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僕と姉の神話遭遇記  作者: 暁0101
第四章 王位継承者
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プロローグ 王室勅命

状況報告.1


帝国歴2019年

エウノミア公国のジュゼッペ・パレルナ・ピアッツィ公爵より、突如独立宣言がなされる。

約100年前に滅びた旧アーデリ王国の王位継承者を立てることで、独立の正当性を主張し一方的にそれはなされた。

宗主国であるカラグヴァナ王国は即時、宣言の無効とジュゼッペ公爵の爵位剥奪を命ずるが、ジュゼッペ公爵は命に背き公国軍を掌握。

カラグヴァナ王国はジュゼッペ公爵による反乱であると判断し騎士団を派遣する。


しかし、派遣された騎士団は全滅し反乱を鎮圧することに失敗する。これにより戦火が拡大。

騎士団は王室直属の精鋭部隊の一つであったため、カラグヴァナ王国は当初、誤報であると切り捨てジュゼッペ公爵に時間を与えてしまう。

この失態によりエウノミア公国全土が反乱軍の勢力圏となった。

エウノミア公国軍は、残りの四公国の一つであるケレス公国に向けて動き出す。


戦況報告.1


同年

エウノミア公国軍がケレス公国領に進軍。

第一次防衛戦を開始。

約4ヶ月に及ぶ戦闘の末、ケレス公国軍敗走。

エウノミア公国軍に亜人の上位種族ゼヴ族を確認、ジュゼッペ公爵は亜人ゼヴ族と協力関係にあると考えられる。

報告よりゼヴ族の戦闘能力は上位騎士に匹敵もしくは上回るものと判断せざるを得ない。


現在、第二次防衛戦を展開中

この防衛戦を突破された場合、首都ゲフィオンまで最終防衛戦を残すのみとなる。


戦況報告.2


帝国歴2020年

第二次防衛戦が突破される。この戦闘によりケレス公国軍は壊滅状態に陥る。

カラグヴァナ王国は反乱から紛争状態に警戒態勢を切り上げ、ケレス公国と領土を接するヒギエア公国との混合師団、約2万の兵を援軍に向かわせた。

3ヶ月後、ケレス公国に援軍が到着。エウノミア公国軍の猛攻にさらされていた最終防衛戦を立て直すことに成功する。

さらなる援軍を投入するべく、ケレス、ヒギエア、ベスタ公国の各公爵と軍事会議を行い、ケレス、ヒギエアの混合軍を中心にベスタ公国からの後方支援で対エウノミア組織を結成。

反乱分子の排除から敵国の対処へと紛争の形態が変わりつつあった。


時を同じくしてエウノミア公国軍に変化が確認される。

ケレス公国に向けていた戦力を分散、各地でゲリラ戦を展開。

これにより、ケレス、ヒギエアの混合軍は各個に対応するため戦力の分散を余儀なくされる。


同年

ケレス公国軍残党を率いていたレーベ将軍が戦死。ケレス公国軍残党を混合軍に統合し運用する。


戦況報告.3


帝国歴2021年

エウノミア公国軍によるゲリラ戦の被害は甚大であった。

指揮官の部隊をピンポイントで襲撃し騎士団から統制力を削いでいく。

混合軍であるゆえ発生する指揮系統の重複状態を利用しこちらの組織としての機能を破壊していく。

一つの指揮系統を破壊することでもう一方、今回はカラグヴァナ王国軍に統合されるまで霧散したように各地でバラけてしまった。


各地に派遣した騎士団が指揮官を失い敗走している状態を察知するまで最低でも1週間はかかっている。

これもまた混合軍であるゆえに発生した連絡手段の違いより生じたものだ。

エウノミア公国軍のゲリラ戦はさらに隠密になってきている。

早急に対策が必要だと判断する。


追記

現在確認されている上級騎士の被害は計30名にも及んでいる。

騎士団を統括する者が戦死することは騎士団の崩壊を意味すると判断して間違いない。

余程優秀な部下でもいなければ指揮官を失った騎士団を維持するのは難しいだろう。

こちらも何らかの対策が必要であると思われる。


********************************エウノミア紛争報告


公女の付き人。マルクからの説明が終わる。

説明が終わると同時に公女が口を開く。


「以上が、わたくし達カラグヴァナ王国に属する者の現状ですわ」


高貴な雰囲気を漂わせ背中まである金髪の髪を編み込み頭に花模様を浮かばせ。

深紅のドレスに身を包んでいる彼女。

フローラ・ウィリアルナ・ベスタは、友人で部下でもあるアズラにエウノミア公国との紛争状態を聞かせていた。


何故、アズラを呼び出したのかはすぐに分かるだろう。

エウノミア公国はこちらの上級騎士を狙っている。

そして、アズラは公女直属護衛騎士の一人、つまり上級騎士だ。

まだ、ベスタ公国はエウノミア公国との直接戦闘はないが、それも時間の問題だろう。

フローラは苦い顔をする。爵位を与えればそれ相応の身分を得るが、同時に責任も負う。

今回は、国を守るという責任だ。

お礼の気持ちで与えた爵位がここで彼女を縛ってしまうのが心苦しい。


特別指定個体クラスの魔獣を退けたことで、カラグヴァナ王国にもアズラの強さは知れ渡っている。

いずれ参戦を求められるだろう。

たとえ参戦しなくともエウノミア公国が仕掛けてくるのは分かり切っていた。

だから、今できるのは警告を発しアズラに万が一に備えてもらうしかないのだ。

・・・そして、もう一つ、呼んだ理由がある。


「エウノミア公国は上級騎士を狙っているのね」


「上級騎士だけではないですわ。上級貴族や王族も狙っていると考えるべきかしら。わたくし達の命が狙われているの」


「フローラ、大丈夫よ。何が来ても私は負けない。しばらくはウェスタから出ないで警戒をすることにするわ」


「いえ、アズラには王都に行って貰いたいのですの」


フローラが首を振る。アズラの身が心配なのもあるがそれでもやらなければならないことがある。

やらざるを得ないことが。


「王都に?」


「ええ。王都でここ最近、王位継承者たちが不審な死を遂げているのですわ。まだ、王位継承権の低い者たちだけのようですけどいずれは」


「王位継承権の上位にいる王族に手が伸びる・・・と。私はその護衛をすればいいのかしら?」


「護衛ではなく、王位継承者を殺した犯人の討伐を命じられているのですの」


命じられているの一言でアズラはこの話の事情を察した。

命令を下したのはカラグヴァナ王室だろう。

そして、相手はおそらく身内にいると予想される。

王位継承権を持つ人物を守りもせず放っておいて敵を探せということは、敵が外側ではなく内側にいる証拠だ。


「王室からの勅命なのね」


「・・・そうよ」


フローラは静かに答える。

彼女は今回の命令を、王族の安全確保と同時にアズラの力量を試すために下されたと睨んでいた。

紛争が長引きエウノミア公国より最も遠い公国であるベスタにも参戦の要望が高まってきている。

なら、今のうちに精鋭となる人物を探すのがいいだろうと王室は判断した。

より優れた騎士を見つけ直属の騎士団を強化する。

・・・自分たちを守らせるために。


「勅命には隠密に行動せよと書かれているのですわ。相手は相当用心深いようで、これまでの討伐は全て失敗していると素直に伝えてきているのですの。必要なら親衛隊の者を連れて行っても」


「それだと目立ってしまうわ。みんな気付いていないみたいだけど変装しても意外とバレるのよ。騎士からは騎士の雰囲気が出ているから。今回は私の商会の仕事という形で王都に向かうわ」


「アズラがそういうのなら・・・。くれぐれも気を付けてください」


「分かってる。すぐに終わらせてくるわ。それじゃ、フローラ失礼するわね」


「もう行かれるのですの?」


フローラが心配そうにアズラに尋ねる。

友人を失いたくない。

今の彼女はそのことで頭がいっぱいだ。


「うん。大丈夫、安心してフローラ。私は噂の最強の騎士なのよ」


そういってアズラは、王都で広まった自分の噂をあえて口にする。

フローラは思わず笑ってしまう。

あれだけ嫌がっていたのに、自分をアピールする手段に取り入れてしまっているなんて。

なんだか本当に大丈夫な気がするとフローラはアズラを見送る。


カラグヴァナ王国の王都アプスで見えない敵との戦いが始まろうとしていた。

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