↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と姉の神話遭遇記  作者: 暁0101
第三章 王都市場参入
50/326

第四十七話 情報を利用して

妨害をしていた男がセトたちに捕まり縛りあげられていた。

エリウは爪をギラつかせながら男を問い詰める。


「ニャんであちしらを狙ったニャ」


「・・・知らないな」


「ニャ」


「ぎぃッ!! 分かった話す、話すからやめてくれ。クソ、なんで亜人なんかに・・・」


「聞こえてるニャ」


「ヒィ!」


エリウは尋問に手慣れていた。それはそうだろう、あの廃城で散々やられたのだから。

どうすれば、喋りたくなるか痛いほどよく分かっていた。

皮肉かもしれないがあの時の尋問された経験がここで役立っていた。

尋問に耐えられなかった男はペラペラと喋り出す。


「雇われたんだ。市場で売れそうな話題を持ってきた奴を潰せって」


「それで?」


「そ、それだけだ。他にはなにも」


「あちしはその先が知りたいニャ」


「依頼主の名前は言えない。そういう契約なんだ!」


男はよくある話をする。依頼主の名前を出すのはタブーだろう。

しかし、男はもう顔が割れている。

それは、依頼主にとってもリスクとなる存在になったことだ。


「えっと、私たちに捕まった時点で依頼主さんから口封じで殺されるって思いません?」


リーリエが優しく男に語り掛ける。エリウとは異なる尋問。

自発的に喋らせるように仕向けていく。


「・・・」


「あなたにこんなことをさせるってことは、平気で人を傷つける人だと思うんです。じゃあ、依頼主さんを庇ってもいいこと無いですよね」


「俺にどうしろっていうんだ?」


「私たちに雇われませんか? あなたは平気な顔して依頼主さんの所に戻るんです。そして、逐一、依頼主さんの情報を渡してくれれば」


「・・・スパイをしろってことか」


「はい」


リーリエはこの男を囲い込もうとする。確かにこの男は敵が出した尻尾だ。

このままでは、トカゲの尻尾切りのように依頼主に逃げられるが、うまく丸め込めたら敵を引きずり出せる。


「俺にだってプライドが・・・」


「あなたの命。私たちに雇われたらあなたの命を保証します」


「・・・・・・分かった」


「はい! 契約成立です」


男をこちら側に引き込んだ。

これで、敵の情報がいつでも手に入るようになる。

立場が優位に逆転した。

リーリエは接客業で培った交渉術が非常に長けているようだ。

こういう交渉は今後も任せてもいいかもしれないとセトは思う。


「それで依頼主は誰ニャ?」


「フェアカウフェン商会の代表だ」


「・・・ッ」


依頼主の名前を聞いてセトたちは絶句する。

交渉をしようと準備していた相手の一つだ。

市場に商品価値証明書をばら撒き掌握した有力商会。

始めから交渉をする気が無かったということか。


「どうします? 今から交渉相手の候補を変えても」


「今、市場を一番掌握しているのがフェアカウフェン商会なら、そこ意外と交渉しても意味がないかもしれない」


「そうでもない。新しい依頼主さんよ」


男が少しでも自分の立場を良くしようと情報を伝えてくる。

こういう所で逞しくのし上がろうとするのは尊敬できるかもしれない。


「フェアカウフェン商会は王都商会連盟に押され始めている。だから、俺にこんな依頼を出したのさ」


「なんで押され始めたの?」


「王都商会連盟の傘下の奴らがバラバラに出した商品価値証明書を統一したんだ。複数の商会に認められた商品、これがここ最近の売れ筋だ」


「そんなこと全然知らニャかったニャ」


セトたちが噂を流している間に、商品価値証明書の勢力図が変わり始めていた。

来た当初はフェアカウフェン商会の商品価値証明書が圧倒的シェアを持っていたが、王都商会連盟の統一証明書が発行されてからは五分五分にもつれ込んでいたのだ。

市場は生き物のように変化する。

セトたちはその流れに乗れていないのだ。

本来こういう話はピントの領分なのだが、アズラと共にベスタ公国に向かって今はいない。

なら、市場の情報収取をするのはセトたちの役目だ。

ピントはそれぐらい出来て当然と思っているからこそ、セトたちに何も言っていないのだろう。

市場での仕事を手伝うのだ。それぐらい出来なければ役に立てない。

売るだけでなく売るための準備もしなければ成り立たないのだ。


「僕たち噂ばかり流していてもダメだね」


「そうですね。ここからはどれだけ情報を集めることができるかが大事ってことです」


今まで言われたことしかしてなかった。そのことに気付けたとセトたちは確認を取るようにいう。

アズラが戻ってきた時にどれだけ情報を集めているかで、市場で売り込むときの難易度が大きく変わるのだ。

セトたちは自分たちの役割を正しく理解していく。

ただのお手伝いではない。

もうセトたちは70名弱もいるまだ名前もない組織の一員なのだ。

一人ひとり役割があるのなら、それを100%こなすのが組織の一員としての証。

全員が100%こなさないと組織として100%にはならない。

一人でも99%ならほかが全て100%でも全体としては100%未満となってしまう。

セトたちはさらなる行動を開始する。


「情報を集めるならやっぱり市場かな?」


「市場なら確実に最新の情報が手に入りますね」


「まだ出てニャい情報は?」


「それは俺に任せてくれ。そのために雇ったんだろ? あと、顔の傷を治療してくれると嬉しんだが」


「あ、ごめん忘れてた。彼に治療をお願い」


「お前ら血に慣れすぎだろ・・・、出血で意識飛ぶかと思ったぜ」


術式使いから癒呪の術式で治療を受けながら男はおどけるように肩をすくめた。精神が図太いのか空気が読めないのか。

まだ、信用した訳ではないがセトは仲間として名前を聞く。


「自己紹介がまだだったよね。僕はセト・ルサンチマン・アプフェル。洗礼名の通り帝国出身です」


「俺は、ディア。ただのディアだ。働くからちゃんと守ってくれよ?」


「それは偽名かニャ?」


「偽名だが、俺に取っちゃ本名だ」


「名前を捨てたのですか!?」


リーリエが少し驚いた顔をして聞いた。ディユング帝国でもカラグヴァナ王国でも、他の全ての国でも、人の名前はその人の全てを決定付ける重要な記号だ。

貴族なら貴族の名を王なら王の名を持つのだ。

一般の人々も代々家の名を継いでいる。それはその人の血脈の歴史でもある。

ディアはそれを捨てたのだ。

家族も家も全て。

彼の言う通りどこの誰でもない、ただのディアになった。


「ああ、俺は縛られるのが嫌だったからね」


「私には理解できないです。私はお母さんやおばあちゃん、他にもいっぱい大切な人がいました。それを自分から捨てるなんて・・・」


「・・・いました?」


リーリエが聞かれたくないことを自分から聞かれてしまうような言い方をしてしまった。

キュッと口を紡ぎ。目線が下に落ちる。


「いいね・・・、ただの仲良しこよしかと思ったらそれなりの修羅場を潜ってそうだ」


「ディア、そのへんで」


「おっと、失礼。まあ、これからよろしく」


「それじゃ、新しく役割分担を決めよう」


セトはそれぞれが情報を収集する場所などの担当を決めていく。

リーリエたちは市場を中心に、セトとリーベは繁華街だ。

亜人たちは情報整理を担当してもらう。

そして、ディアにはフェアカウフェン商会の情報を担当してもらい護衛としてエリウをつけた。

エリウならそうそう負けることは無いとセトは判断したのだ。

それは、エリウへの信頼の証。

彼女ならヘマをしないはずだ。たぶん。


もうすぐ夕方になる。

ディアはフェアカウフェン商会に怪しまれないように報告をしに戻った。

セトたちは念のため木箱を馬車に見立てたダミーを作り火を放つ。

フェアカウフェン商会にピント商会の商品は消し炭になったと嘘の情報を流すためだ。

これは情報戦。

セトたちは情報の重要性に気付き始めている。



----------



王都アプスを出てから4日が経過した。

馬車を走らせかなり急いで旅を進めたのでもう国境は超えている。

あと3日もあればベスタ公国の首都ウェスタに到着するはずだ。


「アズラ様、ぜひ一度わしの店に来てください。今回、公女殿下にお渡しできるのはこれだけですが、わしの店にはもっと良い品がございます」


「いえいえ騎士様。私の店に来てくださいな。乙女が欲しいものは乙女が一番分かるのでございますわ」


「2人共ありがとう。考えさせてもらうわ」


カラグヴァナ王国領での魔獣との戦闘で商人たちはアズラを本物の騎士と信じたようだ。

やはり、実際に目で見てもらうのが早い。

どこの国でも強さは信用の基準として一番用いられている。

やり過ぎると逆に恐れられるが、今回はいい方向に向いていた。


「アズラ様、よろしいですか?」


「どうしたの?」


ピントに呼ばれたアズラは馬車の済みに移動する。

ピントは声が周りに聞こえないように注意してアズラに尋ねた。


「この件、公女殿下はご存じないのでございますよね?」


「ええ、知らないわ」


「受け取ってもらえるでしょうか?」


「大丈夫よ。買わせるんじゃなくてプレゼントするんだもの。喜んでくれるわ」


アズラはフローラが絶対に受け取ってくれるという自信があるようだ。

逆にピントは、そういう接待はお断りされるんじゃないかと不安があった。

貴族は誰からでも寄贈の品を受け取ったりはしない。自分の家と付き合うに相応しい相手の品のみを受け取るのだ。

アズラが連れて来た商人は、どいつもこいつも貴族とつり合いが取れるような人物には見えない。

彼らのことをどう説明し品物を渡すのかと心配なのだ。


だが、それはいらぬ心配だろう。

アズラは友人としてフローラにプレゼントするのだから。

友人の周りに誰がいようと優先されるのは友人のアズラだ。

もし、仮にアズラがフローラに救援を求めたら彼女は喜んで力を貸すだろう。

フローラはアズラと良い友人でいたいと思っているのだ。断るはずがない。


「分かりました。アズラ様を信じます」


「任せて。王都での商売成功させましょ」


「はい! もちろんでございます」


アズラは不安がっているピントを元気づける。

王都での失敗が堪えたのか、用心深くなっているようだ。

今回の商売を成功させて自信を取り戻させてあげないといけないとアズラは思う。

自信が砕かれた心の痛みは誰よりも分かるつもりだから。


「アズラ、もうすぐ首都への街道に出るのである」


ルフタから報告が来た。

2台の馬車は平行して走る。

馬もだいぶ疲れてきているようだ。

そろそろ休憩しないといけないとアズラは考え、


「街道に出たら休憩しましょう。ルフタ、周囲の警戒をお願い」


「了解である」


ルフタの走らせる馬車が先頭に出る。

ベスタ公国領に入ってしまえば魔獣の襲撃もほとんど無くなる。

それだけ、カラグヴァナ王国の魔獣は凶暴なのだ。

特別指定個体のような強力な魔獣もわんさかといる。

その過酷な環境がカラグヴァナ王国を強国たらしめているのだろうが。

逆に、カラグヴァナ王国領以外は魔獣の脅威も一気に下がるのだ。

ルフタは無駄に気構えたりせずに警戒していく。

安全を確かめ通信用魔晶石で合図を送った。


「一時間ほどしたら出発します。ゆっくり休んで」


アズラたちは溜まった疲労を取っていく。

柔軟運動をしたり、風に当たったりとそれぞれが思い思いにリラックスしていた。

もうすぐ首都に着く。

フローラから商品を受け取ったという署名をもらえれば後は戻るだけだ。

それも出来るだけ早くに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。