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13トリスとアルド

お読みくださりありがとうございます!

 五人が一緒の部屋に泊まれる部屋はなかったので二つに分かれることになるとすぐに部屋割りは決まった。


 トリスより腕の立つシドと、ディオの健康管理を任させれてるフランを優先することになるので、必然的にトリスとアルドが同じに部屋になる。


 こういうことはディオたちと一緒にいるようになってから何度かあったのだが、ディオ(騒がしいの)がいないと途端に静かになる空間に今は、始めの頃とは違う気まずさがある。

 特にトリスとはそんなに話すこともなかったから余計に。


 始めは一人でいることの多かったアルドにとって誰かと一緒にいるというのは煩わしさのある居心地の悪いもので、ディオに対して何度怒鳴ったか分からない。


 今はディオたちとともにいることに居心地の悪さは感じていないが、互いに無言の空気は妙な気まずさがある。

 けれど、アルドはそれを打開できるような考えも技術ももっていないので時が過ぎるのを待った。


「気まずいですか」


 沈黙を破るようにトリスがそう言った。

 一緒にいるようになって数ヶ月、意外とアルドは顔に出やすいのをトリスは分かっている。


「そんなこと、は――ないけど」


 アルドの目は少し泳いでいて、トリスとは目が合わない。

 クスリとわずかに笑ったトリスは水をコップに注いでアルドの前に置くと、自分を分も用意してからアルドの対面に座った。


「私もです。なので、少しお話しませんか」

「別に、いいけど」


 ディオやフランほどは話ができるわけではありませんがとトリスは前置きをして、水を一口飲んだ。


「なにを話しましょうか」


 適当な話題が見つからず、トリスは視線を少しだけ彷徨わせる。

 トリスもあまり喋るようなタイプではないので、雑談といったことは苦手なようで会話の糸口になりそうものを探しているとアルドが躊躇いがちに口を開いた。


「トリスは怖くなかったの?」


 今日のこと、と付け足したアルドはどこにでもいる怯えた子供のようだ。


 感情を隠そうとしていない様子をみると、それなりにアルドが心を開いてくれているのだろうとトリスは思った。

 だからトリスは出来るだけ真摯にアルドの疑問に答えを返した。


「怖くないといえば嘘になりますが、守りたい人たちがいますから立ち向かえます」

「守りたい人?」


 不思議そうするアルドの言葉に頷いたトリスは柔らかく微笑んだ。


「はい。ディオ様やフランさん、今はアルドさんもです」

「おれも?」


 もう一度頷くトリスを見て、アルドは怪訝な顔をする。

 部外者である自分が、トリスの守りたい人の中に入っていることはおかしな話だとすらアルドは思うが、トリスからすればそうではないらしい。


「感情を抜きにして、少なくとも私は弱気を助け強気を挫くと教わってきました」

「おれの知ってる貴族とは随分違うんだね」

「それには王家の方々も苦労なさっているようです」


 全てを管理できるわけでもなく、見つけ次第あり方を正してはいくのだが、どうしても目の届かない場所は出てきてしまう。


 縁遠い存在に興味なさげなアルドはそれを聞き流す。それよりもアルドは知りたいと思うことがあった。


「貴族って全員戦えるわけ、威張り散らしてるだけじゃなくて」

「そういった家もあることも事実ですが、実践レベルとして戦えるかどうかでしたら、国境沿いの領地を持つ家くらいでしょうか」


 トリスは迷いながら言葉にして、もっとも女性がそういった物理的な力をもつのは貴族の令嬢だとあまり歓迎されていないと付け足す。


「家同士をつなぐ道具という考えもあるので綺麗な方が好まれますし、小さな傷あと一つで嫁ぎ先が決まらないという話もよくあります」

「そんなことで」


 アルドは呆れた声を出す。

 すり傷や切り傷、常に怪我だらけで周りの人間も同じような怪我だらけのそんな環境にずっといたアルドからすれば、バカバカしいと思える。

 傷あとなんて生き延びてきた証拠でしかないのだ。


「ですが、庶民より見た目も重要視される貴族では特にそうです」

「ふーん、価値観の違いか」

「そうですね。いい風潮とは言えませんが」


 アルドはざっくりとまとめて、トリスが同意をする。

 ディオたちと出会ってから知る貴族でも庶民でも自分の生きていた価値観との違いには驚くことばかりだ。


「ねえ、トリスもシドも貴族なんでしょ。結婚してないの?」


 トリスから話を聞いていて、ふと思ったアルドが尋ねる。

 ディオたちは全員成人はしているのは知っているし、貴族は結婚するのが早いと誰が言っていた。だからこその疑問だ。


「揃って予定はありませんね。両親や使用人からは小言を言われることはありますがそれだけです」


 言い切ったトリスの声はどこか苛立ちを含んでいたが、アルドがそれに突っ込むことはなかった。


 そして、アルドが一つあくびをしてトリスが窓の外を見る。

 歩く人の姿は見えない。


「ちょっと話し込みすぎましたね」


 小さく笑ったトリスは、アルドをベッドに誘導してから明日の準備を手早く済ませると、自身もベッドに入った。






トリスにとって結婚の話は少々地雷。

行き遅れとかが理由ではないんですけどね。

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