第32話 デート場所はMパーク
愛斗さんと自宅に戻り夜になるとヤクザさんの部下の人がやって来て天飛さんが帰宅して私を呼んでいると伝えに来た。
まだ吾郎丸さんは私の付き人に復帰していないようだ。
たいしたケガはしていないと分かってても早く吾郎丸さんが付き人に復帰して欲しいと願ってしまう。
たとえ吾郎丸さんにスパイ容疑がかかっていてもヤンキー犬だったとしても自分が飼うと決めたペットがいないのは寂しい。
とりあえず天飛さんに会ってデート場所はМパークでいいか確認しなきゃ。
自分の部屋を出て私は部下の人の案内で天飛さんがいる部屋に向かう。
そこはこの屋敷の中では少ない洋室で中に入るとソファに天飛さんが座っていた。
膝の上にはいつものようにパソコンを置いて何やら作業をしている。
私と話す間際まで仕事をしてるとはそこらのビジネスマンより忙しい人のようだ。
天飛さんがパソコンを打つのを止めて私の方を見た。
「凛子か。まあ、座れ」
「はい」
私は天飛さんの向かいのソファに座ろうとした。
すると天飛さんの不機嫌そうな低い声が響く。
「デートする場所は決まったか?」
「あ、はい。Мパークなんかいいのではと思うんですが」
「Мパーク……って、どこだ?」
おっと! 天飛さんはМパークの存在をご存じなかったか。
まあ、ヤクザさんとは縁遠い場所だもんね。
「えっと、S海岸の近くに最近できた遊園地と水族館を併設した場所です」
「遊園地と水族館……だと?」
天飛さんはまるで鳩が豆鉄砲を食ったような表情になった。
きっと私の提案が予想外過ぎたのだろう。
どうしよう、怒られるかな。
でも私にデート先を決めろって言ったのは天飛さんだもんね。
私には責任ないよ。
「はい、そうです」
「……まさかとは思ったが、遊園地と水族館とはなァ……」
「もしダメなら他の場所でもいいですよ。ただ、私が思いついたのはそこしかなかったんで……」
天飛さんが嫌なら別に他のデート場所でもかまわない。
でもヤクザさんがデートするような場所って私が行ってもいいかどうか分からないけど。
すると天飛さんはニヤリと笑う。
「そこは、凛子が行きたい場所なんだろ?」
「は、はい。私は水族館のイルカショーとか好きなんで」
「それならそこでかまねぇ。明日、予定通りに凛子とそこでデートする」
おお! なんと。この提案が通るとは。
優香ちゃん、ナイスアドバイスありがとう!
「分かりました。それではМパークに行く準備しておきますね」
「ああ。明日の朝11時に出発する。二人きりだということをアピールするためにМパークまでは俺が車を出すから時間になったら玄関で待っていろ、凛子」
ななな、なんと! 天飛さんの運転で行くんですか。
それってかなりレアな体験になりそう。
天飛さんや暁刀さんはいつも運転手付きの車で移動している。
それだけでなく護衛の部下の人が乗った車も引き連れて。
それがヤクザさんの幹部の常識だと思っていたのでまさか天飛さん本人が車を運転するとは思わなかった。
車を運転する天飛さんって素敵だろうな。
ドライブデートもプラスなんてラッキーかも。
それなら天飛さんと二人きりだもんね。ん? 二人きりって初めてだっけ?
敵を油断させるためとは分かっていても今まで長時間本当に天飛さんと二人きりになったことはない。
しかも車という密室。密室に天飛さんと二人きり。何をされても文句は言えない。
待て待て、いけないいけない、危ない妄想しそうだった。
これは本当のデートじゃないんだから、落ち着け、私。
「分かりました。明日はよろしくお願いします、天飛さん」
「ああ、安心しろ。凛子のことは命かけて護るからよ」
その言葉に私の胸がドクンッと高鳴る。
命かけて護るなんて、男性に言われたの初めてだな。
う~ん、なんかすごく照れくさいんですけど。
「それじゃあ、今夜はこれで。天飛さん、おやすみなさい」
「おう、おやすみ、凛子」
照れた顔を見られたくなかった私は天飛さんにおやすみの挨拶をしてその部屋を出る。
自分の頬が熱くなってるのが分かった。
少し落ち着くために縁側で外の空気吸おうかな。
そう思って縁側に行くとそこには縁側に腰をかけて中庭を見ながら座っている先客がいる。
浴衣姿の暁刀さんだ。
暁刀さん、なんでここにいるんだろ?
お邪魔しちゃ悪いかな。
すると私の気配に気付いた暁刀さんが私の方を見た。
銀髪の王子様ヤクザの暁刀さんがニコリと微笑む。
うわ! 銀髪王子様の浴衣姿ってギャップ萌え要素満載じゃん。
これもレアかも!




