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VS ゴブリンキング(4)

(ゴブリンキング??)


愛は自分の致命的なミスを悟った。まだ奥の手を使うべきではなかったのだ。ゴブリンキングはうつ伏せの愛に向けて不気味な髑髏杖を突き出した。


「ᛞᛖᚾᚷᛖᚲᛃᚨ〜」


髑髏の目が赤く輝き、紫色の電撃が走った。


「きゃああああああ」


電撃をまともに食らった愛の体から煙が上がっていた。


「ゔぉゔぉ。ゔぉゔぉ。ゔぉゔぉ」


ゴブリンキングは満足気に頷いた。


ゆっくりと髑髏杖の頭部を撫で、ふたたび愛に向け杖を突き出すと、髑髏の目が光り電撃がほとばしった。


「いやあああああ」


愛が絶叫した。電撃が愛の体中を駆け巡り、二度三度と床の上で痙攣した。


ゴブリンキングは鷹揚に大きく頷き、さらに髑髏杖の頭を愛おしそうに撫でた。


紗良の指がピクリと動いた。


紗良のぼやけた視界に一匹の巨大なゴブリンと床に横たわった愛の姿が映った。倒れた愛をゴブリンが繰り返し足蹴にしていた。


状況は絶望的であった。


紗良は拳で床を殴り、横に倒れていたゴブリンを蹴った。既に虫の息だったゴブリンが息絶えた。


ポロロ〜ン、と間抜けな音が紗良の耳腔に鳴り響いた。このタイミングでのレベルアップであった。


 【ステータス】

 名前:宝来 紗良

 種族:人間

 職業:拳闘士

 称号:-

 レベル:6(↑+1)

 体力:11 / 80(↑+10)

 チャージ:10 / 80(↑+10)

 力:35(↑+5)

 俊敏:60(↑+10)

 装備:なし

 スキル:隠密、暗視

     爆裂拳(中)

      爆裂右ストレート、使用チャージ10

      爆裂左フック、使用チャージ10


「ゴブリン!」


ゴブリンキングが振り返ると、そこにはファイティングポーズをとった紗良がいた。親友を傷つけた魔物に対し、紗良の怒りは頂点に達していた。


だが、精神だけで立っている紗良の体がふらつく。まるで打たれるためだけに立ち上がったダウン寸前のボクサーだ。


ゴブリンキングは薄く笑い、髑髏杖を床に打ち付けた。


「ᛉᚢᚷᚱᚨᛏᚲᚨᛁ、ᚺᛁᚲᚨᛖᚱᛟᛚ」


髑髏の口が開き、謎の言葉を発した瞬間、紗良の体に強い力がかかり床にひざまずいてしまった。


「ゔぉゔぉ。ゔぉゔぉ。ゔぉゔぉ」


ゴブリンキングが満足げに嘲笑し、悠々と紗良に近づいた。


「くっ! これは?!」


動けないままでいる紗良にゴブリンキングが髑髏杖を突き出した。骸骨の目が赤く光った。


(電撃が来る!)


紗良が固く身構えた瞬間、横合いから学生服姿の人影がゴブリンキングに襲いかかった。


影は右腕で魔法を発動中の髑髏杖を払いのけると更に踏み込んで右のハイキックをゴブリンキングに放った。


ゴブリンキングの上半身がのけぞり、紗良の体を押さえつけていた力が消えた。


チャンスだった。


紗良は最後の力を振り絞って一気に距離をつめ、ゴブリンキングの顔面に怒りの鉄拳を放った。


「爆裂左フーッック!」


ドゴーーン


ゴブリンキングの頭部が文字通り消し飛んでいた。


ゴブリンキングの胴体は立ったまま、輪郭を失い、瘴気と化していった。


紗良はファイティングポーズを取って、暫く辺りを窺っていたが、そのうちに今度こそ何も起きないことを確信すると、両手を膝の上において、その格好のまま肩で息をしていた。


疲労と怪我で動くに動けなかったのだ。


動けるまでに回復した紗良は、すぐに学生服の人影を探したが、既に職員室から姿を消していた。


「……紗良?

 紗良がやったの?」


愛が気がついたようだった。


「紗良、これで……」


愛が何か言いかけたが、紗良が慌てて遮った。


「愛! まず自分をヒールして、余裕があったら、英語の先生、ヒールしてあげたら?」


紗良がきっちりとフラグをへし折ったのであった。



*****



赤毛の猫が校舎を走り回り、ゴブリンから発生した瘴気を消し飛ばしていたのと時を同じくして、人知れず、1匹のゴブリンが校舎をうろついていた。


肌の色は緑色であったが、犬歯が出ておらず、眼の黄色も薄く、一見すると人間の子供のように見えた。


最初のゴブリン、先行者であった。


先行者は胸に段ボール箱をかかえていた。瘴気に近づくと、瘴気は段ボール箱に吸収されていった。周囲の瘴気を全て吸収すると、先行者は音もなく去っていった。

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