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ANOTHER REALITY  作者: マンドラゴラ
第二章 善悪が交差する口
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第二十五鐘 買い物と出会い

 宿の外に出てシンベルの空気を堪能する二人。ベンチに座ってハイトは、このゲーム世界のNPCのAIに感嘆を抱いている事を話す。ロゼにとっては現実世界と大差変わり無い存在だと知り、ハイトは現実世界とゲーム世界の相違について思案した。

 ……と見せかけて、俺は宿には戻らずに、小さい商店に寄っていた。

 いくら小さな村だからと言って何も売っていない訳では無く、少ないながらも旅人を対象にした物が売っていた。


(…………)


 並べられている商品を一通り眺めながら、俺は迷っていた。


(何買えば良いんだ……)


 他人にプレゼントをするなんて小学生以来だ。正直センスのある物を選ぶ自信がない。

 選ぶのに時間がかかるが長居はしたくない。

 店主がいつ逃げてもおかしくないからな。


(プレゼントも無理があったか)


 約束をしたからには破る訳にはいかない。うんうんと悩み続けていると、


「お困りのようですね」


 いつの間にか、俺の隣に男が立っていた。


「…………」


 早速見知らぬ人には無条件で警戒する俺。


「怪しい者ではありませんよ」


 こちらの警戒を解く為に笑顔で話しかけて来た。

 確かに外見は怪しそうには見えない。薄い黄金色の髪に茶色の眼をした姿は、俺とは正反対だ。

 顔も整っており、爽やかイケメンと言う風貌だ。社会人ぐらいの年に見える。


「怪しい奴は大体その台詞を吐くんだよ」


 それなのに、俺は我ながら捻くれた返事を返した。


「なるほど。そう言われると、反論の仕様が無いですね」


 屈託の無い笑みで、感心したように言った。


「……何で感心してるんだよ」


 普通ここは怒るところではないのか。


「いえ、あまりにも綺麗な返し言葉だったもので」


「……はあ」


 この男、何かがズレている気がする。


「自己紹介がまだでした。私はウィルと言います。よしなに」


 ウィルと名乗った男が俺に握手を求めるように、手を差し出して来た。


「…………」


 俺はそれを一瞥して、当然無視した。


「…………」


 ウィルは差し出した手を下げない。


「…………」


「…………」


「……………………」


「……………………」


「………………………………」


「………………………………」


 小さな商店の中で頑なに手を差し出す青年と、それを頑なに無視する少年というシュールな光景が誕生した。


「……何で手を下げないんだ?」


 結局根負けして訊ねた。


「貴方と握手がしたいからです」


「俺としてどうする」


「仲良くしたいですね」


「俺はしたく無い」


「私はしたいです」


「…………はぁ」


 俺はウィルの手を軽く握った。


「これで良いだろう?」


「まだ貴方の名前を聞いてません」


「教える程の名を持ち合わせていない」


「そんな筈ありません。人の名前は、誰も等しくつけられています。名前の価値に上下などありません」


「ああああ、でもか」


「ああああ、でもです」


「じゃあ、ああああ、にはどんな意味があるんだ?」


の子はきっとああ・・なるから、将来はれになって欲しい。と言う意味でしょう」


「いやに愉快な名付け親がいたもんだ」


 てか、こんなくだらない話をしている場合じゃなかった。


「貴方の名前は?」


 そこに戻るのか。いい加減しつこいな。


「ハイトだ。邪魔だから静かにしてくれ」


 きつく言って、俺はプレゼント選びに戻った。


「ハイト君ですか。最初の続きですが、力になりますよ」


「……は?」


 力になるって、そんな事して何のメリットがあるんだ?

 ウィルは俺の疑問に気づいたのか、


「困った時にはお互い様ですよ」


 善人魂全開に言った。


「…………」


 追い返そうと考えたが、俺よりもセンスが良さそうなウィルに、プレゼントを選ばせた方が良いかもしれない。


「手伝ってくれ」


 俺は他人に頼む事にした。


「はい、何をすれば良いですか?」


「仲間にプレゼントをしたいが、何を買えば良いか分からない」


「その方は男性ですか? 女性ですか?」


「女だ」


「その人の好きな色とか分かりますか?」


「……いや」


 ウィルに言われて気づかされた。


(俺、ロゼについて知っている事が少ないな)


 好きな色さえ知らないとは、これから世界中を歩く仲間だというのに如何な物か。


(これからは、もっと会話をする時間を設けた方が良いか)


 上手く会話を続けられるかは不明だ。


「う〜ん、そうですね……」


 ウィルは考え込むように唸った。

 無理も無い。訊ねられる質問に、俺は満足に答える事が出来なかった。今のところ、プレゼントの相手が女だという事しか教えていない。


「これなんてどうですか?」


 なのに、ウィルは数ある商品の中から一つを選び抜いた。

 ウィルの手には、翡翠色の宝石がついたネックレスがあった。


「ネックレスか」


「はい。ネックレスなら嫌いな人はいないですし、贈り物なら最適だと思いますよ」


 確かに、ネックレスならハズレではないだろう。


「そうだな。これにするか」


 俺はウィルから翡翠のネックレスを受け取ると、若干顔が引き攣ってる店主に代金を支払い購入した。


「やりましたねハイト君。無事にゲットしましたね」


「一体何に対して危険を感じていたんだアンタは」


 まるで一仕事やり遂げたと言わんばかりの顔で語るウィルに、俺は思わずツッコミを入れてしまった。


「気にしないでください。それでは、私は少し用事があるので、ここで失礼します」


 軽くお辞儀して、ウィルは立ち去ろうとした。


「待ってくれ」


 俺は今にも歩き出しそうなウィルの背中に声をかけた。


「はい、何でしょう?」


「……助かった。礼を言う」


 感謝を言葉にするのは苦手だが、ここは言っておかなければ失礼だろう。


「どういたしまして。また会えると良いですね」


 笑顔で応えて、ウィルは歩き去って行った。


 <ファントムトラクト>

 銃スキルの一つ。銃口から見えない弾丸を発射する。硬直時間は1,8秒。


 <追伸> 

 定期考査のせいで遅れました。待って下さった方、ありがとうございます。

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