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35話 自然への順応

初めて魚を獲ることが出来てから数週間ほど経過した。

その時の魚は、なんとか図鑑を見ながらナイフで捌き、調理をしたのだが、あまりに空腹だったため、大きな魚であるにもかかわらずにその日で半分も食べた。久しぶりのまともな食事に満足した桃子はその日以降も、もっと魚をうまく獲得できないかを考えた。その上でとある方法を思いついていた。


「これくらいの大きい木の枝ならちょうどいいかな・・・」

葉っぱが沢山ついた大きな木の枝を見つけるとその枝を折り、葉っぱのついている部分を石で半分せき止めた小川の反対側、せき止めていない部分に沈めた。それを繰り返すと葉っぱが川の濾過装置のような形になった。


「これで小さい魚は通過するけど、大きな魚は以前よりも獲れやすくなるはず・・・!」

事実として、魚の獲得できる確率が大幅に上がり何度か魚を採取することができるようになっていた。

すると、食料を探すことに余裕が生まれたおかげで様々なアイデアが生まれるようになっていた。


ある時は、

「あれ・・・この平べったい川の石・・・もしかしてフライパン代わりになるんじゃない・・・!」

毎回、魚を焼くときに土の中で埋めて焼く方法しか知らなかったため、その方法を取っていたが、石の上で魚を焼く方法を取れるようになっていた。


また、ある時は、

「おりゃーー!!」

ザパーンッ!

そう大きな声を上げると全裸になって滝壺に飛び込んでいた。


「あー!体も洗えてなかったから気持ちいーー!!」

ずっと体を洗うことを我慢していたが、食料を獲得することができた余裕からか、解放されたように滝壺の中ではしゃいでいた。山籠りがスタートしていた時から着ていたつなぎと下着もそのついでにと、川の水で洗っていた。着替えはなかったが誰も人がいないからという理由で、当初と比べると気にもならなくなっていた。


「誰もいないとはいえ、ずっと服が乾くまで全裸になってるのもマズいかな・・・」

そう言いながら、周りを見渡すと、木にツタが絡まっているのが見えた。


「これで下着でも作ってみようかな・・・」

そういうと川から上がり、ツタをナイフで切り、長めの葉っぱを結ぶようにしてツタにくくり付けた。


「うん思ったより悪くないわね・・・!胸も隠せるようなのも作っちゃお」

それを腰に巻きつけてみると、森に住んでいる民族が付けているような腰蓑を身につけた。服を焚き火で乾かすまではこれで問題ないと感じた。


「これ・・・もしかして拠点の壁作りにも応用できるかも!屋根しかまだ作ってなかったから次は壁を草で作ってみよう」

そう言うと拠点の壁作りの時間を作ることにし、問題なく横からの風や雨を防ぐ壁を作ることができた。


またある時は、

「あれ・・・?この葉っぱ今まで食べられないから採ってなかったけど、お茶にできるんだ・・・」

山菜図鑑を眺めているととあることに気づいたため、その葉っぱを採取し、水と一緒に空き缶に入れて焚き火で煮詰めてみると香ばしい良い匂いのしたお湯が完成した。


「え・・・何これおいしい・・・!」

今までに飲んだことがない味で多少の癖があったが、調味料のない生活をしていた中で、十分その味の癖がサバイバル生活を彩る上では良い効果があった。


またある時は、

「魚が獲れたのは良いけど一度に多くも獲れちゃったなぁ・・・保存する方法とかあれば良いけど・・・試しに焚き火で燻してみて燻製でも作ってみようかな・・・」

そう言うと焚き火に魚の切り身を吊るして燻製を作ってみることにした。


「うん・・・匂いはあまり良いとはいえないけど味は美味しいし・・・多く魚が取れた時はこれで保存食を作ろう!」


山の中でのサバイバル生活に慣れがではじめ、火起こしも今では30分以内にはできるようになり、最初の頃に生活をするだけで苦戦してた時とは違っていた。その余裕が生まれたおかげで、暇な時間ができるようになった。

そして、その暇を潰すためにやることを探しては、今のサバイバル生活をより便利に豊かにするためのアイデアが次々に生まれるようになっていたため、ツラい生活から徐々にではあるが、毎日発見のある楽しい生活になっていた。


「ふぅ・・・今日も魚獲れたけど、そろそろ飽きてきたし肉でも食べたいなぁ・・・ヘビとかいないかなぁ・・・」

おそらく2週間以上は経過したある日、いつも通り川から魚を拠点へ運搬している時の出来事だった。いつも歩いている道にある違和感があった。


「ん・・・?なんか変な臭いがする・・・」

動物園で嗅ぐような獣臭が辺りを覆っていた。何か他の生物が近くにいるのを感じた。そして、その匂いは拠点に近づけば近づくほど強くなっていた。ゆっくりと拠点の方へ歩いて行くと大きな影が動いているのが見えた。


「あれは・・・クマ・・・⁉︎」

桃子が草を編んで作った拠点が薙ぎ倒されており、クマが保存用で作った魚の燻製に噛み付いていた。


「何mあるの・・・1m?それ以上ある・・・?!」

遠目で見ていたため大きさはわからないが、それでも迫力が十分にあった。実際に対面したら命が危ないと直感もした。


「このまま去るのを待ってよう・・・」

そう思ったその時、食事を終えたクマがそのまま反対方向へのそのそと、ゆっくり歩いていった。


「行っちゃった・・・」

クマが去ったため拠点へ近づくと、3つほど作った魚の燻製がバラバラに食い散らかされていた。薙ぎ倒された拠点付近は、遠目で見ていた時とは比べ物にならないほどの獣臭がしていた。


「とにかくもうこの辺りに住むのは危ないわね・・・またクマが来る可能性があるし・・・」

そう言うと、拠点の中に置いてあった火起こし用の枝をリュックにしまうと、別の場所を拠点にするため、クマが進んだ道とは逆方向に山の中を歩いて行った。食料問題を考えると小川から離れることはできないと考え、今の場所から歩いて30分ほどの場所に再び、草木とツタを使った拠点を作成することにした。


「どちらにしてもクマがまた出てくることを考えて、何か対策を考えておいた方がいいかも・・・」

そう言うと、サバイバル生活の合間に図鑑を見て、何かクマの良い対処法がないか調べる習慣が出来ていた。


「ふぅ・・・今日は初めて別の拠点で夜を過ごすけど・・・」

辺りは暗闇に包まれており、虫と動物の鳴き声がいつものように聞こえるのだが、クマを見てしまった今日は、その動物の鳴き声に恐怖をうっすらと感じていた。


「寝ている間にでも襲われたらたまったもんじゃないわ・・・」

念の為、クマが近づいてきたことが分かるように、拠点の周りに木の枝をツタで吊るした鳴子(近づいたら音が出るトラップ)を設置していたが、それでクマを退治できるものではないので、不安を抱えたまま夜を過ごすことになった。


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