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僕と姉の神話遭遇記  作者: 暁0101
第三章 王都市場参入
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第四十一話 王都アプス

荒野の真ん中で炎が舞う。

大量の魔獣シュタッヘルが焼け死に、黒い煙を上げていた。

だが、その死体の数を遥かに上回る新たな集団がセトたちに襲い掛かる。

アズラの火の術式を突破し、護衛であるルフタたちの目前まで迫ってきた。

魔獣シュタッヘルを足止めするため、荷台を壁代わりに配置しルフタたちは荷台の後ろに待機する。


まだ、まだ引き付ける。

進行方向を塞ぎに行く群れは、弓兵と術式使いに任せて自分たちは群れの本隊を迎え撃つ。

魔獣シュタッヘルが荷台のすぐ前にまで来た。この距離ではアズラの術式は威力が高すぎ使用できない。

使用すれば自分たちを巻き込んでしまう。

荷台がシュタッヘルの突進で吹き飛ばされる。

それと同時に、ルフタたちが奇襲をかけた。

ルフタのメイスでカラを叩き割り、護衛たちが剣と槍を突き立てていく。

アズラが土術式で援護を行う。地形を変えシュタッヘルの足を取り動きを封じた。


「今のうちに!」


「感謝するのである!」


アズラはピントやリーベがいる馬車本隊を守るように土の壁をドーム状に展開する。

これでしばらくは持ちこたえられるはずだ。


「アズ姉、僕も出るよ」


「気を付けて。無理しちゃダメよ!」


「うん!」


セトも戦場に飛び出す。

足止めをすり抜けこちらに向かってくる一体に短剣を構えた。

減速など考えずに突っ込んでくる。

ズゥゥゥウウウンッ! と土の壁にめり込み砂煙が上がった。


「やぁああああ!」


ザスッ! とカラの間に短剣を刺し込んだ。緑色の体液が飛び散る。

なおも動こうとするシュタッヘルに対しセトは突き刺した短剣を滑らせる。

木の実を解体するように、固いカラを斬り開く。

ガバッとカラが引き剥がされ、内部を露出していく。すぐさまそこに短剣を突き刺した。

ズゥウンッ! とシュタッヘルが地面に倒れ伏す。

まず一体。


セトは短剣を構えなおし次に備える。

ルフタたちを突破した新たなシュタッヘルが二体迫る。


「数が多い! このままじゃ!」


セトの心が警報を鳴らしている。このままでは押し切られると。

セトが警戒したと同時に、アズラも状況を打破しようと攻め手に出た。


「壁の維持をお願い。私も出るわ」


「アズラさん! ぐっぐう!」


馬車を守る土の壁を術式使いに任せ、アズラもシュタッヘルが蠢く中に飛び込んでいく。

魔力を拳と足に集中する。

アズラの必勝パターン。

圧倒的破壊力の拳で殴り倒す。

ただそれだけの攻撃だ。


「ハァアッ!」


拳がシュタッヘルの群れに放たれ、砕けた肉片が宙を舞う。

数匹をまとめて殴り飛ばす。

アズラが突き進みシュタッヘルの群れに風穴を開けていった。

それは、敵の侵攻速度激減させる。


「今である! 押し返せ!」


「姉御だけに任せる訳にはいかないニャ!」


ルフタとエリウが中心となってシュタッヘルの群れを押し返していく。

壁のように群がるシュタッヘルを殴り斬りつけ逆にこちらが進攻する。

今度はこっちの番だ。

強固な壁として迫って来ていた重なったカラを砕き、敵の戦意喪失させていく。

形勢が不利になるとシュタッヘルたちはチリジリになって逃走を開始した。

原始的な知能のみを持つ魔獣であるためか、全てにおいて生存が優先されるようだ。

例え、まだ戦力が上回っていてもある一定数の損害を受けると逃亡を開始する。

殲滅しなければと思っていたセトたちは助かったと武器を下ろした。


「か、勝ったの?」


「退けたのである」


ひとまず危機は去った。

しかし、魔獣に勝利してもその余韻に浸る暇はない。

すぐに、吹き飛ばされた荷台と荷物を確認する。

一台は大破してしまった。

すぐさま、荷物を乗せ換え出発の準備をする。ぐずぐずしているとまた魔獣に襲われてしまうからだ。

ここがカラグヴァナ王国。

荒野と魔獣が闊歩する土地だ。



----------



来る日も来る日も魔獣との戦闘が発生した。

一日に数回、少なくても必ず一回は襲撃してくるのだ。

そのほとんどが魔獣シュタッヘルの群れであったのが救いだったのか分からないが、同じ相手と繰り返し戦うことで対処法が確立されていた。

おかげで、最初の襲撃以降は大した損害は出ていない。

シュタッヘルは馬鹿正直に突っ込んでくるだけなので、出会ったらすぐに土の術式で壁を作り出し足止めに徹すればいいのだ。

それだけで確実に勝てるようになった。

カラグヴァナ王国での護衛経験があれば、荷物を無傷で運びきることも出来たかもしれないがそんなことを考えても仕方がない。

今の結果を誇るべきだろう。


ベスタ公国の首都ウェスタを出発してもう二週間になる。

そろそろ、王都が見えてきてもいい頃なのだが、まだ、その気配はない。

あと2、3日は補給なしで旅を続行できるので問題はないが。

しかし、荷台を押す使用人たちの疲労がピークに差し掛かっていた。

二週間ずっと押しっぱなしなのだ。疲れも当然溜まっていく。

せめて、どこかで長時間休憩ができればいいのだが、魔獣の襲撃がこうも頻発すると休憩が取り辛い。

アズラは決断を迫られていた。

彼らの体力を信じて一気に王都まで行くか、一度、疲れを取るために陣を張って休憩するか。

もう予定の二週間になっている。まだ、王都に着いていないのは魔獣との戦闘で時間を取られたせいだろう。

後どれくらいの距離が残っているのか、これが分かればいいのだが。

セト、アズラ、ルフタ、そして、エリウが一堂に会して今後の方針を相談していた。


「私は後少しで王都だと思うの。今のペースで進めば日が暮れる前につけるはずよ」


「地図と照らし合わせて見ると、昨日ここの橋を渡ったから王国騎士団の討伐範囲に入っているはずなんだ」


「そうだとすると、確かに目と鼻の先である」


「でも、みんニャしんどそうニャ」


いくら後少しだといっても、疲労で動けなくなっては本末転倒だ。

命にも係わる。

セトたちはこの行けるか行けないかの見極めで悩む。

誰も経験がないから判断出来ないのだ。ここにきて、経験のなさが足を引っ張っていた。


「ピント殿に意見を聞くのはどうだろうか?」


「そうね。商売で旅には慣れているだろうし。聞いてみましょうか」


セトたちはピントを呼び意見を求めた。

経験豊富な彼ならいい意見を出してくれるだろう。


「そうでございますね。このペースなら王都には今日の夕方には着きますでしょう」


「やっぱり、あとちょっとなんだ」


「はい。私も休まず一気に王都に向かった方がいいと思うのでございます。なにより、契約外の期間が発生するのはよろしくありません」


「そうですね。ではこのまま王都に向かいましょう」


方針は決定した。このまま王都に向かう。

目的地まで後少し。

そう思うとセトたちはなんだかワクワクしてしまう

その時が待ちきれないと気持ちが揺れ動く。


そして、夕方。

そのときが来た。

馬車の列が街道を進んでいく。行商人や巡回している騎士とすれ違う。

ピントの予想通りに王都アプスが見えてきた。

大勢の人とすれ違いながら城門を目指す。

夕日に照らされ王都アプスが美しく照らし出される。


壮大。


見る者を圧倒する壮大さ。大陸の半分を支配する大国。

カラグヴァナ王国。

その王都に到着した。

遠目に見た時は山かと勘違いしてしまう大きさだった。

巨大な城門がセトたち一行を出迎える。

王国の術式技術の粋を結集して建造された220mはあろうかという巨大な城門。

その城門を土台に王国の象徴がそびえ立つ。

400m超の建造物。城門を合わせると620mにもなる。

王都が城そのもの。

城壁の上に町が作られている。まるで小人が人間の城に町を作ったような感覚。

住むサイズを間違えたのではと思うほどだ。


王都アプスの別名。

巨大王城、グレーステ・シュテルケ


最強の城。

ここがセトたちの目的地。


「「わぁー!」」


「すごいニャ! 人が作ったと思えニャいニャ」


セトたちが驚愕の声を上げる。生まれて初めて見る巨大建造物。

山一つが丸ごと城になったような錯覚を受ける。

城門を潜るとそこはまるで城の中のように感じた。

上を見上げると天井があるのだ。

天井と地面には巨大な8本の柱で繋がれており、中央の塔のような建造物と共に上層を支えている。

塔のような建造物は城の下層部に当たるものだ。

天井に太陽の軌道に合わせて空が見えるように穴が空けられており夕暮れの空が見える。

夕日の赤い光が町の中に巨大な城のフィルターを通して注ぎ込み、天井の穴や隙間から幻想的な光の美しさを見せており。

王都全体が黄金に輝いている。


みんなが歓声を上げて喜ぶ中、ルフタは少し目を細めた。


(懐かしいであるな)


神官だった頃に何度か訪れた王都。

全て仕事で来たがそれでも思い出はある。

いい思い出も、嫌な思い出も。


「ルフタ、考え事?」


「昔を思い出していたのである。吾輩がまだまだ未熟だった時のことだ」


「神官だった時のこと?」


「うむ。ジグラットで仲間たちと共に修行して、人々に教えを説いて回ったのだ。みな元気だといいが」


「時間もあるし会いに行っいってもいいのよ」


「そうしたいが事情があってな。ジグラットには入れんのだ」


アズラはそれ以上聞かなかった。人にはそれぞれ歩んできた過去がある。

どんな人生を背負って来たかはその人しか分からないが、それでも、聞いて欲しいことと欲しくないことぐらいは判断がつく。


「アズラ、そろそろエリウを馬車の奥に入れてやってくれ。ほかの亜人たちもである」


「どうして?」


「カラグヴァナ王国では亜人に人権はない。一人で町を歩こうものなら奴隷商人に連れ去らわれるだけである」


「外にいるだけで危険なのね。みんなに伝えるわ」


「王都アプスは、奴隷市場の最も盛んな都市でもあり、亜人差別の最も激しい所でもある。亜人にとっては敵ともいえる国だ」


そう、大陸の半分に奴隷文化を広めたのもここ王都アプスからだ。

ここでは、人と呼ばれる存在は人間だけ、亜人は家畜と同等の存在に貶められている。

その不条理を押し通せるのも大国だからだ。

カラグヴァナ王国と対話が出来るのは大陸のもう半分を支配するディユング帝国と。

そして、もう一国。

カラグヴァナ王国とディユング帝国双方から敵国と認識されている世界の裏側の大国のみ。

それ以外の国は奴隷制度を受け入れるしかない。

カラグヴァナ王国が栄える限り亜人は真の自由を手に入れることは出来ないだろう。

ここは人間の人間のためだけの王国なのだ。


セトたち一行の馬車の列がピントが用意していた売り場に到着した。

これでピントから請け負った仕事は達成だ。


「アズラ様、無事送り届けてくれて感謝いたします。では、こちらが報酬でございますお納めください」


「ピントさんありがとう。商売は明日からですか?」


「はい。また、その時にお力をお貸しいただければと」


「喜んで引き受けるわ」


「ありがとうございます。それでは、また明日お願いいたします」


「ええ、ではまた明日」


報酬を受け取り、ピントと別れるセトたち。

明日は商売の仕事を請け負うことになる。

今日は疲れも取ることを考えて一旦解散となった。


まずは、宿の確保が問題だ。

ルフタの話だとここカラグヴァナ王国では亜人に人権がないとのこと。

帝国では考えられないことだがここはカラグヴァナ王国。帝国ではない。

かわいそうだが、亜人は宿に泊まれない。

ルフタやエリウたち亜人には馬車の中で寝てもらうことになるだろう。

アズラとセト、リーベも一緒に馬車で寝ることにする。

なんだかそうしないとルフタたちを奴隷扱いしているみたいで嫌だったからだ。

早くみんなで宿に泊まってみたいとセトは思う。

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