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僕と姉の神話遭遇記  作者: 暁0101
第二章 狂信者
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第三十一話 3人の戦士が揃い立ち

セトとルフタは武器を構え黒い神官服の男たちを睨み付ける。

後方からは洗脳されたエリウが迫っていた。

セトはベスタ式軽防火一式改に身を包み短剣を。

ルフタは、廃城内の物資から拝借した戦闘用神官服を着こみ鉄の棒を振り回す。

ブンブンッ! と振り回し威嚇をして距離を保つ。

敵の注意を引き付けなるべく時間を稼ぐのが狙いだ。

だが、洗脳されたエリウには威嚇など挑発にしかならなかった。

毛が逆立ち、爪と牙をギラつかせる。


「フシャーーーッ!!」


エリウがルフタに飛び掛かった。ハトゥール族特有の高い身体能力を活かし他を圧倒する跳躍で飛び掛かる。

対するルフタは、鉄の棒を縦に構えて微動だにしない。エリウの爪を牙をその目に捕らえカウンターの姿勢をとった。

ドシッ! と鉄の棒がエリウの横腹に直撃する。

跳躍したことで、姿勢の変更が困難になった所を正確に狙いあしらったのだ。

地面に叩き付けられ砂埃が舞う。


「フゥー! フゥー!」


「目を覚ませ! 誇り高いハトゥール族の戦士よ! 吾輩の声を聴くのだ」


ルフタが話しかける。エリウの僅かに残った意識に問いかける。

このままでいいのか? 目を覚ませと。

エリウの目を真っすぐ見つめ殺意という名の狂気から救い出そうとするが。

ジャラララッ! と鎖の流れる音が聞こえ。


「ルフタさん! 危ない!」


ズゥウウウウウンッ! と鉄球がルフタのいた所に撃ち込まれた。床を砕き瓦礫を飛び散らせる。

ルフタは間一髪で難を逃れていた。セトの警告が無ければ即死していたところだ。


「まあ、避けるよね。別にいいけどさ」


若い声の黒い神官服の男がつまらなそうに呟いた。

セトたちを尋問していた顔面が継ぎはぎになった男と、この若い男。

この二人がエウクレイデスの側近なのだろう。

黒い神官服。

その役割は、殲滅神官を模した者か。

だとすると、彼らはベスタ公国支部の中で戦闘に長けた人物となる。

セトとルフタは警戒を高めていく。


「ルフタさん。僕が奴らを引き付けます。その間にエリウを」


「承知した。5分、いや3分耐えてくれ。エリウと共に加勢しよう」


セトが前に出た。黒い神官服の男たちを一人で相手取る。

ルフタもすぐさまエリウのもとに向かった。彼女はまだ地面に這いつくばっている。元々のダメージが大きかったのだろう。

あの一撃で動けないまでになってしまっていた。ローブがはだけてその褐色の肌に痛々しいアザがいくつも出てくる。


「おのれ! 少しでも反撃すればエリウが死ぬように仕組んでいたな! だがあまり吾輩らを舐めるなよ」


すぐさまエリウに手をかざし念じていく。

やがて青白い光が滲み出てきてエリウの体に流れ込んでいった。

これは、そう。

ジグラットの神官たちが使用する治癒の神術。

すぐに効果が出始めた。エリウの全身にあったアザが消えていき傷を治癒していく。

殺意に呑まれていた彼女の瞳が和らぎ、意識が感じ取れる視線を投げかけてきた。


「エリウ、聞こえるか? 誇り高いハトゥール族がいつまで寝ているのだ。見ろセトは一人で戦っているぞ」


エリウの目線が動く、その先にはセトが映っていた。

一人で黒い神官服の男たちを押しとどめている。

鉄球をかわし、暴れ狂う継ぎ接ぎの男をいなしていく。

その姿は戦士。

エリウには戦士に見えた。


「にゃぁ、セトが頑張っているのに、戦っているのに、あちしは何しているニャ。このままじゃハトゥール族の名折れニャ。トカゲ、肩を貸すニャ!」


「トカゲではないルフタである。いけそうか?」


「問題ニャいニャ」


エリウは肩を貸して貰いながら再び立ち上がる。

セトたちと共に戦うために。

これで、人数はセトたちの方が上になった。

ルフタとエリウはセトの隣に並び立つ。


「エリウ! もう大丈夫なんだね」


「心配かけたニャ。もうあちしを止められるニャんて思うニャよ?」


「貴様たちの悪行もここまでだ。同胞たちの無念晴らさせてもらう」


3人が揃い立つ。クソッタレの牢獄の中で出会った3人。

共に生き残ろうと支え合った3人だ。


「殺すっていっただろ。殺すって。何で、死んでないんだよぉぉおおおおおおお!! このクソ猫ぉおおおおおおおお!!」


「! 傷が癒えている? めんどくさいな。確実に殺さなきゃいけないじゃないか」


立ち塞がる二人は、それぞれ武器を構える。鎖に繋がれた鉄球とメイスだ。

肉を潰し、骨を砕くための装備。

撲殺する。

視聴覚に痛みを嫌でも認識させる手段。

彼らの役割は相手に恐怖と痛みを与えること。そのためだけに存在する者たち。


「エリウは敵のかく乱を頼む。セトは一度治癒を行う。吾輩の後ろに下がってくれ」


「承ったニャ!」


「ルフタさんも回復を」


「あまり治癒の神術を使える回数もないのでな。ここはセトを優先する。奴らは吾輩を集中的に狙うはず・・・、それが隙となれば」


エリウが黒い神官服の男たちに飛び掛かった。鎖とメイスと爪が交差し火花が散る。

その間にセトは後方へ、ルフタが治癒を開始した。


「やっぱりアイツが治癒を行えるのか。おい、あのトカゲを殺すよ」


「くそがぁぁあああああ!! チョロチョロと!!」


ジャラララッバシッ! といきなり鎖で仲間を殴りつけた。継ぎはぎの男が頭から血を流し殴った相方を見る。


「・・・そうだな。殺すか。どうせ順番が変わるだけだ」


継ぎはぎの男は頭を殴られた影響かいきなり冷静になった。

攻撃が単調化しやすい激昂した相手より、常に冷静な判断を下す相手の方が恐ろしいというもの。

鉄球使いの若い男はこの場の状況を常に見ている。

冷静に何が必要かその判断を下していく。

まずは、回復手段の排除。

ルフタの予想が当たった。後はどこまで二人の行動を予測し攻めていくか。

これは殺し合いだ。相手を予測しきれなかった方が死ぬ世界。

その世界にエリウが先手を仕掛けていく。


「ウニャーーーッ!!」


「しつこいよお前」


エリウの爪を鎖で押しとどめる。彼は鉄球を攻防一体の武器として使いこなしていた。

エリウの爪を力点として鎖に繋がれた鉄球が空中で軌道を変える。

ジャラララッと振り子のようにエリウの顔面を捕らえた。


「フニャッ!」


横目に鉄球を見たエリウは手で鉄球に触れその攻撃の勢いに乗った。

エリウは吹き飛ばされることなく鉄球の上に立つ。

攻撃を完全に受け流したのだ。この程度なら問題ないと反撃に移る。


「しつこいなぁ。楽に殺したいんだから、今ので死んでよ」


「そうはいかないニャ。あちしを止められないってこと分からせてあげるニャ!!」


エリウがまるで空中を歩くように宙に舞う鎖の上を駆け回っていく。

鉄球使いの若い男が鎖から振り落とそうと手に持つ鎖を波のように揺らして移動の妨害をするが、エリウにはそんなことは意味を成さない。

波のように動く鎖の上をスキップでもするかの如く渡っていき、もう鉄球を引き戻すよりも速く仕掛けれるポジションを取った。

エリウが爪をギラつかせ若い男の顔を狙って仕掛ける。


「ニャァァアアアアア!!」


「何で迎え撃たなきゃいけないんだよ!」


鎖を腕に巻き付け接近戦で迎え撃つ。

ガキンッ! と甲高い音が響き二人が拮抗した。

互いに殺意のこもった目線を交差させ力の限り相手を打ち負かそうと鎖と爪をぶつけ合う。

ガッガッガキンッ! と攻防が繰り返される。

エリウが攻め、鉄球使いの若い男が守りすぐにカウンターを放つ。

接近戦の実力が完全に拮抗した。エリウは次の手を考える。敵がしたいこと、して欲しくないことだ。


セトの治癒が完了した。背中の痛みがなくなる。

ルフタは背中の傷を優先的に直してくれたようだ。


「セト、もういいぞ。吾輩らも向かおうか」


「どこを見ていやがる!! 下等生物共が!!」


振り上げられたメイスが床を砕き地面を抉った。

セトとルフタは距離を取り継ぎはぎの男と対峙する。

セトたちに殺意がないと言えばそれは嘘になる。二人はこの男が憎い。

刺され、殴られ、痛めつけてきたこの男が。


「お前に他人の痛みを分からせてやる」


「許されるなどと思うなよ? お前さんのしたことはそれだけの所業だ」


二人はこの継ぎ接ぎの男を倒すと声に出す。だが啖呵を切られたはずの継ぎ接ぎの男は余裕を崩さない。


「ぎゃっはっはっはははは! 許す? 分からせる? 何をだ? まだこれが足りないようだなぁ。いいぜ。俺が分かるまで嬲ってやるよ」


ルフタ目掛けて横なぎのメイスが振るわれた。ルフタは鉄の棒を地面に突き刺し受け止めるもグニャッ! と棒がへし曲がってしまう。

だが、その隙にセトが短剣を振るった。あしらおうとする男の手を潜り抜けすれ違い様に斬りつける。

ザシュッ! と腕の腱を断ち切った。


「あ? ああ? がぁぁああああああ!? てめぇ! やりやがったな!! 殺す! コロス!!」


「意外と呆気なかったな」


「な!?」


ドスッ! と鉄の棒が継ぎ接ぎの男の胸を貫いた。セトに注意を引かれたほんの一瞬。

それが命取りとなった。


「が!? くそが・・・、クソ共がぁぁぁ」


男は膝から崩れ落ちた。

残るは後一人、鉄球使いの若い男だけだ。


「あの役立たず! 簡単にやられるなよ」


「やったニャ! 後はお前だけニャ!」


3対1。

鉄球使いの若い男はエリウを振り払い、後方に下がった。

すぐさま不利と判断し体制を立て直そうとしている。

だが、このチャンスをエリウが逃す筈がなかった。


「もらったニャァァアアアアア!!」


「ぐあぁ!」


エリウの爪が鉄球使いの若い男をついに捕らえた。

攻撃を防ごうと振り上げた腕に爪が食い込み肉を抉る。

筋肉が裂け鉄球に繋がる鎖を落とした。


「最悪だ・・・。最悪だよ。でも贄の替わりにはなったかな? ねぇ、エウクレイデス様」


「ええ、素晴らしい贄でした。あなた達から、傲慢と快楽と狂気が取り除かれていくのが感じ取れる。アア、もうすぐ、もうすぐです! 聖女リーベよ、こちらに!! 贄の儀により魂が捧げられ、我らが主の意思が降臨なされる!!」


エウクレイデスがリーベに迫る。彼女を守っていたマルクはもうピクリとも動かない。


「リーちゃんに触るなぁぁあああ!」


「エリウ! 頼む!」


「ニャア! 任されたニャ!」


エリウが倒れ込んだ鉄球使いの若い男を飛び越え、エウクレイデスとリーベの間に滑り込む。

エウクレイデスの前にリーベを守るためにようやくたどり着いた。


「贄は祭壇にお戻りください。人にはそれぞれ役割というものがあるのです。あなたの役割はここではない」


「そんな役割クソ食らえニャ!」


エリウを前にエウクレイデスは冷静だ。

彼の目的のために必要な贄の儀が失敗したというのに。

まだ、巻き返しが可能なのか? それとも。


「一人ぐらい欠けてもいいでしょう。では、贄の儀を完遂する! アア、感謝を!! 我らに祝福が訪れる!!」


エウクレイデスが両腕を掲げた。青白い光が彼の周りから大量に滲み出てくる。

その光は凝縮していき脈動しながらあるものを形作る。

穴。

空間にポッカリと空いた穴のような何か。


「オオ、贄の魂が聖女リーベに捧げられる!!」


胸を突かれた継ぎ接ぎの男から青白い光の塊が抜け出し、それは空間に穿たれた穴に吸い込まれていった。


「これで、エウクレイデス様の目的に一歩近づく。聖女が真なる聖女として目覚め我らを導くからね」


鉄球使いの若い男が薄ら笑う。


「ウニャァ!!」


「役割を理解しない亜人ですね。それは、無知だ。無知とは罪! 罪!! ましてや主の祝福を理解せぬとは!! 死罪だ」


ガッ! とエリウの首が絞められ持ち上げられる。

爪で腕を抉っているのにエウクレイデスはまるで無反応だ。


「カ、ハッ」


「さあ、聖女リーベが・・・、何だ? 何故これ以上贄の魂が来ないのです?」


穿たれた穴は一つ目の青白い光の塊を吸い込んだだけで、それ以上の変化がない。

変わりにエウクレイデスの真後ろに光が集まる。


「?」


光が大きくなり、受肉していく。模っていく。

受肉した光はまだ模っている途中で唐突に動いた。

腕の形になった部分を振り上げエウクレイデスの顔面にその拳を叩き込む。

光が弾け、模られた中身が飛び出す。

ギム・ゼントの手甲を握り締め、少し黒味を帯びた灰色の髪を優雅になびかせ、アズラが現れた。


「ごぉがぁ!?」


「何をしようとしてたのか知らないけど、あなたの部下は全員叩きのめしてきたわ」


さらりとアズラが組織壊滅宣言を出す。

やれやれといった表情でヴェヒターも現れた。

アズラが何をしてきたかは簡単だ。

囚われたすべての人を解放し敵を殲滅したのだ。

彼女はセトだけではない全てを救うつもりだ。

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