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僕と姉の神話遭遇記  作者: 暁0101
第三章 王都市場参入
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第四十二話 商売は難しくて

夜は馬車の中で寝ることになった。

使用人の亜人たちとアプフェル姉弟の3人が一緒に寝たのだが。

亜人11人とセトたち3人の計14人では、2台の馬車では狭かった。

1台に7人が入るのだ。それはとても窮屈で横になることも出来ない。

でも、セトたちは悪い気はしなかった。

だって、みんなと気の済むまで語り合えたから。

亜人たちの考えてること、感じていることを少しかもしれないが知ることが出来た。


「にゃあ、セトって姉御のことが好きニャのか? 姉ちゃんニャのに?」


「ぶふぉ!! ゲフン、ゲフン! 好きだけどその好きじゃないよ。家族だしなにより僕が尊敬するアズ姉なんだから。アズ姉は誰よりもかっこよくて優しくて強いんだよ!」


「そうだよアズ姉さんはカッコイイんだよ!」


「2人とも恥ずかしいからやめて」


「アズ姉さんは優しいもん」


リーベがギュッとアズラに抱き着いた。

姉ちゃんは優しいのだ! とみんなに見せびらかす。


「リーベは甘えん坊であるな。セトも小さい頃はこんな感じだったのか?」


「ええ、ずっとくっついて離れなかったわ。でも、私が本当に悲しみのどん底にいた時、セトが助けてくれて。それからはあまりくっつかなくなったわ」


「セトが姉御を助けたのかニャ。それは大したことニャ。誇っていいニャ!」


「あまりということは、やはりセトはまだくっついてしまうのだな」


ルフタの頭に浮かぶのはアズラを抱きしめるセトの姿だ。

励ますつもりでやったのだろうが、何故それがハグなのだ? とルフタは考えていた。

抱き着いてしまう癖でもあるのだろうか。

ルフタはこう思っている。

セトは、姉離れが出来ていないのではと。

アズラとセトは幼い頃に両親を亡くしている。そのためか、アズラが親代わりでありセトの唯一の家族となった。

つまりは依存しているのだ。

今はまだ悪い兆候は見えないが、依存が高まれば出てくる可能性もある。


「くっつくって・・・、そんなことはないと思うけど」


「セト、はい!」


そういってリーベがアズラにくっついたまま手を広げた。

カモン! おいでといっている。

それを見たセトは一瞬、一瞬考えた。

いっていいのかと。

だがセトはあまり深く考えない子だ。

すぐに両手を広げ、リーベとアズラの所に行こうと動いた時。

セトが一歩前に出たら、アズラがスッと防御姿勢を取ったのだ。

こう体を少し丸めて警戒するような。


「ア、ズ姉?」


「・・・」


アズラは何故かセトと目を合わせない。

なんか恥ずかしがっているような。嫌がっているような。


「・・・アズ姉」


「・・・」


「ふぇぇ・・・!」


「泣くほどであるか!?」


「ニャんで泣いたニャ?」


ルフタは確信する。これはケアが必要だ。

でないと、セトが自立できない。

もしかすると、ルフタが思っている以上にセトとアズラの依存が強く。

互いに束縛してしまっているかもしれない。

なら、早速ケアを実行しなければ。


「セト、今のは喜ぶべきであるぞ。なんせアズラがお前さんを一人の男と認めたのだからな!」


「ちょっとルフタ! 変な事いわないで」


「いや、アズラも恥ずかしかったのであろう? ならそれは互いが成長した証である。子供から大人になったのだ。小さいころは一緒に風呂に入っていても今じゃ恥ずかしいであろう? それと同じだ」


「お風呂は今も一緒に入るわよ?」


「なん!!! ツァーヴの英霊たちよ吾輩にこの窮地を脱する知恵をお貸しくだされ!」


ルフタはご先祖様に祈ることにした。こいつら、二人だけの世界で過ごしてきたようだ。

世間の一般常識とズレている所が多々ある。

長期間のケアが必要だ。


「ふぇぇ・・・」


「セト、泣くニャ。男の子だろ。姉御に嫌われたぐらいニャんてことニャい。すぐ仲直り出来るニャ」


セトはアズラに拒まれたことがよほどショックだったようだ。15歳にしては情けない。

アズラはハァとため息をつき。


「リーちゃんギュッとしてあげて」


「うん! ギュッ!」


「ふぇぇ・・・ムギュ!」


癒し効果抜群のリーちゃんをゲットだ! すぐにメンタルが回復するぞ!

それを見たルフタはこっちも依存しなければいいがと心配になってきた。

リーベを二人の世界に引き込もうとしていないか不安になってくる。

こんなやり取りをしながら、馬車で一夜を過ごすこととなった。



----------



次の日の朝。

セトたちはピントの売り場に集まっていた。

王都にうまく定着出来たらこの辺りに店を構えるのだろう。

今日から一週間かけて商品を売り捌くのだ

まずはアズラがピントと新たに仕事の契約を交わす。

内容は、一週間の売り込みで一人700ゾル。

売れ具合で報酬の上乗せ有りだ。

多少報酬が低いが仕事をくれたことにアズラは感謝する。


今回は、カラグヴァナ金貨、通称、王国金貨で一人700ゾル相当が支払われる。

ベスタ公国では帝国通貨も問題なく使用できたが、ここカラグヴァナ王国では両替しないといけないのだ。

1ヤカルで王国金貨100枚となる。

王国金貨1枚で王国銀貨10枚。

100ゾルで王国銀貨1枚だ。

よって、一人、王国銀貨7枚となる。

カラグヴァナ王国の通貨は帝国より価値が低い。

これは金属の加工技術が帝国より低いことを示している。

通貨の価値はその国の力を見る一つ指標だ。


「それでは、アズラ様よろしくお願いします」


「任せてくださいピントさん」


セトたちが商品を売る準備を進める。

露店の棚に商品を並べ客が引き寄せられるように配置していく。

こういう見せるセンス的なものは、美的センスを持っている人に任せるのがいいだろう。

リーリエがその美的センスに優れていた。

見た瞬間、どれが目玉商品か欲しい商品がどこにあるのかが一発で分かる配置。

彼女の働きぶりをセトとアズラは感心して見ている。

ちなみに、二人が並べた露店はカオスな状態だ。

様々な種類の商品が重なり合い、大きい商品が小さい商品を見えなくしてしまっている。

もう悪い見本そのものだ。

結局、商品の陳列はリーリエの指示のもとに行うものとなった。

計二店舗を構えて準備完了だ。


「それじゃ、お店の方はリーリエにお願いするわ」


「私にですか!」


「うん、あなたなら上手く出来ると思ったから、引き受けてもらえるかしら」


「も、もちろんです。いっぱい売っていっぱい報酬を貰っちゃいましょう!」


セトたちの露店がある市場に人が集まってきた。そろそろ、市場が開かれる時間だろう。

王都の市場は明確なルールが定められている。

朝に市場での売り買いが一斉に開始され、夕方に一斉に終了する。

商人たちに公平な商売を促すために取り入れられた決まりだ。

また、市場に店を構えるには店の設置費を王国に収める必要がある。

今回はピント商会が事前に支払って場所を確保していたようだ。

ということは、商品を王都に運搬していた期間はまるまる損をしていたことになる。

ピントが最初の契約で王都に着くまでではなく、2週間と期間を指定して雇ったのはこのことがあったからだろう。

2週間で王都に着けと暗に急かしていたということだ。


「おや、新しい店かい?」


「いらっしゃいませー!」


記念すべき一人目のお客さんが来店した。

商売スタートだ。

リーリエが見事な営業スマイルを炸裂させて、別の意味で客の購買意欲を増加させていく。

財布のひもが緩んだところでリーリエは商品の説明を開始した。

相手の購買意欲をさらにかきたてるように商品の魅力へと誘導していく。


「て、手慣れている! アズ姉、もしかしたらリーリエさんてすごいのかも!」


「売り子をしていたと聞いたけど、自分で役に立つというだけあるわね」


セトたちがリーリエにさらに感心している間に商品が売れたようだ。

出だしは上場。

このまま夕方まで売り捌いていければ上出来だ。


「あんニャに簡単に売れるニャらあちしにも出来るニャ」


「やめるのだエリウ。カラグヴァナ王国では吾輩らは目立っちゃいかんのだ」


「そんニャこと・・・、ニャ、お客がいなニャくニャった・・・」


ルフタが言わんこっちゃないと額に手を当てる。

ピントの目が吊り上がってこちらを見ている。雇い主の怒りを買ってしまった。

すぐにアズラがピントを連れて奥に引き下がっていく、ご機嫌取りをしてくれているようだ。


「ご、ごめんニャ」


「吾輩らも奥に下がろうか」


エリウはスゴスゴと奥に引っ込んでいった。

リーリエは一度散ってしまったお客さんを呼び戻そうと営業スマイルをさらに輝かせる。

惚れやすい男が見たら一発で心を奪われるだろう。

そんな素敵な笑顔で売り込みをかける。

初日はそんなこんなで、まずはお店をオープンしたよとアピールしていく。

リーリエには自信があった。

この営業スマイルはお客の心をガシッ! とわしづかみに出来ると。

リーリエは一日で売り切ってやると凄まじい熱意をみなぎらせた。


そして、夕方。

他の露店が店じまいを始める中、リーリエは、ぽけーっと突っ立っていた。


「リーリエさん、リーリエさん! もう店じまいだよ」


「ほえ?」


「今日は終わりの時間だよ」


「あ、いらっしゃいませー」


「僕、セトだよ!? お客さんじゃないよ!?」


セトに輝く営業スマイルを向けるリーリエはもう頭の中が真っ白なのだろう。


そう、結果は。

売れなかった。


もう、全然これっぽっちも売れなかった。

リーリエの営業スマイルにわしづかみにされた男たちが数個買っていったくらいだ。

あれだけ自信たっぷりに売り込みをかけてこの結果なら誰でもそうなる。

リーリエはセトに引っ張られて奥に退散していった。


「うーん・・・。これは困りましたぞ」


「ピント殿、日を改めるのはどうだろうか? 今日は運が悪いだけかもしれぬ」


ピントは頭を抱えていた。当たり前だろう、全然売れなかったのだから。

露店の後ろにある余ったスペースにみんなが集まり反省会中だ。

考えられるのは、商品を運搬していた2週間の間に何か市場で変かがあったということだろう。

それが、この売れない原因となっている。

今、セトたちにその原因調べて貰っているのだが、ピントは厄介な情報がこないことを祈るばかりだ。


「ピントさん! 売れない原因が分かったよ」


セトとアズラが戻ってきた。

売れないのは商品価値証明書というものが有力商会より発行されて商品がブランド化したのが原因のようだ。

自分たちの商品は、ブランド物ではないどこかの安物商品と見られていた。

それは売れない。同じ値段なら信頼できるブランド物を客は購入するだろう。

残念ながらピントの用意した商品はベスタ公国製というだけで、類似品は大量にある。

みんなに分かるように説明しながら、ピントはこの状況を打開する方法を考えていく。


(市場はこの商品価値証明書というもので価値が決まってしまう状態にある。なら価値が決まる前に売り込むしか・・・)


商品は客の手元に届くまでに様々なルートを通ってくる。

仕入れから販売そして購入。

市場は販売に商品価値証明書が必須状態だ。

なら、仕入れという商人の購入するう部分で売るのはどうだろうか?

商品価値証明書を付けるのは仕入れた後だ。


「皆さん、聞いてください。今回、お客様への商売では先手を取られましたが、何も物を売れるのは王国臣民だけではないのでございます」


「つまり?」


「証明書を発行した商会に売り込むのでございます。最終価値は相手に取られますが、証明書による購買力が上がった今の状態なら、高値で買い取ってもらえるはずでございます!」


「「おおー」」


アズラたちの了承は得られた。

ならすぐにでも売り込みに向かわなくてはならない。


「それでは、早速向かいましょう! こんな所で立ち止まっていられません!」


有力商会の商店に乗り込み交渉を開始する。

まずは、このフェアカウフェン商会の代表、ツルツル頭のおっさんに買ってもらうのだ。


そして、リベンジの結果・・・。


ピントは燃え尽きた。商人としてのプライドがポッキリと折れて倒れ伏していた。

商品価値証明書を発行する有力商会と取引できるのは契約を結んだ商会だけという事実が判明したのだ。

これは、ピントの情報収集不足が原因だろう。

商売は甘くない。


「・・・。ピントさん、私に考えがあるんだけどこの商品任せてもらえないかしら?」


「いいでございますよ。私はもう燃え尽きてしまいました・・・」


そんなピントを見ていたアズラが商品を任せてくれといった。何か策があるようだ。

あっさりと商品を任せてしまうピントは相当参っている。


「セト、みんなを集めてきて作戦会議をするわ」


この全く売れない状況でどうするか。アズラたちの作戦会議が始まる。

アズラ・アプフェルの商売が始まるのだ。

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