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34話 もがき苦しむサバイバル生活

ギャーギャー!


激しい生き物の鳴き声が辺りに響いていた。その声を聞いて、目をゆっくりと開けると朝日が差し込んでいた。


「いつの間に朝になったの・・・」

昨日、起床した時は激しい筋肉痛に襲われていたため気付いていなかったが、体全身が虫に刺されており、かゆみもあったがそれ以上に空腹感の方が気になっていた。


「お腹が減り過ぎて死んじゃうわ・・・」

空腹による危機感を感じながら、力が出ない中でなんとか体を小川の方向へと向かわせた。山菜や木の実よりも、肉や魚が食べたい気持ちが強かった。


ほどなくして歩くと小川のせせらぎの音が聞こえてきた。


「フラフラする・・・」

空腹感を強く感じながら小川まで辿り着くと、川を見ながら滝壺の方面へと歩いていった。すると、昨日見た時よりも魚影が多く確認できた。


「こ、こんなに魚がいる・・・!」

そう言うと、近くに落ちていた木の棒を拾い、着ていたつなぎを脱いで川の中へ入っていった。気温が高かったため、体を動かし続けて汗をかいていた身にとっては、小川の水温が気持ちよく感じていたが、その気持ちよさを感じていられるほど精神的に余裕を持つことができなかった。


バシャンッ!バシャンッ!


「はぁ・・・はぁ・・・」

木の棒を川へ差し込むように投げ入れていたが、魚に当たることはなかった。魚を食べたい一心で続けていたが、徐々に体力が無くなっていき、疲労感に耐えられなくなっていた。


「だ、だめ・・・このやり方じゃ全然獲れない・・・」

川から戻り、どうやって魚を捕獲するかを考えながら、川辺に置いたリュックを持ち上げた時、リュックの重さで中に図鑑を入れてあったことを思い出した。


「そうだ・・・罠が書いてある図鑑があった!」

そう言うと、図鑑をリュックから取り出し、ページをめくっていった。


「・・・魚を捕獲する罠、いくつかあるみたいね・・・」

罠を仕掛けて魚を獲得する方法が記載されていたが、時間が掛かるやり方ばかりだったため、他に時間のかからないやり方で捕まえる方法がないかを探していた。


「・・・釣り竿を作るか、さっきみたいに木の棒を槍のようにして獲る方法しかなさそうね」

だが、釣り竿は糸も針もなかったため作ることができないと判断し、先ほどのように木の棒を使って魚を突く方法を選んだ。


「でもどうしよう・・・同じようにやっても絶対に捕まえられないわ」

そう思い、ボーッと辺りを見渡していいアイデアがないか考えていた。

その時、たまたま下流の小川を見つめていると、あるアイデアを思いついた。


「・・・この方法ならどうだろう」

そう言うと、滝壺から小川の方へ移動し、川幅を見渡していた。滝壺付近に比べると川幅も底も浅かった。


「この辺りで、ここよりも更に川幅が小さくて、底が浅い箇所はないかしら・・・」

そう言いながら、更に下流の方面へと歩いていき、15分ほど歩いたところで、今まで見たところの中でも、川幅が狭く、川底も浅い箇所を発見した。


「・・・この辺りでやってみよう」

そう言うと、大きい石を運んでは、川の中に壁を作るように沈めていった。


「川の流れを石でせき止めることができれば、魚も捕まえれるかもしれない・・・」

そう思いながら、重たい石を運搬していた。体力がない中であったが他に方法もない。ただ、じっと拠点にいるのも辛いと考えていたため、一縷の望みを賭けて、疲弊した体に鞭を打った。


それから何時間経過したか分からないが、山全体が夕日で赤くなり始めた辺りでようやく小川の半分ほど石でせき止めることができた。小川で幅も深さも無いとはいえ、半分もせき止めるのに大変な作業だった。


「もう今日はこれ以上できないわ・・・喉も乾いたし川の水を直接飲んじゃおう・・・」

そう言うと、顔を洗うように川に突っ込み、直接川の水を飲んだ。本当は火で沸騰させてから飲みたいが、昨日以上に体力を使った今の自分に、今から火を作ることができる自信がなかった。それに昨日も川の水を直接飲んだこともあり、あまり抵抗がなかった。


「水がうまい・・・こんなに水が美味しく感じるなんて・・・」

重労働の後かつ、空腹状態だったため、昨日以上に水を大量に飲んだ後に拠点に移動した。


「今日も木の実だけ・・・」

拠点で横になりながら真っ暗な山の中を見つめていた。虫と動物の騒がしい鳴き声も今は気にならなくなっていた。明日魚を獲ることができなかったらと不安に考えていたが、疲労によりそのまま目を閉じ深い眠りに入った。



「うぅ・・・お腹が痛い・・・」

そう言いながら目を開けると、朝日がまだ昇っていなく、辺りがうっすら青みがかっていた。おそらく川の水を沸騰させずに大量に飲んでしまったため、腹痛を起こしていた。


「うっ!おえぇえー〜・・・!」

腹痛と一緒に、急な吐き気にも襲われ、瞬間的にそのまま嘔吐をしてしまっていた。息も絶え絶えになりながら、なんとか吐き気が落ち着くまで耐えていた。


「はぁ、はぁ・・・もう少し横になってたいけど・・・川も気になるし・・・」

そう言うと、まだ多少の腹痛と吐き気が残っている中で、すぐに川へ向かい、石を沈めた地点の確認をした。


「どうしよう、また昨日のように石を積み上げるか、このまま魚を捕まえてみるか・・・」

小川の半分が石でせき止めていたため、さらにもう半分を石でせき止めようか悩んでいたが、川幅を考えてもこのまま川の中に入り魚を捕まえることは十分出来そうと判断し、このまま捕まえてみることにした。


「・・・」

川の中に入るとせき止めていない部分で、ジッと槍代わりに木の棒を構え、魚が通るのを待っていた。


バシャバシャ!


昨日と同じくらい魚が川を通っていたが、うまく魚に当てることができずにいた。


「小さい魚は当てるのは難しそう・・・せめて大きい魚は絶対に仕留めないと・・・」

そう言いながら、ジッと川を見つめながら魚影が通るのを待っていたその時、奥から大きな魚の影が向かってくるのが見えた。


「一番大きい!絶対に逃せない・・・!」

この時、魚を捕まえるのに半日ほど時間が経過しており、緊張しながら木の棒をいつでも突くことができるように構えていた。


「・・・」

徐々に大きな魚影が近づいてきており、目の前に来たその時に思い切り木の棒で突いた。


バシャッ!


「っ!当たってない・・・!」

川底は泥が舞っていて見えなかったが、明らかに魚に木の棒が当たっていない感覚だった。泥から魚影が飛び出し、桃子の股下を通過しようとした時、


「ダメーーー!!」

そう言うと、体を川に沈め、魚を逃さないとガムシャラになりながら股下を塞ぐように両手を広げていた。

魚は両手に辺り大きく川の中でもがいていた。大きい魚だけあり、力が強かったが、逆にその大きい力を利用して陸に魚をあげるようにして両手で水面を掻き出すようにした。すると魚は飛び跳ねるように川辺に打ちつけられた。


ビチビチッ!

魚は陸の上で跳ね回っていた。大きさは50cmくらいか、それ以上の大きさに感じた。


「すごい・・・こんな大きな魚・・・自力で獲っちゃった・・・」

川からよろよろと這い上がりながら、陸に打ち付けられた魚に近づいていった。


「やった・・・やった・・・やったーー!やっと食べられる・・・!!!」

魚を持ち上げると、ずっしりとした重量を感じ、魚を獲得できた喜びがさらに湧き上がっていた。


「よしよしよし・・・!!!」

自分の子供を抱えるかのように、大事に魚を持ち上げると、拠点へそのまま向かっていった。日はまだ上がっていたが、魚獲りに時間を大きくかけていたたため、あと少しで夕方になるのではと思っていた。その時にあることに気付き、歩みが止まった。


「あ・・・火を付けないと魚。食べられないじゃない・・・!」

あまりに空腹ではあったが、さすがに魚をそのまま生で食べるわけにはいかないと、胸で魚を抱えていたため、魚特有の生臭さを感じながらそう思っていた。


「まだ外は明るいから・・・夕方になるまでには絶対に火をつける・・・!」

そう意気込み、前回火を作るのに使用した枝を持ち再び火付けに挑戦した。


「火が出来るイメージは出来ている・・・焦らずにじっくり同じリズムでやっていこう・・・」

目の前に大きな魚があるため、早く食べたいという気持ちで焦りが生まれる中、自分の心を落ち着くよう、もう1人の自分に言い聞かせながら、黙々と木の枝を木の板に擦り付けていた。


「1時間は経過したかな・・・」

そう呟きながらふと辺りを見回すと、夕焼けで辺りが赤くなっていることに気づいたが、いまだに煙は出ていなかった。


「だ、だめ・・・今日は絶対に火を作らないと・・・!」

少しずつ手に入る力が強くなっていった。焦っていることは自分にも分かっていたが、あともう少しで魚が食べられると思うと、その焦りを止めることができなかった。


「痛っ・・・!」

手の平には前回火付けをしようとした時、出来たマメが潰れて血が出ていたが、前回のようにその痛みを理由に止めることはなく、黙々と同じ動きを続けていた。


「絶対に止めない・・絶対に火をつける・・・」

強い意志を自分の中で持ち始めたその時、余計な雑念が頭の中から消え、力みもなく、なり同じテンポで枝を擦り続けた。すると、目を凝らさないと見えないほどの小さな煙が、うっすらと手元で登っていた。


「き、来た・・・!来た来た来た・・・!」

小声で喜びながらも、先ほどと同じように同じテンポで枝を擦り続けると、小さな煙が徐々に大きくなり、煙が大きな灰色の塊のようになっていた。


「ヨシヨシッ・・・!」

手元を見ると、小さなオレンジ色の火花のようなものがあり、それはちょっとしたことですぐに消えてしまいそうな頼りない火の種だった。その火種を消さないように慎重に慎重に移動させるよう、事前に乾燥して粉々にしてあった枯葉の中に落とし、優しく息を吹きかけた。


「フゥー・・・フゥー・・・」

決して吹きかけた息により、火が消えないよう慎重に息を吹きながら酸素を送っていた。ほとんど吐息のようになっていたが、絶対に焦って息が強すぎないように心掛けていた。すると小さなオレンジ色の火種は徐々に大きくなり、そこから急に火が5倍ほど大きく立ち昇った。それは前回、コウジが作った焚き火と同じようなものが出来ていた。


パチパチパチッ


木を燃やす際に出る、特有の渇いた音を鳴らしながら、暖かい火が燃え盛っていた。


「やった・・・やった・・・やったぁーーー!!!」

大きな声が自然と出ていたその時、すでに辺りは真っ暗になっていた。


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