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20話 母との電話

いつもこの商店街までの道を歩くと30分はかかるのだが、早歩きで向かったせいか、15分前後で到着した。周りをキョロキョロと見渡したが、コウジもケイコもいなかった。


「・・・まっすぐ帰ってこいって言われてるし、遅くなると怪しまれちゃう。早く電話かけないと」

そう言うと、電話BOXの中に入り、買い出し用の小銭を投入口に入れ、自宅の固定電話の番号を押した。


プルルルップルルルップルルルッ


コール音が耳元で響いた。3回、4回、5回となったが電話に出ない。


「せっかく抜け出して電話かけたのに・・・お願い電話に出て・・・!」


「・・・ガチャッ もしもし、荒波ですけど・・・」

電話口の先で誰かが出てくれた。


「も、もしもしお母さん⁈私よ、桃子よ!」


「・・・桃子?桃子なの⁉」


「そうよ桃子よ!お母さん大丈夫?変なことになってない?!」


「大丈夫はこっちのセリフよ!今までどこに行ってたのよ!またフラフラ外をほっつき歩いてたんでしょ!?もう良い歳なんだから良い加減に夜遊びも程々にしなさい!それに公衆電話って表示されてるけど、まさかケータイ無くしたの⁉」

電話口の先からダムが決壊したかのように怒声と質問が聞こえたが、母の言葉を聞いて「ああ、いつものだ」と思いながらも、この怒声は心配の裏返しなのは桃子にも分かっていた。


「ご、ごめんなさい・・・ちょっと面倒なことになっちゃって」


「面倒って何⁈まさか何か犯罪に巻き込まれたなんて言わないでしょうね⁈」


「そ、そんなことないよ・・・!」


「じゃあ一体何があったのよ⁈」


「うっ・・・」

言葉が詰まった。事情の知らない母にここまでの経緯をどのようにして説明をしたら良いのか分からなかった。


「・・・そ、その」


「心配だったのよ・・・せっかく夜遊びもやめて真面目に就職したと思ったらこれなんだから・・・」


「ご、ごめんなさい・・・」


「もう・・・とにかく家に帰ってきなさい!じゃないとお母さん承知しないからね!」


「う、うん・・・」


ガチャッ

そう電話越しからの言葉を聞いた後、こちらから急ぐように電話を切った。


「はぁ・・・はぁ・・・」

体力をかなり取られたが、なんとか母と電話をすることができた。


「ど、どうしよう・・・帰って来いと言われたけど」

迷う時間はなかった。時間の都合的にもそろそろ買い出しをして家に戻らないと勘の鋭いケイコに怪しまれるだろう。

すぐにこのまま自宅に帰るか、コウジとケイコの待つ家に帰るか決めなければいけなかった。


「お母さん心配してたな・・・」

久しぶりに母の声を聞いて現実に戻されたような感覚だった。

先ほど母から何があったのかを質問をされたが、馬鹿正直に話すとなると仕事で殺し屋に依頼を頼もうとしたら巻き込まれて殺されそうになったところ、その依頼しようとした殺し屋夫妻に助けられて匿ってもらっているという説明になる。


こんなこと絶対に話せないし、信じてもらえないのは当然だった。


「・・・」

桃子はじっと考え込んでいた。そもそもこの数日にあったことは現実だったのだろうか。

母にこの数日の出来事を話したとしても信じてもらえないだろうし、そもそも自分自身も、その出来事が本当にあったことなのか疑わしく感じ始めていた。


「あの日・・・何があったっけ・・・」

改めてBarでコウジと出会った日の出来事を思い出そうとした。


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