花梨、打ち合わせどおりに」
「ええ、任せてちょうだい」
その言葉にうなずくと、愛が先行して吸血種へとゆっくり近づいていった。
右手のヨーヨーを眼前に構え、吸血種に対して半身になり全身の筋肉を緊張させながらも、吸血種のどんな動きにも対応できるように、神経を研ぎ澄まさせる。吸血種に一歩、二歩と近づいてゆき、爆裂ヨーヨーの射程距離に入ったとき、戦闘が始まった。
最初に動いたのは吸血種だ。一瞬前は静寂だった。次の瞬間、20匹以上のコウモリに分裂した吸血種が愛の小さな体を全方位から取り囲んだ。
ヨーヨーの射程距離の内側に入られての一斉包囲攻撃。愛にとって最も危険な攻撃ともいえた。絶体絶命の窮地に陥った愛は、しかし、落ち着いていた。
「浄化!」
愛が全身に貯めていた生命のエネルギーを全方向に放出した。花梨の目には愛が光り輝いたように見えた。浄化は攻撃魔法ではないが、魔物に少なからぬダメージを与えることができた。
全く予想外の反撃だったのであろう、コウモリ達は慌てふためいて、廊下の反対方向へと逃げ去っていった。
コウモリ達が逃げていった先の廊下には、紗良が右手に爆裂ナックルを装備して、会敵の時を待っていた。紗良は体にあふれる熱量を持て余すかのように、軽くフットワークを使いながら、左のジャブと右のストレートのコンビネーションを繰り返していた。
左、左、右
左、左、右
廊下の向こうから闇の塊のようにコウモリ達が押し寄せてきた。それでも紗良はシャドーをやめなかった。リズムを取りながら、コンビネーションをうち続け、コウモリ達が紗良とすれ違う直前、紗良が小さいモーションで右ストレートを連続して打ち込んだ。
ドゴン!
ドゴン!
ドゴン!
小ぶりのパンチに似合わない轟音が連続し、夜の校舎を震わせた。コウモリ達が慌てふためいたところに追い打ちをかけるように紗良の右パンチが襲いかかった。
ドゴン!
ドゴン!
ドゴン!
生き残りのコウモリ達は命からがら反転し、紗良から離れた位置で凝集すると、もとの吸血種の姿に戻った。
その顔からは不気味な笑いは消え失せ、驚愕に目を見開いていた。紗良のサプライズはまだ終わっていなかった。
「いっけぇー! 爆裂ナックル右ストレートォー!」
ドッゴーーン!!
爆裂ナックルの威力に、爆裂右ストレートを上乗せした紗良の最大火力の攻撃だ。大ダメージを受けた吸血種は再びコウモリに分裂すると、もと来た方向に逃げていった。
*****
ドッゴーーン!!
廊下の向こうから、もの凄いとしか形容できない音が聞こえてきた。
「紗良、今頃大喜びだろうなあ……。 あ、コウモリが戻って来たよ。花梨やる?」
「ええ、やるわ」
廊下の先から数を半分に減らしたコウモリ達が戻ってきた。コウモリ達の飛び方には余裕が一切感じられなかった。
「なんだか哀れね」
「最初に醸していたあのボス感はなんだったんやろうね」
廊下の右寄りに立ってヨーヨーを構えた愛を避けて、コウモリの群れが左に片寄ったタイミングを狙って花梨が跳躍した。
「いくわよ! スペシャルローリングドラゴン!!」
雷鳴の如き轟音が校舎を揺るがした。一瞬の刹那に5回の蹴り技を繰り出す花梨の大技であった。わずか1匹を残して、コウモリは全滅した。1匹だけ残ったコウモリがパタパタと弱々しく、愛の横を通り過ぎようとした。
「えい!」
愛が右手に持ったヨーヨーをコツンとぶつけると、最後のコウモリも黒いモヤとなって消えた。愛は空中の黒いモヤを丁寧にひとつづつ浄化した。
「さてと、、紗良に合流しますか」
と後ろを振り返ると、そこには左足を押さえてゴロゴロと転げ回る花梨の姿があった。
「痛い、痛い! また足やったぁ……。愛ちゃぁ〜ん、ヒールよ〜、ヒールかけて〜〜」
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