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12ディオからの約束

お読みくださりありがとうございます!

 アルドに昔話を語っていたディオは突然喋るのをやめて、御者をしているシドを呼び、トリスとフランに緊張が走る。


「シド。多分、いると思う」

「そうか。トリス、安全確保」

「はい、兄さん」


 トリスは揺れる馬車の中で立ち上がると、素早く幕を降ろし、外から中が見えないようにすると、腰に右手を伸ばしじっとする。

 フランは大抵肌身離さず持っている肩がけカバンから取り出した小さな袋を手にした。


 ディオはアルドを引き寄せると身を低くさせて布を被せた。それはただの布にしては重かった。


 その直後、パンッとすぐそばに大きな音が響き、アルドが肩を跳ねさせた。


「怖いと思うけどこのままでいてね、アルド」


 いつもと変わらない調子のディオは緊張感を感じさせず、アルドは狼狽えることもなくディオの言葉に従う。


 何度か同じような音がなった後、馬車が止まった。


 すると、トリスは腰の短剣を抜き取ってすぐさま外に出た。

 フランはトリスが出て行った扉に向けて小さな袋をすぐに投げられるように構えた。


 刃物がぶつかり合う音がしばらく聞こえて、トリスが馬車に戻ってくるが積荷から何かを取るとすぐに出ていった。


 ややあってシドが麻袋を被せた薄着の野盗五人ほど馬車の空きスペースに運び、トリスが見張り役としてつく。


 フランがのほほんと彼らをみて今日はご馳走かなと呟き、野盗が着ていた服を漁って危険なものがないか確かめるとそれに何かを刺繍していた。


「もう大丈夫」


 ディオはそう言って再び走り出した馬車で、アルドに被せていた布を取って自分の隣に座らせた。


「驚かせちゃったよね。たまに狙われるんだ、うちみたいに小さいのは特に」


 フランが言った。アルドは黙ったままだ。


「比較的安全なルートは選んでるし、シドもトリスもそれなりに精鋭だから安心して」


 いざって時はオレも戦うし奥の手あるからとディオはガッツポーズをして、アルドにアルド用の水筒を渡すと、戦力にディオがなるのか疑いの目を向けてアルドは受け取った水筒に口をつけた。


 それから三十分ほど馬を走らせると、大きな村に着く。


 休みたい気持ちもあるがまずは野盗の受け渡しをしてからだと、野盗を駐在騎士に渡しに行く。

 野盗たちは賞金がかかっているわけではなかったが、それなりに被害が出ていたので僅かだが報奨金はもらえた。

 余談だが夕食は豪華にはならなかった。


 夕食は宿の食堂で済ませると、部屋に向かう。五人部屋はないようなので、ディオ、シド、フランの三人と、トリス、アルドの二人に分かれることになった。


 しばらくして椅子に座ったまま寝てしまったディオを起こさないようにベッドに運んだフランは、何かを言いたげにディオを見てからシドに声をかけた。


「シド。今日、あの時ディオ様は自分の身よりアルド君を守ろうとしてた」

「――そう、か」


 シドは諦めにも似たような声音でそれだけを言った。


 ディオからの信頼――そう言ってしまえば、それだけで済むのならいいのだが、ディオの立場上それは自分のことを軽く考えていることに他ならない。


「俺らは命令(やくそく)を守れそうもないな」

「全員で生き延びるためだって言っても、守れるかっていうと不安かな」


 シドに同意したフランは椅子に座って天井を見上げた。


 自分を庇って動けなくなる怪我をされたり死ぬくらいなら、自分のことは放置して自分の身を守れと、ディオは約束として昔からシドたちに誓わせている。


 けれどそれは、約束とは名ばかりの命令といったふうが正しい。もちろん、ディオもそれは分かっていてやっている。


「なんかさ、ディオ様と同じ状況にいたらって考えなくはないけど……平行線だね、きっと」

「否定はしないが」


 シドはノートを書く手を止めた。

 ディオの言葉は決して正しいわけでもないし、かといって本来聞き入れていいものでもない。

 ただ、いざその時に守れないような約束事ではある。


「そうならないように強くなるしかないんだよ。俺もトリスも、出来ればフラン(おまえ)も」

「そうだよね。もうちょっと味方を巻き込まない方法は模索しないとだね」

「そうしてくれ」


 頰をかいたフランはあははと笑う。改良はしてくれそうだがうまくいかなそうだ。


「護衛対象は二人ってことか」


 ディオがアルドを守るのだからそういうことになる。

 フランが自分を指差すがシドは冷たい。


「後衛としてならな。まずは見境なしの目くらましをやめてくれ」

「あれは代々受け継がれてるやつなんだけどなぁ」

「逃げ専門じゃないからな、接近戦だ」


 淡々と告げたシドは、寝息をたてグッスリと眠るディオを見てから再びノートにペンを走らせた。





幌馬車風の改造された馬車なので、それなりに強度のある馬車になってます。

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