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25話 殺し屋「R」

「クックック・・・俺のことをRと呼んでいるのは、今やもうお前くらいだよ。俺にとっては嫌な名前だが、今となっては懐かしいよ。現場に部下がいるからと、盗聴器を聞いてなかったのだが、あやうく騙されるところだった」


「・・・お前がリーダーやっとるんか?これは・・・」

すでに正体がバレてしまったため、観念して声真似をやめたようだった。口調からしてトランシーバーの先にいる人物は顔見しりのようだった。


「いや、ちょうど昨日くらいに乗っ取っただけだ・・・日本でも仕事がしたいと思って、手始めに乗っ取りやすそうなチンピラ集団の組織をと思ってたんだが・・・その組織が面白いターゲットを相手にしてると聞いてな」


「・・・チッ」

コウジがバツの悪そうな表情を見せながら舌打ちをしていた。いつもひょうきんなコウジがこのような表情を見せるのは初めてだった。


「なぁ・・・ワシとお前の仲じゃないか。桃子のお母さんは解放してやっておくれ」

コウジは困った表情をしながらトランシーバー先の相手にお願いをしていた。


「もちろん開放するさ・・・黙ってこちらの依頼を完了してくれればな」


「だったら・・・尚更桃子の母は関係ない。ワシが今まで依頼に失敗したことなんてないし、それに人質がいたとしてもワシには関係ないのもお前が一番よく知っておるじゃろ?」


「本当に関係ないのなら・・・人質を持っていようが持ってなかろうがお前には関係のない話だ。本当に関係のないならな・・・」


「(まさかこやつ・・・気づいておるのか・・・?)」

コウジの顔に冷や汗が流れていた。


「ファースト・・・お前のせいでこの業界での俺への評価は地に落ちた。こんなことで許されるとは思わないことだな。これからは俺の手足となってこれからも仕事をしてもらう」


「・・・お主も根に持つ男じゃのぉ」


「ふん・・・この世界では評判とメンツが全てなのは知っているだろう。とにかく俺に逆らうな」


「分かった分かった・・・で、以前ワシに送った手紙の依頼をこなせばええんじゃろ?」


「そうだ。1ヶ月後までに依頼をこなせ」


「っ!」

コウジが相手の話を聞いて体が硬直した。


「・・・悪い冗談じゃのぉ。どこの世界に1ヶ月でやれと言う依頼主がおるんじゃ。最低でも6ヶ月はないと流石のワシでもムリじゃよ」


「何を言ってるんだ?世界的に有名な殺し屋だからこそ1ヶ月でも出来ると見込んでお願いしてるんだ」


「まだ情報収集も作戦も立てておらんのにムリじゃよ・・・せめて3ヶ月じゃ・・・」


「クックックッ・・・随分と弱気なんだな。まあいい・・・今回はサービスで3ヶ月にしておいてやる。こちらが優しい依頼主で良かったな・・・」

桃子からはトランシーバーの相手の声が聞こえてはいなかったが、明らかに無理な注文をしているように見えていた。


「ではまたこちらから連絡をする。それまで頑張ってくれたまえ。ファースト・・・ブチッ」

トランシーバーの切断が切れると、コウジは黙りながら家に設置してある固定電話へ向うと、固定電話と繋がっているコンセントを抜いた。


「よし、もう話してええじゃろ・・・盗聴器のことは心配せんでええぞ」


「え?まだ盗聴器あるんじゃないの・・・?」

桃子は不安そうにコウジに聞いた。


「盗聴器は固定電話の中に仕込まれておる。お母さんに固定電話をかけて家に帰ったら男達がいたんじゃろ?ならまず間違いない」


「で、でも・・・それだったら外さないとこの会話も聞こえるんじゃ・・・」


「盗聴器はバッテリー型ではなく電源供給型がほとんどじゃ。バッテリー型は電池の交換を毎回しないといけないから盗聴器には不向きじゃからの。だから電源元を切れば動かないからコンセントを抜けば問題ないぞ」

コウジの説明を聞いて、なぜコウジ達に実家に電話をするなと言われたのかその理由が理解した。実家が盗聴されている可能性があったからだった。


「じゃ、じゃあ私が実家に電話をかけてなかったらお母さんが巻き込まれずに済んだってこと・・・?」


「・・・」

コウジが困った表情を浮かべながら黙っていたが、その反応が桃子にはその通りという回答と取れた。


「全く、勝手に相談もせずに動きおって・・・相談してくれればちゃんと説明してやったと言うのに・・・」


「そ、そうだ!ど、どうしてここにいるのが分かったの!!」

コウジの苦言に反応する前になぜここに自分がいるのを知っているのか、桃子は不思議でしょうがない様子だった。


「発信機を服に付けてたんじゃよ。ただ・・・逐一監視もしておらんからまさかこんな早く行動するとは思っておらんかったわい。以外に桃子は行動力があるんじゃなぁ・・・」

コウジはそう答えながら、桃子の行動力に対して感心した様子でもあった。


「うぅ・・・うわぁーーーーーっ!!!」

桃子は目には涙を滲ませて呻き声を上げながらコウジに抱きついた。遅れてきたかのようにコウジが助けに来てくれたことによる安心感と、自分のせいで母が誘拐されたことによる無力感が湧き上がっていた。


「ふぅ・・・とにかく桃子だけでも間に合って良かった。ほれケイコが車の中で待っておるし帰るぞ・・・」

コウジが桃子を抱きしめながら、肩を貸して玄関へ向かった。


「これからが大変じゃぞぉ・・・」

今後の計画を頭の中で考えながらコウジは独り言を呟いた。


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