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僕と姉の神話遭遇記  作者: 暁0101
第四章 王位継承者
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第七十一話 回想・決意と困難と

ジグラットの神官長が登場したことにより、事態はツァーヴ族たちに一気に優位となった。

神官長ノネの前では亜人への差別的行動は出来ない。

そんなことをすれば、ジグラットを通して帝国が亜人保護を名目に王国の領土問題に介入するチャンスを得てしまう。

そんな失態を犯せば即刻極刑だ。


ツァーヴ族を脅していた騎士団はすごすごと退散していく。


「凄い! あれだけの騎士をたった一人で、お前さん、実はすごい奴なのか?」


「昨日、神官で一番偉いって言い当ててたのに。後、私はお前さんじゃなくてノネ、ノネ先生とお呼びなさい」


ノネはエッヘンと腰に手を当て胸を張る。

彼女の二つの丘は人並なので、こう神官服が張ってその輪郭がとかはない。


「いや、師匠と呼ばせて欲しいのである!」


「し、師匠!?」


「先ほどの魔獣といい、師匠は魔獣を手懐けているのであるか?」


「ん、魔獣? ああ、この子のこと?」


ノネの前に青白い光が広がり、一体のセフィラが姿を現す。

見た目は、魔獣と見間違えても仕方ない。

人の顔が横に並ぶように胴体を構成しそこから足が4本伸びており、さらに頭のある部分から人の上半身が付いているのだ。

ケンタウロスのような見た目といった所か。


「この子はツァドキエル、私のセフィラ。どう? カッコイイでしょ」


「うむ。とても力強く威厳を持っているように見えるのだ。師匠はツァドキエルとはどこで会ったのだ?」


「うーん。セフィラは魔獣じゃないから会いたくても会えないんだよ? ジグラットで洗礼を受けて、契約しないといけないから」


「ジグラットで洗礼・・・、ツァラトゥストラ教の守護獣であったか。勘違いをしてすまなかったである」


ルフタは少しションボリとする。

騎士を蹴散らしたセフィラの力は、まさにルフタが求める力だと思えたからだ。

だが、セフィラはツァラトゥストラ教の守護獣とルフタは聞いていた。

よそ様の守護獣を勝手に借りるのは出来ないのだ。


「ルフタ君」


「何であるか師匠」


「後で話をしよう。いいよね?」


「うむ。問題ないである師匠」


ノネが意味ありげにルフタと話す場を設ける。

彼女はルフタに聞いておきたいことが出てきたのだ。

この村の中でおそらくルフタしか考えていないことを確かめるために。


さて、彼女ノネ・デカダンス・メーディウムがツァーヴ族の村に来たのは他でもない、カラグヴァナ王国による領土侵略の被害がないか確かめるために視察に来たのだ。

ツァラトゥストラ教の宗教団体であるジグラットは基本的には中立であり、人間も亜人も平等に扱う。

政治的部分では、ディユング帝国との一体化が進んでいるので他国から見れば、ジグラットの干渉は帝国の干渉となるのだが。

それでも、社会的弱者から見ればジグラットは救済であるのだ。


そんな社会的弱者である亜人のツァーヴ族にとってノネはまさに救世主だった。

彼女がいる限り村は安全なのだから。

ツァーヴ族に礼を言われるノネは寧ろ自分の来た目的を隠していたことを悪く思ったのか、みんなに謝っていた。


「みんな、ごめんなさい。隠すつもりは無かったんだけど、結果的にこうなってしまってごめんなさい」


「神官様が謝る必要はない。ワシらの村を救って下さったのだ。そうだ! 今日は宴を開きましょう。寛いでいって下され」


「ええ! そんないいですよ。気を使わなくても」


「遠慮をなさらずに。御馳走を用意させるので、どうか」


「御馳走・・・、いいわよ!」


神官がそんな欲望全開でいいのか? とルフタはツッコミたくなるが、彼の知っている神官ともしかしたら定義が異なるのかもしれない。

そう思って無理矢理納得するのだった。

徹底した無欲よりあれぐらいの素直さの方が人にも神にも好かれるのかもしれない。



----------



他のみんなが宴の準備をしている中、ルフタはノネと最初に出会った川の辺に呼び出されていた。

もう彼女は座って待っている。川をボーっと眺めて何やら考え事をしているようだ。

ルフタは彼女の隣に座る。


「隣失礼するのである」


「うん」


「わざわざ呼び出してどうしたのだ?」


「うーん・・・」


ルフタを呼び出したノネは話を切り出そうかどうか迷っている。そんな顔をしていた。

なかなか口を開かないものだからルフタは何だか不安になってくる。

もしかしたら、悪い話なのだろうか?


「師匠、言いずらいことなのであるか?」


「ううん、・・・ねぇ、ルフタ君。ルフタ君は力が欲しいの?」


「力・・・であるか?」


「そう、特別な力。朝方の騎士たちとの騒ぎの時、ツァドキエルを見たみんなの中で、貴方だけがその力を欲したの。ルフタ君、昨日、男の誓いがあるって言ってたよね。もしかして、村を守る誓いなんじゃないかな」


「・・・そうである。吾輩にはみんなを守る力が必要なのだ」


ルフタは一年前に誓ったことを認める。

力を渇望したことを。

王国と渡り合える力を。


「んー・・・、確かに力があれば敵を倒して自分の大切なものを守ることはできるよ。でも、それは力を振るった一回ポッキリだよね。むしろ、逆らったことでさらに敵が来るんじゃないかな。それだと、守りたいものも守れないよ」


「そんなことは! 師匠のような力があればッ」


「ツァドキエルは敵を倒す暴力じゃないよ。私の話し相手になってくれて、私の居場所を守ってくれる友達。ルフタ君が求めるのは敵を殺すだけの力なの?」


「吾輩は・・・、村をみんなを守りたいだけなのだ。何者にも脅えることなく、ただ、いつもの日々を送りたいだけなのだ」


いつもの日々を送りたい。

当たり前だけど、今のツァーヴ族には遠すぎる願い。

ルフタはそれを守りたいだけ。だけど、手段が分からないのだ。

だから、目の前の脅威を取り除けば変化が訪れるのではと、そう思っている。

その変化が良いものか悪いものかも分からずに。


「いつもの日々を送りたい。それは貴方だけじゃなくて、みんなが望む願い。そのいつもの日々に破壊の力はいるのかな? いつもの日々にあっていいのかな?」


「そんなものは無い方が良いに決まっているのだ」


「そう、無くていいものなんだよ。みんなを守るのにそんな力なんかいらない」


ノネは優しく語る。

守るのに敵を倒す力はいらない。

必要なのは守る力なのだ。


「しかし、それではどう村を守れば」


「ルフタ君、もう知っているはずだよ。どうすれば村を守れるのか」


「知っている? いや・・・、まだ、見当も・・・」


「ゆっくり考えて、答えはルフタ君の目の前にあるよ」


「目の前・・・、・・・・・・! 師匠、つまり、・・・いや吾輩は亜人。なれるはずが」


村を守る方法。

それは簡単な答えだが、きっとすごく辛い困難が待ち構えているのがすぐに分かった。

だから、ルフタは躊躇する。

浮かんだ答えが確実な手段だとしても、自分が、亜人の自分がなれるのかと。


「なれるよ」


不安を。

否定を。

その優しい声が打ち消していく。

なれると肯定してくれるその声にルフタの誓いは形となる。


「・・・師匠」


ルフタは決める。決意する。

自分のすべきことを。


「吾輩は、神官になるのである。なってみせるのである」


村を守る誓いは、神官となりジグラットの目となることで村を守る力を手に入れること。と具体化していく。

たった一人の青年が村を守るため、その人生を懸けるとここに宣言した。



----------



「こうして、吾輩は師匠の下で修業を積み神官となったのだ」


アズラの眠る部屋でルフタは昔話を続けていく。

まだ、困難がありつつも希望のある話、ここからルフタの人生は激動の時を迎えていく。

最初は。


「3年、神官になるのに3年掛かったのである。カラグヴァナのジグラットでは洗礼の儀を受けることすらできず、わざわざ帝国まで行って儀を受けた。その時の洗礼名はニヒリズム。神官になれない祝福だったのだ」


神官になるには最低ルサンチマンは必要であり、最初の一歩でルフタは躓いた。

彼は、神官になるため帝国の地で3年も足ふみすることとなってしまう。

その間にも村は王国に脅かされ続けているのだ。

ルフタは焦りを押す殺しながらノネの下で修業を積んでいく。


「すがる思いで師匠の付き人にしてもらい。各地を転々としながら機会を待ち続けた。師匠は行く先々で吾輩の村と同じようにただ話を聞いて平和に暮らしているかを確かめていた。時には山賊や王国騎士団との衝突もあったのである。だが、師匠は強かった。誰よりも。吾輩の知る中で一番強い人だ」


ノネは亜人を守るため、神官長という立場を最大限に活かし保護活動を独自に行っていたようだ。

神官長としての仕事の合間を縫っての活動なのでかなりハードではあったが、ルフタも同じ亜人を守れるとあってノネを支えた。

そんな生活を3年続け。


「僅か3年だが長かった。戻った時にはもう村は無いんじゃないかと、何度もうなされた。だが、吾輩は間に合ったのだ。再度の洗礼の儀でルサンチマンとなり、神官となったのである」


それは、待ちに待った瞬間であった。

村をみんなを守る力をようやく手にした瞬間であったのだ。


「その時の師匠の言葉を今でもよく覚えている。これで貴方も観測者となった。何が正しく何が間違っているのか己が目で確かめて欲しいかな、と」


村を出てから3年後にルフタは神官となってカラグヴァナ王国に戻って来た。

王国で初めて神官を名乗る亜人が誕生したのだ。

始めはジグラットの者さえ信じようとしなかった。

亜人は神官になれない。そんな固定概念が王国に蔓延っていたのだ。


「王国では信じてもらえず始めは苦労したのである。神官の証である神術をジグラットの者に見せて回って認めてもらおうと必死になったものだ。吾輩の神術で驚きの余り腰を剥かす者もいたな。あれは悪いことをしたのである」


初めてカラグヴァナ王国のジグラットで同僚たちと会った日。

それは、ルフタにとって大事な思い出でもある。


「それでも、カラグヴァナ王国なのだ。亜人の吾輩を認めない者はいた。だが、そんなことなど気にならないぐらいの仲間もできたのだ。みんないい奴らである。亜人の吾輩を区別することなく友として迎え入れてくれたのだ」


それはどんなに嬉しかっただろうか。

ルフタにとって王国の人間は敵だった。

信じられる人間は師匠だけ。

そう思っていた彼に人間の友人が仲間ができたのだ。

敵だと思っていた存在が味方になった。それだけで、彼の中の世界は大きく変わる。


「それから、8年。吾輩はジグラット内で地位を得て。村を、いや、亜人全てを救えるようにと自身の全てを注いでいた」


亜人全てを救おうとしていた年。

つまり、ルフタが神官を辞めてしまった年。

一体何があったのか彼は語っていく。

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