表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ANOTHER REALITY  作者: マンドラゴラ
第二章 善悪が交差する口
53/90

第二十六鐘 本音の夜

 ロゼと別れて一人店に向かうハイト。詫びの雛を購入する為に真剣に選んでいた時に、一人の青年が近寄る。ウィルと名乗る青年の手助けを受けながら、ハイトはロゼの為の品を購入した。

「あ、ハイトお帰り。どこ行ってたの?」


 何もする事が無く、宿に戻ると、ロゼが先に戻っていた。


「あー、ちょっとな」


 本当の事を言うのも恥ずかしいので、適当にはぐらかした。


「ふ〜ん……あ、そうだ、シンベルでイベントがある事、ハイト知ってる?」


 首を傾げたがそれ以上追求せず、話題を変えた。


「いや、知らん」


「何でも年に一度のお祭りがあるらしいよ」


「祭り……?」


 思い返せば、ロゼと散歩をしている時に、何か飾りを付けている人がいたような気がする。村中も変な活気があったな。


「どんな祭りなんだ?」


「私たちがベンチに座っていた時に遊んでいた子供たちの中に、ミリアちゃんがいたでしょ?」


「ああ、いたな」


 俺を怖がらなかった少女か。


「ミリアちゃん村長さんの娘さんでね。この村には古くからの習わしがあって、次期村長の子は十歳になると、近くにある洞窟で儀式をして、一人前になった事を証明するの」


「へえ」


「その儀式に挑む子供たちの為に、いつしか楽しませるお祭りもやるようになったんだって」


「へえ」


「だからね……」


 ロゼはそこまで言うと、何故か指を絡ませてながら頬を染めた。


「ハイトはすぐにシンベルを出たい?」


「…………? いや、今すぐに出たいとは思わんが」


 元々当ての無い旅だ。すぐに何かする事は無い。


「な、ならさ……私と一緒に歩かない?」


「……俺とか?」


 コクンとロゼは小さく頷いた。


「構わないが」


 断る理由も無いしな。


「やったー! ありがとうハイト!」


「お、おう」


 俺の手を握ってぶんぶんと上下に回すロゼに、俺は少し驚いた。

 そんなに嬉しい事か?


「でも、良いのか?」


「…………? 何が?」


 キョトンとした様子でロゼが訊いて来た。


「そんなに楽しみにしている祭りを楽しむ相手が俺なんかでさ」


「…………」


 ロゼの腕を振り回す力が弱くなっていくのに気づかないまま、俺は言葉を続けた。


「ロゼも知っている通り、俺は誰かを楽しませる事が苦手な人間だ。折角の祭りなんだから、俺なんかよりも他の奴といた方がきっと楽し――」


 両方の頬が暖かい温もりに包まれて、俺は口を動かせなかった。


「ハイト、それ以上言ったら、私怒るよ」


「ロゼ……?」


 静かに、でも確かな怒気を感じて、俺は動く事が出来なかった。


「私がいつハイトの事をつまらない人だって言ったの? 確かに、ハイトは人と接するのが苦手な人だって思っているよ。でも――」


 俺の眼を見つめながら、ロゼは真剣に語る。


「――私はハイトと一緒にいられて、凄く楽しいよ。他の人がどんなにハイトの事を怖がっても、私はハイトを優しいと思うよ。だから……」


 何度も見るロゼの微笑み。だが、見惚る事の無い日は、おそらく一生来ないだろう。


「私は君とお祭りを楽しみたい。君以上に楽しめる人なんていないから」


「…………」


 俺は胸が熱くなるのを感じた。

 あの時から、俺はロゼに対して負い目を感じていた。ミッションの為とは言え、人間を殺す事を拒むロゼに強要し、俺はロゼの負担を一つ作ってしまった。

 本人が許してくれたとしても、俺がやったことに変わりは無い。

 俺といてもロゼは楽しめない。

 そう思い込んでいた。

 だが……。


(俺の勝手な妄想だったか)


 俺はロゼに失礼な事をしていただけだ。


「悪かった。それと……ありがとう」


「分かればよし! 今度ハイトの事を悪く言ったら、本気で怒るからね!」


 そう言って、ロゼは微笑みを浮かべた。


「それと、ハイトは気づいてないかもしれないけど、君、笑ってたよ」


「……は?」


 笑っていた……俺が……?

 思わず自分の頬を触ってみる。手の感覚からは頬の手触りが伝わるだけで、笑っていたかは分からなかった。


「信じられないような顔してるけど、本当だよ」


「そう……か」


 まだ実感が湧かない。普段笑えない俺が笑うなんて……。


「あ〜、楽しみだなぁ! ハイトとのお祭り!」


 クルクルと楽しそうに回るロゼの姿を見ていると、自然と俺も楽しくなっていた。


(まあ良いか。ロゼが笑っていたと言うなら、笑っていたんだろう)


 それで良い。深く考える必要は無い。

 そう思った。






 ――その夜。


「なあ……やっぱりまずくないか? 二人一緒の部屋で寝るのは」


「だ、大丈夫だよ! ベッドは分かれてるんだし」


「そういう問題か?」


「あの家に住んでいた時は一緒の部屋で寝てたじゃない!」


「まあそうなんだが……。あれは部屋が足りなかったから、止むを得ずあそこに布団を敷いたんだろ?」


「そ、そうとも言えなくもないかもしれないね」


「だろ? 今からでも遅くは無いから、新しい部屋を借して貰おうぜ」


「だ、だめっ!」


「いや、ここは拒否する場面じゃないだろ」


「だめったらだめ!」


「何故そこまで拒む……。なら訊くが、何かの間違いが起こったらどうするんだ?」


「そ、それは……(私としては嬉しいと言うか……むしろ来てくださいと言うか……)」


「…………?」


「それに……ハイトが寝込みに来る度胸が無い事、私信じてるからっ」


「……ああ……。(俺はいったいどんな返事を返せば良いんだ……?)」


 そんなこんなで、長い一日は終えた。

 <グレプション>

 剣スキルの一つ。命中すれば必ずクリティカルとなる。硬直時間は1,7秒。


 <追伸>

 またしても遅れてしまいました。何かあった訳ではなく、ただ単純に忘れていただけです。最近だらしないですね……。待っていた方すみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ