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40話 軍隊式ケイコ修行

「P・・・あなたもうバテたの?」


「はぁ・・・はぁ・・・ちょっと休憩を・・・」

ランニング20kmを走り終わった直後に腕立て、腹筋、背筋、スクワット各自1000回ずつこなそうとしていたが途中でバテてしまいケイコに詰められていた。この時、すでにお昼が過ぎようとしていた頃だった。


「休憩するのは構わないけど1分だけよ?この後は他の訓練のスケジュールがあるわ」


「1分だけですか・・・?」

20km走りきっただけでも疲れはピークになっていたため、ここから各筋トレ1000回ずつをこなすのはさすがにきつく、体が言うことを聞かなかった。


「P・・・これはあくまで準備運動なのよ?それに各筋トレはどんな形でも構わないからちゃんとやりきればそれでいいの。あなたは腕立て1000回と言われてぶっ続けで腕立て1000回やろうとしてるけど、そんなの最初からできるわけないでしょ?そう言うときは100回ずつ小分けにしてやったりするのよ」


「(100回って小分けになってるのかな・・・)」

ケイコの言葉をなんとか頑張って理解しようとした。


「P・・・良いかしら?任務でもそうだけど頭を使ってできないことをできる様にはどうしたら良いのかを一生懸命考えなさい。分かったわね?」


「は、はい・・・」

理解できたかどうか分からなかったが、自信なく返事をした。


「とりあえず、最初の1週間は特別サービスに午前中は半分の500回各自の筋トレをするだけで良いことにするわ」


「え⁈本当にいいんですか⁈」

急なケイコの特訓メニューの軽減に喜んだ。


「ええ。Pがついてこれない様じゃ特訓の意味もないし、私も鬼じゃないわ。その代わり残りのもう半分は就寝前の夜にやりなさい。良いわね?」


「(・・・喜んで損した)」

露骨にガッカリした表情を見せていた。


「どんな形でも継続をすることを心がけなさい。いいわね?」


「あぁ〜・・・わかりました・・・」

ケイコのストイックな特訓に、もはや泣き顔になっていた。


それから午後になり、昼食を取った後、畑の農具が置かれている倉庫に来るように言われた。


「これはなんですか・・・?」

倉庫の机の上には黒色の金属のパーツがいくつかあった。


「これは銃よ。バラバラに分解してある状態にしてあるわ」


「銃・・・!」

そうケイコに言われ、まじまじと見てみると、たしかに重厚感のある金属で、強い衝撃にも耐えられるような丈夫さを感じた。


「まずは、一つずつこのパーツを私が組み立てながら構造の説明をするから覚えておきなさい。自分の使う武器の構造を覚えることは、自分の戦闘力を上げることにも直結するわ。何か銃にトラブルにあった時も、構造を覚えておけばすぐに対応ができるから、これだけでも自分の生存力を上げることができるのよ」


「え?自分が使うって・・・も、もしかして私がこれを持つんですか?」

自分が銃を持つことを前提とした説明を受けていたようだったため、驚いていた。


「当然よ。あなたも敵地に乗り込むんでしょ?自分の身は自分で守る。一緒に行くあの人はあくまであなたの補助なんだから。ビビってないで銃の扱いくらい覚えなさい」


「(この人・・・日本では銃を持ってたら逮捕されるの知ってるのかな・・・)」

自分が逮捕されるリスクを考えると、正直この話を前向きに聞くことができなかった。


「銃刀法違反による逮捕にビビってるのなら余計な心配ね。私達がついてるわ。そんなヘマはしないし、させないわよ」


「うっ・・・」

何も言ってないのに、頭の中を読まれたようにケイコに釘を刺された。


「あとこれは大事なことだけど・・・相手は法律や道徳心のない犯罪者なのよ。そんな人間相手に法律だとか正義だとか、良い悪いの価値観なんて何も役に立たないわ。だからあなたは何も考えずに、手段を選ばずに任務を遂行しなさい。あなたの任務はなんだったかしら?」


「私の任務・・・お母さんを助けること・・・」


「そうよ。相手はあなたの母を誘拐するという犯罪を犯してるんだから、そんな相手に躊躇してたら大切なものを守ることはできないわ」

ケイコが冷たい視線で淡々と語っていた。過去に何かあったのかと思わせるような雰囲気に緊張し、「ゴクッ」と生唾を飲んでしまった。


その後、銃のパーツの解説をしながら慣れた手つきで、丁寧にゆっくりとパーツ同士を繋げていった。


「これは、マカロフと呼ばれる種類のもので、世界的に流通もされているもので、私が普段使っているものよ」


「は、はぁ・・・」


「これをあなたに渡しておくから、特訓でも常にこの銃を扱う形で進めていくわ」

そう言うと、パーツを組み立て終わったマカロフと弾丸を渡された。マカロフのグリップ部分には大きな傷が入っており、昔から使われているような年季を感じさせた。


「言わなくてもわかると思うけど、勝手に弾を撃ったらだめよ」


「はい・・・(言われなくても分かってるよ)」

親が子供に対して、当たり前のことを注意しているような風景だった。


「さて、銃の扱いとしていくつか戦闘訓練として覚えてもらうことがあるわ。1つ目は構え。2つ目は狙撃。3つ目はCQC。この3つが主に重要な体の動きになるからこの動きを午後は重点的に叩き込んでいくわよ。特にCQCは敵地に入る時には重要度が上がるわ」


「あの・・・話の途中ですいません・・・2つ目まではわかるんですけど、なんですか?CQCって・・・」

ゆっくりと片手を上げて、申し訳なさそうにケイコに質問をした。


「CQC・・・もしかしてまだ習ってなかったかしら?」


「初耳ですね・・・」


「そう・・・日本の大学ではこういうのは教えないのね・・・」


「(多分どの国の大学も教えないと思うけど)」

気まずい雰囲気の中、ケイコからCQCについての解説を受けた。


「CQCはClose Quarters Combatの略称で近接戦闘という意味になるわ。今回のように敵地に乗り込むとなると、室内での戦闘が予測されるわ。そうなると急な死角や背後から敵に襲われた際は、銃を構えながら接近戦を行わないといけないの。そうなった時に役に立つ格闘技として覚えておいて。接近戦での銃は強くないから」

「そ、そうなんですね・・・でも素手で戦うなんて私・・・勝てるんですかね?」

ビルで襲われた時の男の体格を思い出していた。とてもじゃないが小柄な自分に男に勝つイメージが湧かなかった。


「普通は無理ね。だからナイフを使ったCQCを覚えなさい。急所を狙えば問題ないわ」


「きゅ、急所って・・・」


「一番分かりやすいのは喉よ。次に胸。その次は二の腕、太ももといった大動脈を狙えば相手は失血死するわ・・・」


「失血死・・・」

ケイコの生々しい解説に顔が青ざめていた。ビルで襲われた時に見た、男達の流血が脳内に再生されていた。


「あなた・・・やらなければ自分がやられるのよ?」


「は、はい・・・そ、そうですよね・・・」

ケイコが呆れたように言うも、声が小さく身震いが止まらなくなっていった。


「ふぅー・・・これは精神修行も一緒に入れないとダメね・・・徐々に慣らしていきましょう」


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