16話 コードネーム「P」
「まぁそう言うことじゃから・・・これからは一生命を狙われることをまずは理解するんじゃ。その上でケータイは没収しておいたからのぉ」
「あ、そういえば・・・!?」
先ほど買い物に行ってた時に、ケータイが手元にないことに気づいていたが、どうやらコウジが預かっていたようだった。
「ケータイはGPSや逆探知でバレる可能性があるからダメ。実家とかにも連絡しないこと、親の命も狙われる可能性があるわよ」
ケイコがキッチンから皿洗いをしながら答えた。
「そ、そうよ!家にお母さんがいるの!連絡をさせてください!それに会社にも連絡しないと!」
ケイコの言葉で思い出したかのように桃子が大きな声を出していた。こんなところで呑気にご飯を食べている場合じゃないと思い、慌てた表情をしていた。
「さっきケイコが言った通りじゃ。親への連絡は危険に巻き込まれるかもしれんからダメじゃ。会社の連絡はせんでええじゃろ。殺しの依頼を桃子に任せた会社なんて、見殺しにすること前提だったんじゃからのぉ」
「そうね、会社への連絡は逆に生きてるアピールを下手にしてしまうからやめるべきね」
そう話しているといつの間にか昼食の片付けを終えて、ちゃぶ台の上にケイコが湯呑みに入れた緑茶を3つ置いた。ケイコからとりあえず、これを飲んで落ち着けと言ってるように見えた。
「そ、そんな・・・でも母のことが心配で・・・」
俯くように声を小さくしながら電話をさせてくれないか頼み込んでいた。お茶を飲むような余裕もなさそうだった。
「分かった分かった・・・ワシ達が様子を見てくるからそれで許しておくれのぉ」
コウジがやや面倒くさそうに代案を伝えた。
「とりあえず、あなたはしばらく家事炊事を手伝いなさい。今日私がしたみたいにすること」
ケイコがお茶を飲みながら表情を変えずに伝えた。
「あと・・・あなたのこれからのコードネームはPと呼ぶわ」
「P・・・ってなんですか?コードネーム⁇」
唐突にケイコからそう言われたため聞き返した。
「今あなたは命を狙われているんだから本名を呼ぶ訳にはいかないわ。これは依頼されていないとはいえ任務とさほど変わらないの。任務をする時はコードネームを上司から与えられるわ。だからあなたの名称はこれからはPよ」
「こ、これからの私の名前がPって意味ですか・・・?」
「その通りよ。飲み込みが早くて助かるわ」
本心なのか嫌味なのかよくわからない感想を無表情でケイコは言った。
「あ、あの・・・なんでPなんですか?」
「あら、他のコードネームがいいの?」
「い、いえ・・・ただなんでPって名前になったんだろうと思いまして・・・」
桃子はケイコが昨日の車内のような仕事モードに入っている雰囲気を察していたため、恐る恐る質問をしていた。
「あなたは初めての任務と言うことで、上官の私としても任務成功を考えて真剣にあなたのコードネームを考えたわ」
「はぁ・・・」
いつのまにか自分の上官になっていることに対して疑問に思いつつも、怖くて何も言い出せなかったため、スルーするようにそのまま話を聞いていた。
「あなたの名前は桃子。桃は英語でpeach。その頭文字のPを取って、あなたのコードネームはPよ。どうかしら?ちゃんと考えてるでしょ?」
「・・・」
桃子は真剣でありながら自信満々なケイコの目線と雰囲気を目の前にして言葉に詰まっていた。どんな表情でどんな言葉を言えばいいか分からず、困ったように目線をコウジの方へ向けた。
「ケイコ・・・それはちょっとダサいと思うがのぉ」




