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VS サキュバス(2)

本エピソードには、法令に反する行為(夜間の学校敷地への無断侵入等)への言及や描写が含まれますが、これらは物語上の演出であり、現実での実行を推奨・肯定するものではありません。

数日後の夜。


志津香は自室のベッドの上にいた。


少女らしい色合いや装飾に溢れた部屋の片隅、机の横の壁にかけてある小さなコルクボードには、色々な表情を見せる波方愛の写真が何枚も貼られていた。


外に出るとめったに帰ってこない赤猫が、その日は珍しく、ベッドの上で横座りをして、志津香を見ていた。


志津香は艶めかしく、体をくねらせた。これまでの志津香を知っているものが見たら、容貌の変化に気づいただろう。瞳孔がより大きく開き、赤みと膨らみを増した唇が官能的だった。


志津香は怒りと焦りのないまぜになった感情に苛まされていた。


体育館側の花壇の「何か」は既に狩り尽くしてしまった。志津香は赤猫のお腹に顔を埋めると大きく息を吸い込んだ。


(すう〜、はあ〜)


猫を吸った。2度、3度と繰り返して猫を吸った。


だが、志津香の胸の疼きは満たされなかった。


(はあ〜。どうして、どこにもいなくなっちゃったの?)


あの得も言われぬ感覚を味わうことができなくなってしまったのだ。


最後に「何か」を存分に堪能したのは、いつのことだろう。3日前のことだったろうか?もうはるか昔のように感じられた。


(あのエモい感覚を毎日でも感じたいのに)


あの「何か」がたまらなく恋しかった……。



*****



志津香は恋しい「何か」の微かな気配を辿って、真夜中に自宅を出た。まだ開いている飲食店があるので、今治銀座商店街のアーケードは避け、人気のない道を選んで歩く。


これまで自室でしか着たことのないゴシックロリータ調の黒いワンピースを着ていた。志津香の心が変容し始めていたが、本人は気付いていなかった。


真夜中の今治市には霧のような雨が降っていた。


傘をさしてあちらこちらとさまよい歩き、いつの間にか夜のせとうち青雲高校へとたどり着いていた。


校門は閉じられていた。志津香は敷地の周囲を周った。


何気なさを装ってしばらく歩いたあと、ひとしきり周囲を見渡した。誰もいなかった。


志津香は傘を手に持ったまま、足を少しかがめ、地を蹴り、夜の闇へと跳躍した。高さは2mを超えていただろう。


志津香はフェンスを軽く乗り超えると、音も立てずに構内に降り立った。


早く「何か」を見つけたいという衝動が志津香を駆り立て、突き動かし、変えていく。


いつの間にか雨はやみ、雲間から月明かりがこぼれていた。


志津香は傘を閉じて、しばらく構内を歩くと、だんだんと「何か」の気配が強くなっていった。


体育館側にまでやってくると、ゆらゆらと動く複数の人影があった。月光の下で、人影達は両手を上に上げて、それぞれに楽しげに踊っているようだった。


(この時間にいったい何の人だろう)


正常な感覚を失っていた志津香は、不審を感じることがなかった。


人影がひとり、志津香を手招きしていた。


果たして、近づいていった志津香が見たものは、人ではなく、古ぼけた踊る人骨の群れだった。


大人の人骨があれば、子供の人骨もあった。


月明かりに照らされて、それぞれにカタカタッ、カタカタッと踊りを踊っていた。


「ひっ」


志津香は小さな悲鳴を上げた。驚きのあまり、体を動かすことができなかった。何が起きているのか、全く理解ができなかった。


1体の人骨がカタカタときしみながら、志津香に手を差し伸べた。


「いやあっ」


思わず、志津香が傘で人骨を払い除けると、傘の先はちょうど頭蓋骨にあたった。頭蓋骨は顎の位置で上下に壊れて、地面に落ちてしまった。


人骨達は踊りを止めて、志津香を見た。


頭蓋骨を失った人骨はカラカラと崩れ落ち、骨の小山となり、骨の小山はすぐにその輪郭を失って黒いモヤとなった。


すううっ


黒いモヤが志津香の腹部に吸い込まれると、強烈な感覚が志津香の腹部から頭頂に突き抜けた。


(あああああああぁ)

(エモい〜〜!)

(これよ、このエモ感! 私が欲しかったのはこのエモ感よ!)


志津香は探し求めていた「何か」をついに探し当てたのだった。


「あなたたち、そこに並んで立ちなさい!」


志津香の爪の黒ずみが広がっていた。

ここまでお読み頂き、ありがとうございます!

今回のお話、少しでも「いいな」と思ってもらえてたら嬉しいです。


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次も頑張って書きます!

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