【03】 ハングリー精神こそが、私が生き残れたすべてです
爽香「今の時代、三日も四日もろくに食べてないなんて人、めったにいませんよね。お腹が減りすぎて万引きしそうになるとか、動けなくなるとか……私はそういう生活をしてきました。だから、他の研修生ほど訓練が辛いとは思わなかったんです」
松木「そうだったのか……」
爽香「ここでは、お腹いっぱいご飯が食べられるだけで幸せでした。最初の食事を見た時は、あまりにおいしそうで涙が出ましたもん。母は今頃どうしてるだろうって……だから、母にお腹いっぱい食べさせてあげたい。いつか家を建ててあげるのが私の夢です。このハングリー精神こそが、私が生き残れたすべてです」
松木「そうか。その話、もっと早く聞いておけばよかったな」
爽香「……」
松木「これからは、育ててくれたお母さんへの恩返しか」
爽香「はい、その通りです」
松木「毎回一生懸命走っていれば、いつか家だって建つさ」
爽香「本当ですか?」
松木「ああ。ただし、絶対に焦るなよ。そして慌てるな。『焦るな』の『あ』と、『慌てるな』の『あ』。このふたつの『あ』が大事なんだ」
爽香「『焦る』と『慌てる』って、同じような意味じゃないんですか?」
松木「『焦るな』は、すぐにA級になりたいとか早く大金を稼ぎたいと思うなということ。『慌てるな』は、レース中に何が起きても冷静でいろということだ」
爽香「分かりました」




