第19話 父と娘
「私の可愛い天使、ナターシャ!今日はどうしたんだい?」
「お父様。その呼び方は、恥ずかしいですわ。」
お父様は、少々過保護なようで、私のことを、天使などと呼んだりします。
私は、名前だけで呼んでくださるように、何度もお願いしていますが、なかなか聞き入れてもらえません。
「お父様。実は、二つお聞きしたいことがありますの」
「改まって、なんだい?」
私は、まず、アレックスから申し込まれた、デビュタントのエスコートのことを話しました。
「アレックスというと、ナターシャの幼なじみで、伯爵家の跡継ぎだったかな……」
お父様の記憶は確かです。
「そうですわ、お父様。エスコート、アレックスにお願いしてもよろしいでしょうか?」
お父様は、少し考えてから、
「――いや、ナターシャ。アレックスには申し訳ないが、今回はお断りしなさい。」
「帝国の姫であるお前が、変に噂を立てられてはいけないからね。ダンスをするのも、二番目か、三番目にしなさい。」
「わかりました、お父様。」
私は、頷きました。
なんとなく許してはもらえないような気がしていましたが、思った通りでした。
アレックスには、またきちんとお断りしなくてはいけません。
さて、もう一つ、大事なことを聞きます。
「お父様、もう一つのことですけど……」
「なんだい、ナターシャ?」
「実は、執事のセバスチャンが、先日からいなくなってしまったのです。」
「セバスチャンは、お父様の紹介で執事になったと聞きましたわ。
何か、ご存知ないですか?」
すると、お父様は、意外な返事をされました。
「なんと、セバスチャンは、お前に黙って行ってしまったのかね?」
「行く先なら知っているよ」




