蒼天!紅の巨人と白銀のドラゴン!~力~
~前回までのあらすじ~
サハラ砂漠に潜んでいたギガント!
岩を操り形状を変えドレッドノートクライシスを苦しめたが
クリスタルの声により赤い光を纏い見事撃破する!
そして声の主はシラヌイに言葉を告げた!
「強くなれか…」
ドレッドノートクライシスのコックピットの中で俺はそう呟く。一週間前の戦闘の時に聞こえてきたクリスタルの言葉が脳内に強く残っていた。
(クリスタルの光を完全に使いこなせということか…?)
前の戦闘で俺はあの赤い光をその前の2回とは違い、自分の意思で出すことができた。しかしその光で放った技の威力は格段に落ちているように感じていた。
(これまではあの声の主が力を貸してくれていた?ということは俺自身の手であの力を完全に出し切れば、あの声の主も認めてくれて俺の話を聞いてくれるだろうか?)
俺はそういう結論に至った。手元のモニターを操作し、クリスタルを作動させ深く念じる。砂漠の時はクリスタルの力をとても近くに感じた。
(あの感覚をもう一度…ハァ、またダメか…)
何度もそう考えこうやって試みているが、やはり戦闘時の緊張感、高揚感がなければいけないのだろうか、その感覚を取り戻すことはなかった。俺はため息をついて少し休憩しようとコックピットから出てリフトに乗り下に降りた。すると下にはミナヅキが立っていた。
「あ、今行こうとしてたんだけど…どう?順調?」
「いや、全然ダメっすね。」
そう言いながらドッグを出て食堂に向かう。ミナヅキは俺の隣を歩き話を続けた。
「…私のお願いのこと焦らなくてもいいのよ。最近ずっとドッグにいるって聞いたんだけど。」
「別に焦ってるわけじゃ…ただ俺はあの力を使いこなして戦闘に役立てたいだけですよ。」
ミナヅキの父の死についてクリスタルの声に尋ねる、それが約束だった。
「攻撃に使われた赤い光やクリスタルの声…まだまだ謎が多いわね、クリスタルには。お父さんも地球防衛部隊もすべてを把握したってわけじゃないのよね。」
ミナヅキはそう困ったように言った。
「あの力をうまく操らないとギガントに勝てない…だから頑張らないと…」
「それに俺もあいつに聞きたいことあるんです。だからミナヅキさんのためだけに頑張ってるってわけじゃないんで気に病む必要はないですよ。」
俺がそう言うとミナヅキは沈んでいた表情をすこし明るくして微笑みながら言った。
「…そう、ありがとう。でも頑張りすぎて体調を崩したら元も子もないわよ。」
「そりゃあもう、操縦は俺しかできないんですから!」
俺も笑ってそう言った。
「はぁ~」
「うるさいわね!こっちまで気が滅入るでしょ!」
となりのイスズが紙パックの牛乳を飲みながら俺に怒る。結構大声だったが、放課後の学校の屋上なんて基本俺たち以外出入りなんてしない。
「なぁ、ほんとになんもなかったのか。」
「だから!何回も言うけど大きな感情の起伏以外に何も異常はなかったって言ってるでしょ、しつこいわね!」
俺はこれまでの戦闘でクリスタルの光を増幅させた瞬間の精神分析データの解析を部隊に頼んでいたがイスズからの報告によると何も異常はなかったという。
「第一、その声っていうのも本当に聞こえてたんだか疑問ね。昂りすぎて幻聴でも聞こえたんじゃない?」
ミナヅキとの約束については本人の要望で伏せておいたがクリスタルの声については部隊のほうに報告した。技術部の調査が進められたがまだ全然解明されないので今のところ幻聴と扱っている人も多かった。
「いや、それはない!確実にクリスタルだ!」
「あぁ~うるさいって!わかったわかった、信じるってば。」
そう言ってイスズは俺のことを適当にあしらう。俺はその反応を見てため息をつきながら仰向けに寝転ぶ。暗くなってきた空にうっすらと星が見える。イスズは屋上のフェンスにもたれかかって俺に聞いてきた。
「なんか他にないの?声について。」
そう聞かれ俺はあの声を思い出す。
「…そういえば、あの声聞いたことある気がする。あ、5年前父さんと母さんが死んだ日に聞こえてきた声と似ているような…」
それを聞いてイスズはうつむき呟くように言う。
「そっか、あんたもギガントに身内を殺されたんだっけ…」
「…イスズもそうなのか?」
俺はそう尋ねるとイスズは振り返りフェンスに手をかけ屋上からの景色を見ながら答えた。
「5年前に私の姉が死んだわ、避難中に瓦礫に潰されて…あの時はさ、ギガント反応を察知したりとかできなくて、避難指示も遅れてたからね…」
屋上の強い風に消え入りそうな小さな声でそう言う。
「私はそれからギガントを憎んだ、だから地球防衛部隊に入ったの。そんな人たち一杯いるわ、あそこには。ギガントを倒そうってギガントに復讐しようって、そういう人たちが。」
イスズはフェンスから両手を離しこっちを振り返る。
「でもね、シラヌイノボル!あなたはそんな人にならないでほしい!死んだ人に縛られて生きていくのは悲しすぎるからね。あなたには私怨じゃなくてみんなの平和のためにギガントと戦ってほしい。」
「イスズ…」
俺は両親が死んでギガントを憎んだ。力が欲しいと望んだ。そしてやっと手にした力、それがドレッドノートクライシスだった。これまで強く意識したことはないが、心のどこかで俺はドレッドノートを復讐の道具として使おうとしていたのかもしれない。
「あなたは未来のために戦って!そうしてあなたがギガントを倒してくれれば私たちはそれだけで嬉しいから!」
イスズは俺にニッと笑いながら言った。
「ああ、それも俺にしかできないことだな。」
それを見て俺も笑って答えた。ドレッドノートは復讐するための力じゃないんだ、人類の未来を切り開くための力なんだ。
「ありがとな、イスズ。」
そう礼を言うとイスズは頬を赤らめた。
「…思い返すと恥ずかしいこと言ったわね…」
そう言って二人で笑った。
「楽しそうですね~、ノ~ボ~ル~く~ん。」
そう声が聞こえて屋上の入り口を見た。
「カ、カケル!?なんでいるんだ!」
「今日は練習が早く終わったから屋上でちょっと寝て帰ろうかと思って来てみたら…」
「え、えーと…カワハラ君?こ、これはね…」
イスズが慌てて言い訳しようとするがカケルは聞いてない
「な~に楽しそうにハセガワさんと談笑してんだコノヤロウ!!!!!!」
怒りの右ストレートが俺の顔をしっかりととらえた。
そのあと何とか、俺とイスズでたまたま屋上で会っただけ、5分ぐらい話してただけとかそういう結構無理がある言い訳をしてカケルに俺たちのことはばれなかった。それから一週間ぐらいカケルが俺に冷たかったというのはまた別のお話だ。




