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47話 母親救出計画

「あなただけどうしてPと距離が近いのよ・・・」


「まだ根に持っておるんか・・・」

夜になると、桃子は寝室に移動し、就寝したのを確認した後、Rのアジトに潜入する作戦を練ろうと、コウジとケイコは居間にいた。

普段、食事が置かれているちゃぶ台の上には、潜入する上でのアジトの情報が記された書類と、ノートパソコンが置かれていた。


「私の命令は間違っていないはずよ・・・」


「じゃあ今度、桃子に直接聞いてみればええじゃろ・・・」


「そうね・・・そうするわ」

ケイコの問いかけにやや呆れた様子でそう促した。ケイコもその提案が一番早いと考えたようで素直に受け止めていた。


「さて・・・どんな作戦で行くかのぉ。何か考えでもあるかのぉ?」


「そうね、考えておいたけど・・・」

そう言いながら、ちゃぶ台の上に置かれた書類に指を差した。


「アジトは千葉県沖の漁港にある、使われていない倉庫のようね。逆探知情報とも一致したわ。そこにPの母親も監禁されてることも確認とれてるから、まず間違いないわ」


「随分と裏取りが早いのぉ・・・どうやって確認を取ったんじゃ?」

ケイコの仕事の速さに少々困惑していた。


「緊急だったからハリーに依頼したわ・・・急ぎじゃなかったら、本当は私で裏取りしたんだけど」


「あやつ・・・情報屋とはいえ、大分ワシ達に肩入れしてくれてるんじゃのぉ。裏家業の情報を裏家業へ売るのはルール違反なんじゃけどなぁ・・・」


「こっちの事情を説明して、必死にお願いしたら文句言いながらやってくれたわ」


「必死に・・・ハリーはケイコに弱いからのぉ。悪い意味で・・・」

そう言いながら、目の前にあるコーヒーカップを口に運んだ。


「・・・私は優しくお願いしたわよね?」


「・・・」

マイペースのハリーに優しくお願いしてこんなに早く仕事をするはずがない。ハリーがケイコに強く圧をかけて無茶な要求をし、それに頭を抱えている絵が容易に想像ができたが、その想像を言葉にせずに、そのまま口に含んだコーヒーと一緒に飲み込み本題に入った。


「潜入だけど・・・一応Rの依頼を遂行している体は作っておかないとマズいと思うから、私達のどちらかがPと帯同して、もう一方はRの依頼を遂行しているフリくらいは別の場所ですることを考えているけど、どうかしら?」


「それは初期の頃からそうする予定じゃったな。あやつは情報収集能力は高いからのぉ。どこで見張ってるかわからんし、それが安全じゃろうなぁ。漁港の倉庫に潜入するのならワシが行こう」


「ええ・・・屋内戦は私よりも、あなたの方が得意だし良いんじゃないかしら。これも初期に決めてた通りね」

そうケイコが言うと、別の書類をちゃぶ台の上に広げた。書類には倉庫の見取り図と数日前に依頼したハリーから買い取った情報が記載されていた。


「入り口は運搬車両が入るシャッターと、その倉庫の裏手にあるドアのみね。一応倉庫の中も屋根の天窓から撮影した写真があるけど・・・入り口は見通しが良いから、入ったら流石のあなたでもすぐに相手にバレるわよ」


「・・・じゃあその天窓から入るか?」


「その方がいいと思って、すでにガラスカッターと昇降ロープのメンテナンスはしてあるわ。明日、Pに昇降ロープの使い方もレクチャーしておくわ」


「ほぉ〜。手回しがいいのぉ〜」


「当然よこれくらい。ハリーから情報をもらってた時点で、想定しておいてたわよ」

そうケイコが言うと、手をつけていなかったコーヒーカップの中に、角砂糖を入れてかき混ぜていた。


「天窓から中を覗きながら、監視の入れ替わりなどでいなくなるタイミングを見計らって中に潜入する。天窓自体は大きいからガラスを割る・・・じゃなくて、切る場所を選んで中に入れば、コンテナや重機の後ろに隠れられるはずよ」


「・・・で?その後は?」

コウジはコーヒーを飲みながら、ケイコに計画内容の説明を仰いだ。


「倉庫の中には元は作業員が休憩するためのプレハブ小屋があって、そこにPの母親がいるからそのまま回収して脱出して。逃走用の車もハリーに依頼して準備させるわ」


「・・・了解。シンプルな内容じゃな」


「ええ・・・そうね」


「・・・心配なところあげるなら、相手があのRであることと、その相手をするのが初出勤の桃子と一緒なところじゃろうな」

そうコウジが言うと、ケイコはすぐに理解した様子を見せた。


「Rはワシの性格を知り尽くしておるはずじゃ。こんなやり方で暗殺を依頼して、素直にワシたちが依頼をこなすとは考えておらんはずじゃ」


「・・・つまり?」


「ワシ達がRのアジトへ乗り込むことを想定しておるはずじゃ。あやつは暗殺で企業から受け取れる報酬よりも、ワシを殺したいと思っておるはずじゃよ」

コウジは確信があるかのように、Rの意図を推理した。


「・・・相手は性格が相当捻くれてるわね。Pの母親を誘拐するような回りくどいことをしないで、殺し合いしましょうってあなたに直接言うんじゃダメなのかしら?」


「Rはお前さんと違って、プライドの塊なんじゃよ」


「・・・感情的になっているなんて。プロとして失格ね」


「・・・だからRよりも、ワシの方が周りから評価もされて報酬も多くもらっていた。それがあやつにとって面白くないんじゃよ」

深いため息をついた。心の底から面倒臭いという気持ちが出ていた。


「今更だけど・・・Pを帯同させるでいいのね?あの子はたしかに成長スピードが早いけど、まだメンタル面に問題があるわ。3ヶ月ってリミットだったからそれに合わせた計画で修行させてたのに・・・」


「あの子も一緒に行かせよう・・・今回のトラブルはあの子の問題でもあるんじゃ。ワシ達が勝手に片付けてしまってはあの子の今後の人生のためにもならんじゃろ。それにうちのルールを忘れてないじゃろ?」


「自分の問題は自分で解決する・・・分かってるわよそんなこと」

ケイコが承知の上であることを態度で示しながら、コーヒーカップを口へ運んだ。


「実行日だけど・・・3日後が雨の予報だから、その日にするわよ?」


「そうじゃな。その方が倉庫に入りやすい・・・ええぞ」

物音を出しても雨音で消してくれて、視界も雨雲で月が出ないため、視認性が悪いため潜入するにはうってつけの天候だった。


「持ち込む武器は多すぎるとそれはそれで問題になるから、銃とスモークグレネードとナイフ、後・・・Pの母親の意識を無くすためのクロロホルムも持たせるけど、問題ないかしら?」


「十分じゃ・・・ワシは証拠が最低限残らないよう、お手製の改造銃を持っていく。他の銃は現地調達するわい」

現地調達というのは、要は敵から奪い取ることを意味していた。


「わかったわ。あと、Pには何かあったらマズいから私の銃を持たせるわよ」


「ええぞ。それで・・・」

そう言うと、残り僅かのコーヒーを飲むように、カップを口に近づけた。


「P・・・いいわね?そう言うことだから、3日後の本番に向けて明日から調整に入るわよ」


「っ!!!」

そうケイコが言うと、廊下から小さな物音が聞こえ、ゆっくりと桃子が居間に入ってきた。


「・・・盗み聞きしてごめんなさい。今日の晩御飯の様子が変だったので、気になって眠れなくて・・・」


「フォッフォッフォ!いやー迂闊じゃったわい・・・うまく隠してたつもりじゃったのに桃子の方が一枚上手じゃったのぉ」

コウジが笑いながら自分のオデコにピシッと突っ込んでいた。コウジも廊下で桃子が盗み聞きしているのに、最初から気付いていた様子だった。


「P。勘違いしないでね。余計な心配をかけたくなかったから、この話し合いが終わってから伝える予定だったのよ」


「あ、いえ・・・それは全然大丈夫ですけど・・・ちょっと不安で・・・」

まだ盗み聞きしたとは言え、詳しい内容は聞こえてはいなかった。しかし、母親を助けるための内容であることはなんとなく理解はしていた。

元々敵のアジトへ潜入するのは以前から聞いてはいたが、いざ始まるとなると、緊張しているようで、桃子の表情には不安と戸惑いが出ていた。


「大丈夫じゃよ・・・今のお主は2ヶ月前とは違う。ワシ達の訓練は他の奴らの訓練の1年分くらいはあるんじゃ。もうちっと自信を持て」

楽天的に言いながら、コーヒーを飲んでいた。


「・・・そうよ。私がみっちりスキルを叩き込んだんだから出来ないわけないわ。今もそうだけど、気配を殺すのも上手くなってたわ。潜入で役に立つわよ」

ケイコは真顔で桃子の方を見ながら話していた。廊下で盗み聞きしていたことについて怒るどころか褒めていた。


「ただし・・・さっき私達が言ったように、Pは精神面にはまだ問題があるわ。だからそのあたりの改善をしていきましょう」


「桃子よ・・・とりあえず今から寝ろと言われても難しいと思うから、このまま作戦を改めて説明するわい。こっちに来なさい」

コウジのいつもの能天気な雰囲気と、ケイコのいつもの真剣で冷静な雰囲気を見て、不安だった心が少しずつ落ち着きを取りも出していた。


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