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極道の義兄ができました  作者: リラックス夢土


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第33話 暁刀さんの生きる理由




「リンリン、どうかしたの?」


「え、え~と、ちょっと、外の空気を吸いたくなって……」


「もしかしてタカ兄とのデートで緊張してるの?」



 う! 暁刀さんって意外と勘が鋭いのかな。



 図星を差されて思わず言葉が詰まった私を見て暁刀さんは優しく微笑む。

 その微笑みを浮かべた姿からは暁刀さんが本当に武闘派として恐れられているヤクザさんとは思えない。


 それともこの笑顔も相手を油断させる手段のひとつなのだろうか。

 いやいや、別に私を油断させても暁刀さんに利益はないだろう。しっかりしろ、私。



「ええ、敵を誘き出す為とはいえ、私は今まで男性とデートしたことないので」


「へえ、そうなんだ。リンリンは美人だから男が寄ってくると思ってたけど……まあ、寄ってくる男がいたらタカ兄以外なら全部沈めちゃうけどね」



 最後にサラリと怖いこと言うのはやはり暁刀さんはヤクザさんだということだろう。

 しかしそれと同時に私はもうひとつの暁刀さんの言葉が気になった。


 『タカ兄以外』というならば天飛さんが私に寄ってくる分にはかまわないという意味に聞こえる。

 そういえば愛斗さんも天飛さんのことを特別視していた。暁刀さんにとっても天飛さんは特別な存在なのだろうか。



「あの、暁刀さん。訊きたいことがあるんですが……」


「なに? リンリンの質問ならなんでも答えるよ」


「私に寄ってくるのが天飛さんならいいみたいなこと言ってましたが暁刀さんにとって天飛さんはどんな存在なんですか?」


「タカ兄が僕にとってどんな存在かって……? う~ん、一言で言うなら僕が生きるための唯一の理由がタカ兄かな」



 え? 暁刀さんが生きるための唯一の理由?

 まさかそれって暁刀さんは天飛さんのこと愛してるとかじゃないよね?



 私の頭の中でBLの世界が広がっていく。

 天飛さんと暁刀さんなら三次元BLでもいけるのではないだろうか。


 だがその時私の胸がチクリと痛む。

 天飛さんが暁刀さんに優しく微笑んで愛の言葉を囁く姿は見たくない。



「僕が火風光家の養子だってことは知ってるでしょ? でも養子になったばかりの頃はね。僕は学校でいじめられていたんだ」



 暁刀さんがいじめられていた?

 暁刀さんがいじめてたんじゃなくて?



「子供の頃はケンカが弱かったんですか?」


「う~ん、その逆かな。僕の姿がこの国の学校では珍しくて同級生がそれをネタにいじめてきたんだけど、それにやり返したら相手を殺しかねないとずっと我慢してたの。だってもし問題を起こしたら火風光家に迷惑かけると思ったから」



 暁刀さんは子供の頃からそんなに恐ろしい子供だったとは。

 でもそれが天飛さんとどう結びつくんだろう?



「だけど、ある日、僕も限界が来ていじめてきた相手にやり返そうと手を出そうとしたんだ。その時にタカ兄が現れて『カタギに手をだすな、暁刀。俺が相手だ』って、タカ兄に僕はボコボコにされちゃったの」


「え? 天飛さんは暁刀さんをいじめてた人間じゃなくて暁刀さんをボコボコにしたんですか?」



 普通なら暁刀さんを助けるためにいじめてた子供たちをボコボコにすると思うのになぜ暁刀さんをボコボコにしたんだろう。

 私の疑問に暁刀さんはスッと月を見上げて答える。



「普通はいじめっ子をボコボコにして弟を助けるよね。でも僕たちは子供だったけど天昇火風光会の会長の息子。けしてカタギと争ってはいけないんだ。たとえ子供のケンカだったとしても僕がカタギの子供に手を出したらいけないってタカ兄は身をもって教えてくれたのよ」



 なるほど。その頃の天飛さんは既に自分たちがヤクザさんの世界の人間だと自覚していたのか。

 だから暁刀さんにカタギの子供とケンカさせなかったと。



「でもそれで、暁刀さんは納得できたんですか? いじめられてたのに」


「それがね。いじめっ子たちは僕がタカ兄にボコボコにされたのを見て怖くなったみたいでね。僕をいじめたらタカ兄に何かされるかもって思ったみたいでいじめて来なくなったの。それに僕もその時本気でタカ兄とケンカしたのに負けたことで決意したの。いつか必ずタカ兄に勝ってやるってね。それが僕の目標であり生きる理由になっちゃったのよ」



 なんと、それで逆にいじめられなくなったとは。

 ん? でも天飛さんに勝つことが暁刀さんの目標であり生きる理由になってるってことは、もしかして……



「あの、もしかして天飛さんは暁刀さんよりケンカが強いんですか?」


「ん? そうよ。最近はあまり表に立って実戦はしないけど、僕よりタカ兄の方が強いわよ。だって僕を有名な武闘派ヤクザに育てたのタカ兄だもん」



 へ? マジですか!

 暁刀さんを武闘派ヤクザさんに育てた人間が天飛さんだったなんて。



「でも自分がこの若さで組を持てたのはタカ兄のおかげだって分かってるの。ここまで僕を強くしてくれたタカ兄は僕のいつか超える目標であると同時にこの世で一番尊敬してる人間でもある。だからタカ兄の幸せも願っちゃうのよ。だからリンリン。明日は頑張ってね」



 暁刀さんの青い瞳が月明かりを反射してギラリと肉食獣のように光った。

 その瞳は天飛さんとのデートを成功させろと私に圧力をかけてくる。



 う! なんかプレッシャーで余計に眠れなくなりそうだよおォーっ!!



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