VS 吸血種(2)
その日の夜、愛、紗良、花梨の3人は私立せとうち青雲高校近くの路上に集合した。そこから3人は隠密のスキルを用いて校舎に向かって移動した。
途中、花梨が段差で転んだ。花梨は右膝を軽く擦りむいていた。
「大丈夫? 山路さん?」
「大丈夫よ。まだ力加減に慣れてなくて、たまに転ぶだけ。それと……花梨でいいわ」
「じゃあ、私も紗良って呼んで」
「私も花梨って呼んでいい? 私のこと、愛って呼んでね。ね、転んだところ、見せて。ヒール」
愛が手をかざすと、患部から皮膚の傷と赤みが消えていった。
「愛、凄い!」
紗良は腰のポーチからチョコウェーハーを取り出した。
「ヤットカット食べる〜?」
「頂くわ」
「ありがと〜。私、動物ビスケット持ってきた」
女子3人は和気あいあい、ピクニック気分で高校に向かったのであった。
*****
高校に到着した3人は、手始めに、未だにスケルトン種が出現する体育館付近へと向かった。お互いのスキルを確認するためである。体育館に着くと、果たして、そこにはスケルトンナイト1体、スケルトンソルジャー2体が待ち構えていた。
3人は愛を先頭に近づいていった。まずは、愛がスケルトンソルジャーを爆裂ヨーヨーで粉砕し、次いで紗良がスケルトンナイトの剣戟をフットワークでかわし、右ストレートを叩き込んで粉砕。最後に1体残ったスケルトンソルジャーには、花梨が左のハイキックを頭蓋骨に叩き込んだ。
ほんの僅かな間でスケルトン達を討伐することができた。
「「「イェーイ!」」」
3人は笑顔でハイタッチした。骨の小山となったスケルトンは、すぐに輪郭を失い、瘴気となった。愛は浄化魔法を使い、瘴気を消去していった。
「今のキック、スキル名ってあるの?」
「ええ。爆龍脚よ」
「へえ、かっこいい。紗良のパンチは爆裂右ストレートだよ。ね、紗良」
「爆裂左フックもあるよ」
3人はしばらく体育館付近でスケルトンを討伐し、お互いの動きを確認し、その後、満を持して、吸血種が出没する本館3階の廊下へと向かった。
*****
3人は作戦通り、愛と紗良、花梨の二手に分かれた。3階の東階段から愛と紗良が吸血種を追い込み、西階段で花梨が待ち伏せをする作戦であった。花梨の存在はまだ吸血種に知られていないはずなので、吸血種を不意打ちできるはずだった。
愛と紗良が3階の廊下を東から進んでゆくと、暗闇から滲み出すように吸血種が出現した。
<吸血種を確認しました>
貴族然とした、鼻の高い男性の吸血種だった。
「フフフフ」
吸血種は不敵に笑っていた。
二人は前衛が愛、後衛が紗良という鉄壁のフォーメーションで吸血種へと突進した。吸血種が魔力弾を打ち出すが、愛が右手に持ったヨーヨーですべて弾き返した。愛のヨーヨーの射程距離である1mまで近づいた。すぐさま愛はヨーヨーを投擲した。
これがゴブリンやスケルトンであれば粉砕!となるところだが、敏捷性の高い吸血種は後方上空へと逃れた。愛がかがみ込むと、その肩から、トン、と軽い音とともに紗良が宙に舞った。右肘を後ろに引いた溜めポーズから、紗良は必殺技を繰り出した。
「爆裂右ストレート!」
吸血種はかろうじて回避したが、少なからぬダメージを負ったようだった。西の階段へ向かって逃げ出した吸血種を愛と紗良は追いかけるが、手負いといえど、吸血種の飛行速度は早かった。
あっと言う間に廊下の端に到達した吸血種は、まだ遠くにいる愛と紗良を振り向くと、ニヤリと笑った。
花梨はその一瞬の静止を見逃さなかった。得意の跳躍力で空中を飛翔し一気に距離を詰めると、花梨は静止した的に向かって鞭のような蹶り技を放った。
「爆龍脚!」
吸血種の油断しきった顔面にモロに爆龍脚が炸裂した。吸血種は後方に吹き飛び天井にぶつかって、跳ね返り、床を転がった。
立ち上がろうとする吸血種の顔面に愛の爆裂ヨーヨーが直撃し、のけぞった姿勢のがら空きのボディに、紗良の爆裂右ストレートが綺麗に入った。
通常の魔物であれば、ここまでの波状攻撃を喰らえば既に瘴気と化しているダメージであったが、吸血種はまだ戦闘不能状態となってはいなかった。
腹部を右手で押さえながら、花梨を見て、ついで愛と紗良を見た。次の瞬間、吸血種は10匹以上のコウモリに分裂し、花梨の側から逃げ出そうとした。
花梨は迷うこと無く、もっとも近いコウモリの一群に向かって、スキルを放った。
「スペシャルローリングドラゴン!!」
まるで雷鳴が轟いたような音とともに、5匹のコウモリが雲散霧消した。一瞬の刹那に5回の蹴り技を繰り出す花梨最大の技であった。
残りのコウモリ達はあわてて逆方向へと逃げ出し、凝集し、ふたたびヴァンパイアの姿となった。が、そこは愛のヨーヨーの射程圏内。愛の手元から、白銀の輝きがほとばしり、爆裂ヨーヨーがヴァンパイヤの顔面にのめり込んだ。
「えんじょい♡」
「フフゲボン」
コールアンドレスポンスが決まった。ヴァンパイヤの頭部は爆散し、瘴気となって消えた。
「やった〜。ヴァンパイヤ討伐成功〜!」
「いやっほ〜い」
愛と紗良はハイタッチした。花梨の手がなかった。
「あれ、花梨は?」
花梨は廊下の床で右足を押さえて、ゴロゴロと右へ左へと転げ回っていた。
「ああ、足が〜、足が〜」
これ以降、彼女のステータスの称号欄には「自爆の花梨」と記載されることになるのであった。
【ステータス】
名前:山路 花梨
種族:人間
職業:蹴闘士
称号:自爆の花梨
レベル:5(↑+1)
体力:70 / 70(↑+10)
チャージ:70 / 70(↑+10)
力:25(↑+5)
俊敏:60(↑+10)
装備:なし
スキル:隠密、暗視
爆裂脚(中)
爆龍脚、使用チャージ10
ローリングドラゴン、使用チャージ15
スペシャルローリングドラゴン、使用チャージ30
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